
生まれて間もない子ギツネを育てるアカギツネのお母さんは、ある日、黒い毛の赤ちゃんギツネを見つけます。仲間に置いて行かれ、お乳も飲んでいないその子ギツネを巣に連れて帰り、「カイ」と名づけて、わが子として育てはじめました。 やがて、ほかの子ギツネたちが独り立ちしていくなか、カイだけはいつまでたっても気弱で餌獲りが苦手。いつも母ギツネの力を借りていました。 そんなある日、共に登った山の頂から、母ギツネは突然カイを突き落とします。 「お母さん、助けて」叫ぶカイの声に耳を貸さず、姿を消した母ギツネ。見知らぬ森のなかでひとりぼっちになったカイは……。
誰も助けてはくれない弱肉強食の自然界で、カイは自身の中に眠っていたギンギツネとしての血と本能に目覚め、目まぐるしい成長を遂げていきます。 種として新たな命を繋ぎ、長となって群れを守り、宿敵オオカミへと立ち向かう姿。それは、大自然で生きる動物たちの過酷な宿命と、命の輝きを見せてくれます。生と死が隣り合わせの道のりで垣間見せる、育ての母への慈しみや家族への愛情は、生き物の垣根を超え、読者の心を揺さぶることでしょう。 一匹のギンギツネの崇高な生き様を、丁寧に、壮大に描いた物語です。
(竹原雅子 絵本ナビライター)

仲間とはぐれた黒い毛の子ギツネ。アカギツネの母に助けられ、育てられて、やがて厳しい自然と試練の中でたくましく成長。銀色の毛を輝かせるギンギツネの長となります。愛情を注いでくれた母との別れ、孤独な戦い、新たな出会い、そして命の継承を通して描かれるのは、生きることの厳しさと尊さ。大自然の中で懸命に生きる命の物語は、読む者の胸に静かな感動を呼び起こします。
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