“発散級数”を積極的に活用することで初めて見える世界を案内する。
完全WKB解析とは、微分方程式に代表される関数方程式の解の大域的な性質を、発散級数の活用により研究する解析学の一分野である。WKBは3人の物理学者ウェンツェル(Wentzel)、クラマース(Kramers)、ブリュアン(Brillouin)の頭文字に由来する。この3名が1926年頃に量子力学の基本方程式であるシュレディンガー方程式の固有値問題の解析において用いた近似解が、後にWKB解と呼ばれた。これが完全WKB解析の起源となる。
完全WKB解析は1980年代終わり頃から純粋に数学として発展し、2階フックス型線型常微分方程式のモノドロミー行列の計算、高階線型微分方程式やパンルヴェ方程式の解の接続問題などで大きな成果を挙げた。近年では団代数、位相的漸化式、多重ゼータ値、差分方程式などとの関連が注目されている。また、物理学の分野では、場の量子論やブラックホールの研究など、幅広い活用例がある。
本書では、完全WKB解析の基礎事項を解説したのち、ガウスの超幾何微分方程式への応用を紹介する。超幾何微分方程式と完全WKB解析の関係を明らかにすることで、超幾何関数に対しても新たな知見を得ることができる。付録には、2階線型常微分方程式のストークス曲線を描画するコンピュータプログラムを掲載した。統一的な立場から接続問題を取り扱う完全WKB解析が、多様な可能性を秘めていることを紹介する一冊である。
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