カカオの町に暮らす、板チョコレートのクーちゃんと、仲良しのぎんがみちゃん。二人は、どんな一年を過ごしているのでしょう。
春、南からの風に誘われて、家の外に出かけた二人が考えたことは?……「1 春のいちばんはじめの日」
夏の朝、海に出かけたふたりの荷物は大きさがまるで違っていて……「4 なくてもいいもの」
秋も本番、よく晴れた午後、二人はたき火を囲んで……「6 ふたりの音楽」
冬、風邪をひいてしまったぎんがみちゃんとどうしてもおしゃべりがしたくて……「8 マフラーと糸でんわ」
クーちゃんとぎんがみちゃんが一緒に過ごす春夏秋冬。それぞれの季節の空気がたっぷり詰まった8つのお話が入っています。
お話の中で素敵だと感じたのは、仲良しだからといって、好きなものが同じだったり、性格が似ているわけではないところ。読めば読むほど、面白いほどに二人の違いが見えてきて、読む私たちもクーちゃんやぎんがみちゃんと一緒にびっくりしたり、笑っちゃったり。
たとえば、おしゃれが好きなクーちゃんが、ぎんがみちゃんがもっとおしゃれをしてもいいんじゃないかと考えて、つやつやした水色のリボンを大切に包んで渡すお話。喜んで受け取ったぎんがみちゃんは迷わずあるところに結んでしまって。さて、どこに結んだと思いますか?
作者は、児童文学作家の北川佳奈さん。お話の中には、チョコウエハースの女の子、ミルフィーユショコラさん、クリの木通り、モンブラン商店街など甘ーい香りがしてきそうな名前がいっぱい出てくるところも魅力です。他にどんな名前が出てくるかぜひ探してみてくださいね。『ぼくに色をくれた真っ黒な絵描き シャ・キ・ペシュ理容店のジョアン』(Gakken)で第28回小川未明文学賞大賞を受賞し、児童文学作家デビューされたという北川さん。北川さんの物語世界をもっと読んでみたくなりました。
また、とびきりキュートなクーちゃんとぎんがみちゃんを描かれたのは、イラストレーターのくらはしれいさん。二人の可愛らしい洋服や髪型をはじめ、それぞれの持ち物やお部屋のページなどじっくり眺めたい場面がいっぱい。表紙も見返しも中の挿絵もまるごと一冊、可愛らしさにあふれています。
友だちの思いもよらぬ反応に驚いたり、違うからこそ尊敬したり、気づけばその子のことを考えている……そんな友だちへの思いや、一緒に過ごす楽しさが詰まった温かな一冊。小学生から大人の方まで。自分用にはもちろん、大切なお友だちへの贈り物にもおすすめです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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