絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  佐藤亮子さんと絵本ナビ編集長・磯崎が語る『ことばの豊かな子をそだてる くもんのうた200えほん』 0歳から始める童謡の歌いきかせの良いところ

「赤ちゃんの言葉の発達に効果がある」と高い評価を得ている『ことばの豊かな子をそだてる くもんのうた200えほん』をご存じでしょうか? 絵本ナビでも、出産祝いに贈る絵本として人気があり、実際にこの絵本を使って、親子で繰り返しうたを歌うようになったというレビューもたくさんついています。

でも「200曲も歌えるかな」、「童謡をよく知らないけれど、今のうたとなにが違うの?」と疑問が浮かんできますよね。そこで絵本ナビ編集長・磯崎が、著書『我が家はこうして読解力をつけました』でこの絵本に太鼓判を押して推薦している佐藤亮子さんに、ママたちの素朴な疑問をぶつけてみたところ……ズバリ納得の答えがポンポン飛び出しました。

童謡の「歌いきかせ」の良さが200%わかる、対談インタビューをお届けします。

  • ことばの豊かな子をそだてる くもんのうた200えほん

    出版社からの内容紹介

    お子さまのことばの世界は、赤ちゃんの時期からの語りかけや、絵本やうたを通したことばのやりとりによって、はぐくまれます。

    とくに「うた」は、心地よいメロディーやリズムとともに、ことばが記憶に残りやすいといわれます。うたがすきな子ども、たくさんのうたをおぼえた子どもは、ことばも豊かにそだっていきます。

    『くもんのうた200えほん』は、KUMONが大切にしてきた、こうした子育ての知恵を、ご家庭で実践していただくために生まれました。

    公文式教室でも長く歌われてきたうたを中心に、ことばの世界を広げるのに最適なうたを、なつかしい童謡から子どもたちに人気の曲まで、バラエティ豊かに200曲セレクトし、美しい絵とともに収録しています。

    『くもんの うた200えほん』で、今日から、うたのある楽しい子育てをはじめてみましょう。

    ※別冊付録 「おやこノート」「うた200の木ポスター」つき。
    ※収録曲CD(別売)『ことばの豊かな子をそだてるうた200アルバム@』『ことばの豊かな子をそだてるうた200アルバムA』もございます。また、主要音楽配信サイトより、ダウンロード版を配信しております。(CD版、ダウンロード版の曲目・音源は同じものです)

この人にインタビューしました

佐藤 亮子

佐藤 亮子 (さとうりょうこ)

大分県出身。津田塾大学卒業。大分県内の私立高校で英語教師として勤務。結婚後、夫の勤務先の奈良県に移り、専業主婦に。長男、次男、三男、長女の4人の子どもを育てる。長男、次男、三男は灘中学・高等学校を経て、東京大学理科三類に進学。長女は洛南中学・高等学校を経て東京大学理科三類に進学。現在、長男と次男、三男は医師として活躍。長女は東京大学医学部の学生。その育児法、教育法に注目が集まり、進学塾の浜学園のアドバイザーをつとめながら、子育てや勉強、受験をテーマに全国で講演を行う。著書に『我が家はこうして読解力をつけました』(くもん出版)ほか多数。

子育ては18年間限定の親子の特別な時間

磯崎:佐藤さんは『ことばの豊かな子をそだてる くもんのうた200えほん』の前身となった、『くもんの童謡集 うたの絵本』@Aと、くもんの『童謡カード』を愛用して、お子様が3歳になるまでに童謡1万曲を歌って聞かせたそうですね。そのきっかけが、公文式教室で「うた二百 読み聞かせ一万 賢い子」※と書かれたポスターを見かけたからだと知って、びっくりしました。

※うたを200曲覚えるくらい、読み聞かせを1万回してあげるくらい、子どもと言葉を通じたコミュニケーションをすることが「賢い子どもを育てる」という意味の、公文式の標語

佐藤:そうなんですよ。本当は公文の標語では「うた二百」なんですけど、ポスターをチラッと見て「うた」と「1万」という文字が頭に残ったので、「童謡を1万曲歌って聞かせたらいいんだ」とかん違いしたところから始まったんですけどね(笑)。「三つ子の魂百まで」というから、3歳までに1万曲に到達するように、日割り計算して歌いました。

磯崎:「1万曲」ってすごい数で、できそうにないなと思ってしまいます。佐藤さんが「やってみよう」と思ったのはなぜですか?

