絵本作家・村上康成さんのつり人としての原点がよみがえる、64ページの絵本。
初版(1996年刊行)に描き下ろしを加え、オールカラーとなった待望の新装版です。
村上康成さんと言えば、デビュー作『ピンク、ぺっこん』をはじめとする「ヤマメのピンク」シリーズ(徳間書店)、中川ひろたかさんとのコンビで知られる「ピーマン村の絵本」シリーズ(童心社)、木村研さんとの「999ひきのきょうだい」シリーズ(ひさかたチャイルド)などで絵本ファンにはおなじみ。
エッセイなどでも独自の世界を展開する自然派アーティストです。
のびやかな線と色づかい、余白が生かされた、村上康成さんのグラフィックの世界は、黒々とした生き物の目玉の存在感とともに、一目見てすぐわかります。
その世界が、軽やかに存分に発揮されている本書。
春はヤマメ、夏は新緑の山奥のイワナ、秋はニジマス、そして冬は氷の下の気配を感じながら一日中……。
一年中釣りばかり!
「さかなつりの 五文字のなかには たっぷりと、ゆったりと時間がある」
言葉のとおり、絵本の中には鳥、山菜、川、木々、足跡……。
釣りだけではないたっぷりとした気配がつまっています。
目を閉じて想像すれば、まるで本からマイナスイオンが漂ってきそう(笑)。
読むと魚釣りに行きたくなる! 村上康成さんと一緒に行きたくなります。
でもきっと村上さんを誘ってはいけない。
ひっそりと出かけて、どこかでバッタリ村上さんに会って「どこで釣ったの?」「え、きみが?」とか声をかけられてみたい……。
個人的にはちょっとそんな妄想がふくらむ絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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