たのしい、うれしい、かなしい、くやしい……。
子どもたちの心の中には、毎日たくさんの気持ちが生まれています。
けれど、まだ知っている言葉の数が限られているために、気持ちをうまく表すことができず、思わず強い言い方になってしまったり、そのせいでお友だちとケンカになってしまったり……。
本書は、そんな子どもたちに向けて、「うまく言えない気持ち」をどう伝えたらいいのか、場面に合わせた言い方の例を、やさしく、分かりやすく教えてくれます。
たとえば、おもちゃを貸してほしいとき。
思わず「かして!」「まだ〜? おそーい!」と口にしてしまい、気づけば取り合いに……という経験はありませんか? そんな場面で、「かしてちょうだい」「おわったら、かしてね」といった言い方を提案し、気持ちが伝わりやすい伝え方へと導いてくれます。
本書では、子どもがとっさに言ってしまいがちな言葉を「赤色のふきだし」で、気持ちが伝わりやすい言い換えの言葉を「水色のふきだし」で表現。視覚的にも分かりやすく、子ども自身が「どう言えばいいのか」を自然に学べる工夫がされています。ページの右下には、「どんな言い方があるか、実際にお子さんに問いかけていっしょに考えてみましょう」といった監修者からのアドバイスも。絵本の中の例だけにとどまらず、それぞれのご家庭や場面に合わせた言い方を、都度お子さんと探してみることをおすすめしています。つまりこの本は、子どもがあらゆる場面で、周りの人たちとよりよいコミュニケーションを取るために親子で考えるきっかけを作ってくれる本なのです。
特に印象的だったのは、ポジティブな言葉を使う大切さだけでなく、「かなしい」「やめてほしい」といったネガティブな気持ちも、きちんと伝えることの大切さをしっかり扱っている点です。いやなことをいやだと言える力は、これから成長していく中でも、大人になってからも、自分を守るために欠かせない大事な力ですよね。
また、おなかや頭が痛いときに、どんなふうに痛いのかをオノマトペで表現するページも「なるほど」と感じました。これは、大人が子どもの体調を聞き取る際にも、とても役立ちそうです。
その他、話し合いの仕方や先生との話し方など、小学校生活を想定した場面が紹介されており、入学準備にも心強い内容となっています。
監修者の皆川泰代さん(慶應義塾大学文学部教授・慶應義塾大学赤ちゃんラボ主宰)は、あとがきで次のように述べています。
「自分の感情や状態を言語化する力は、イライラを抑えるなど感情の制御力や他者の感情理解にもつながります。また、適切な言葉を使って自分の意思や気持ちを伝えることは、他者とのコミュニケーションでも重要です」
本文は、親向けのアドバイス部分を除き、ひらがなで構成されているため、園でお友だちとの関わりが増えてくる4歳頃から読める易しい内容ですが、特に、小学校入学前の時期におすすめしたい一冊です。入学前の親子の心強い味方になってくれることでしょう。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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本書は、うまく言葉にできない気持ちの伝え方や、状況にあわせた言い方の例を紹介しています。小学校入学前後の子どもたちにとって、心のうちを言葉にするのは簡単なことではありません。また、思っていることや気持ちを伝えるとき、言い方によって受けとられ方もちがってきます。
●なにかを かしてほしいとき
●がんばっているのに できないとき
●だれかが こまっていることに きづいたとき
●ゲームで まけたとき
●おなかや あたまが いたいとき
●じぶんや かぞくのことを はなすとき など
赤色のふきだしのような、とっさに口をついて出てしまいがちな言葉を、どのように言いかえると気持ちが伝わりやすくなるでしょうか。監修者からのアドバイスを参考にしながら、お子さんといっしょに考えてみてください。ご家庭や場面によっても、言葉の使い方はさまざまです。水色のふきだしのような本書で紹介している例にかぎらず、いろいろな言い方をお子さんといっしょに探してみましょう。
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