佐藤:親として子どもに深く関われるのは、18歳までだと気づいたからなんです。子育てって、18年間限定の親子の特別な時間なんですよ。しかも子どもは、18年の中で12年間も学校でデスクワークをする。それだったら、12年間の学校生活を楽しく送るために、小学校一年生からいいスタートで始められるようにしてあげたいと思ったのです。なんでもスタートが肝心ですからね。

そこでスタートを上手に切るにはどうしたらいいだろうと思い、その時の小学校で習う内容を詳しく調べてみようと、当時の小学校6年間の教科書を全教科取り寄せてじっくり読んでみたのです。私が小学生の頃はどうだったかなと思い出しながら教科書を見ていたら、音楽の教科書が自分のときとまったく違うので驚きました。最近のアーティストが歌うポピュラーソングが増えて、昔の童謡がなくなっていたんですよ!

磯崎:2004年に『教科書から消えた唱歌・童謡』(著:横田憲一郎、扶桑社)が発売されて、当時話題になりましたね。

佐藤:そう。自分の目で確かめて、本当に消えてるんだと思いました。私は、昔からずっと歌われてきていて、自分の祖母や母も聞いたり歌ったりしてきた日本の童謡を、ここで途切れさせたくないなと思ったのです。教科書に新しいうたが多くなって、昔から歌われてきた童謡が教科書に載せられていないのなら、私が子どもに教えなければ!と思いました。

リモートで佐藤亮子さんと対談する、絵本ナビ編集長・磯崎園子

磯崎:絵本ナビスタッフからは、テレビの子ども向け番組で流れるものも新しいうたが多くて、童謡が少ない気がするという意見があったんです。一方で、子どもが好きな新しいうたではなく、童謡を歌った方がいいのかなという疑問が出ました。佐藤さんはどう考えていますか?

佐藤:どっちも歌ったらいいと思います。大して時間もかからないことだから、悩まずに両方歌ったらいいのです。絵本だって、古いのも新しいのも読んだらおもしろいでしょう? 子どもには古いとか新しいとかは関係ありません。古い童謡でも十分感動しますし、小さい子どもには多少意味が難しそうな言葉も、そのまま丸ごと頭の中に入りますから! 子どものうちに、多様な言葉を聞かせてあげることが大事なのです。子どもの能力は無限ですよ。だから、古いものも新しいものも大事なのです。

磯崎:新旧混ざってもいいし、バランスを取ってあげて。

佐藤:そうです。子どもがこれから未来を生きていくためには、新しいことだけじゃなくて、古いこともきちんと知っておいた方がいいし、歌詞で使われている言葉が今と違うことも、言葉が「生き物」で、使われているうちに変わっているんだという認識が、童謡を聞くことで感覚的に身に付きます。

大切なのは、とにかく子どもの耳からたくさん言葉を入れること。こっちが便利だとか、これがテストに役立つとかいうような考えでは、子どもの能力は大きく育ちません。世の中のありとあらゆるものを耳から入れておくことで、子どもは健やかに育つのです。

赤ちゃんは耳で聞く音から言葉を覚える

磯崎:童謡の魅力を具体的にお伺いしたいのですが、佐藤さんご自身も小さい頃から童謡を聞いていましたか?

