「焼きそばつくっておいたから、レンジであっためて食べてねえ!」
「洗濯物、取りこんどいてねえ!」
「あ、ピアスのキャッチャー、どっか行っちゃった! かふう、助けてえ〜!」
語尾にいちいち〈!〉をつけてしゃべる人間に、母親以外でまだ出会ったことがない。せまい家のあちこちをどたばたと動きまわる姿は、まるでしつけのなっていない大型犬みたいだ。
しかたなく地面をあちこち調べてみると、キャッチャーは畳と畳のすきまにはさまっていた。あったよ、と渡してあげると、「ぎゃぽー! さんきゅー!!」と大型犬が私にとびついてきた。
それから愛(らぶ)ちゃんはミニテーブルの上にメイク道具を広げて、置き鏡にむかってマスカラを塗りはじめた。
そのうしろにひざを立てて座り、ヘアオイルを手に広げ、パサついた髪の毛にもみこんであげる。ブラシで数回とかしてアイロンをあててやると、ちゃんと煉獄さんからバービーに変身した。
世界一おかしくて、世界一きれいなうちのママ。
「愛ちゃんはさあ、車の免許を取ろうとは思わないの?」
「へえ? 免許? あたしが〜?」
「だって、車があれば仕事も買い出しも楽にできるじゃん」
そういうと愛ちゃんは、んー、と考えてから口をひらいた。
「それって、学校に通って試験に合格しないともらえないんだよね? あはは、むりむり! あたし、ちょー頭わるいもん。中卒で、高校も行ってないんだよ? いまさら勉強とか、む〜り〜!」
くりんとうわむきになったまつ毛で鏡ごしにこっちを見て、なにがおかしいんだかげらげら笑っている。
* * *
すごく若くて愛情たっぷりの母親、愛海(らぶみ)と、しっかり者の娘、かふう。
沖縄を舞台に繰り広げられる、最高にハッピーで、しあわせな二人の生活。
いつまでもこうしていたい。
でも、いつまでもこのままだったらどうしよう。
ヒップホップと友情を描いて話題の『ピーチとチョコレート』講談社児童文学新人賞佳作の著者待望の2作目!
中学生以上の漢字にふりがな
装画
装丁
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