佐藤:聞いていました。だから童謡1曲1曲に、いろんな思い出があります。「そういえばうちの母があんなこと言っていたな」とか「洗濯しながら歌っていたな」とか。それと一緒に、その時の気候の暖かさや風、母の仕草、作っている食べ物のにおいなど、うたを聞いた時に受けた五感の記憶がよみがえってきます。童謡の音と思い出や記憶は一緒にあるんですね。童謡1曲にそれぞれの記憶が結びついているということです。その記憶が多ければ多いほど、人の心を豊かにすると言えます。

「童謡の良さは絶対」という信念のある佐藤さんの答えは、すべてが明解。話を聞いているだけで「私にもできそう」と思えるパワーがありました

磯崎:なるほど。

佐藤:例えば、私が好きな「たきび」という童謡は教科書にはもう載っていません。この童謡の1番は「かきねの かきねの まがりかど」2番は「さざんか さざんか さいた みち」3番は「こがらし こがらし さむい みち」が出だしですが、生垣の家、たきびの暖かさ、花が少ない冬に咲くさざんかの花はいわば日本の原風景です。たきびは、今や庭や道路などではすることはできませんが、キャンプファイヤーでは、同じような経験はできますね。我が家は、さざんかが植えてあるので、子どもたちはこのうたの2番が気に入っていました。

磯崎:うたのフレーズで思い出すんですね。

佐藤:そうです。童謡にはメロディーがついていますから、その音符に乗って言葉が心に染みこんで、脳に入り込みやすくなって残るんです。人間は言葉で生きていて言葉で考えているので、言葉が少ない人間は思考、思索が浅くなってしまいます。だから心豊かに育てるためには、言葉は多ければ多いほど良いということです。「嫌だ」「好きだ」という気持ちを伝えるときもいろいろな言い回しがあるように、言葉が多いと他人とのコミュニケーションも豊かなものになりますね。

今は「英語の早期教育」が話題になることも多いですが、まず英語を身につける基盤となる日本語で、「言葉は人同士の意思疎通のためにある」ことを実感しておいた方が良いです。私は、子どもたちには言葉が豊かな人になってほしいと思いました。文字が読めない赤ちゃんのときに、美しく正しい日本語を覚えてもらうにはなにがいいんだろうと考えてたら、やはりメロディーがついた童謡が一番なんだと思い至ったというわけです。

磯崎:確かに、童謡には美しく正しい言葉が詰まっていますし、日本語の響きがはっきり伝わってきます。「ちょうちょ」もそうですが、童謡はメロディーがついているのに言葉が真っ直ぐに体に入ってくるのが不思議だなと。日本語にぴったりのメロディーなんですよね。

佐藤:そうなんです。英語は音が集まってかたまりになっている「単語」が言葉の最小単位で、その「単語」を続けて文章にすると音が繋がりますから、抑揚があって音楽的な響きを持っています。日本語は「50音」という音だけの文字を組み合わせて言葉を作るので、ポイントとなるアクセントがなくて平坦に聞こえますが、そこにメロディーがつくと聞きやすいし、歌いやすくなっているのです。

自分で童謡を歌っているときに気づいて驚いたのですが、童謡は、言葉に変な抑揚をつけたり切ってしまったりはしていないのです。例えば歌詞に「すずめ」という言葉があるとして、童謡では「すず・め」とか「すーずめ」という歌い方ではなく、必ず「すずめ」になっています。これが一番の違いで、歌謡曲やポピュラーミュージックは言葉を不自然に区切っている場合が多いので、歌詞を活字で見ないと何を言っているのか聞き取れないことが多いですよね。

磯崎:確かに、大きな違いです。

佐藤:童謡は一つ一つの言葉に聞いていて気持ち良いメロディーがつけられていますから、小さな子どもでも聞き取りやすくて、耳から覚えやすい。赤ちゃんが言葉を覚えるのは、目で見る文字ではなくて、耳で聞く音が先ですから。言葉の意味は理解できなくても音としてまず覚えるから、耳から入ってくる音はとても大事。だから絵本を読み始める前に聞かせるのに、ちょうどいいんです。

磯崎:それはすごく納得できます。小さい子が、難しい歌詞をたどたどしい口調で言うのにびっくりしたことがありますが、それは言葉をうたとして丸ごと覚えているからなんですね。

童謡は正しい日本語と標準語のイントネーションを覚える最高のツール

磯崎:そういえば、絵本ナビスタッフの話で、親が歌詞や音程を間違えると子どもに「違う!」と怒られるという話がありました。

佐藤:自分が覚えている音や言葉と違うので「耳障り」なんですよ。日本各地にいろいろな方言がありますが、童謡は標準語のイントネーションをきちんと音、つまり音符で再現しているんです。

磯崎:えっ!?

佐藤:びっくりするでしょう? 私も気づいて驚きました。私は大分出身なので「すずめ」のイントネーションが標準語とは違っていて「す」が高い音なんです。でも標準語は、童謡の楽譜で書かれた「ソソソ」の通り、全て同じ音なんですね。

磯崎:わあ、面白い! それを聞くと、童謡を聞きたくなります。

佐藤:だから、きれいで耳ざわりがいいんだなって。すごいなと思いました。赤ちゃんの耳に最初に入るものだから、正しいものを聞かせてあげないと。正しいメロディーと言葉は大事です。だって作詞、作曲家の方が命をかけて作り、代々歌い継がれているものを、勝手に歌う側が半音下げたり上げたり気持ち悪い歌い方をしてはだめでしょう。だから私は童謡のCDを買って、子どもが寝た後にひたすら正しい音程にしようと練習しましたもの。

磯崎:それはすごいですね!

佐藤:特に知らないうたを覚えるときは、CDが頼りになります。親が間違っていると、子どもも間違えて覚えてしまう。だから親は、一応正しい音程で歌う努力をすべきです。うちの子たちは「ちかてつ」といううたが大好きだったんですが、私の子ども時代にはなかったうたなので、CDを聞いて練習したんです。ところが主人が歌うと、「ちかちか ゴーゴーゴー」の「ちかちか」が半音ずれていて、聞いていて気持ち悪いんです。「もう二度と歌わないで」と言っても、子どもにせがまれて歌って、半音ズレる(笑)。音楽もそうですが、上手な人の演奏は気持ち良く聞けるけれど、下手な人の演奏はイライラして。

磯崎:違いに敏感な子どもは、もっとイライラしそうですね。

佐藤:そこで私は、『童謡カード』の歌詞に「ここは上がる(↑)」と矢印を書いたり、「ここは強く」と書いたりして、「浪曲か!」みたいな感じになっていました。でも、ズレる。

磯崎:かえって忘れられない思い出のうたになっていますよね(笑)。

佐藤:そう。「ちかてつ」のうたをきくと主人のズレたうたが耳によみがえって、めちゃくちゃイラつきます(笑)。そういうなんでもないやりとりの思い出が合わさって、子どもたちは今でも「『ちかてつ』を歌うとママがすごく怒ってたな」と言います。でもそういうのが大事。だって言葉に思い出と心が入っているでしょう。それこそが、人間を豊かにしてくれる。

よく中学受験が近づいた段階になって、「うちの子は記述力が弱い」とか「読解力がなくて国語の点数が取れない」と悩む方がいらっしゃいますが、「点数で測れるようになってからでは手遅れだ」とずっと思っていました。言葉を覚えるときからやらないと。私は、童謡と絵本は同時スタートでした。首が据わらない子を抱っこしながら絵本を持って読むのは大変でしたから、覚えていればハンズフリーで歌える童謡は便利でしたね。

子どもの耳にはお母さんの声がいちばん届く!

磯崎:CDを買った方が良いのか迷ってしまいそうですが、CDにもちゃんと役割があるんですね。

佐藤:私は、ドライブ中にずっと童謡のCDをかけていました。CDの音源は余計な音がないシンプルなつくりなので、子どもの耳に残りやすいんです。おかげで、子どもたちはくもんの童謡のCDでイントロクイズができます。別の有名歌手の方が歌う童謡のCDをかけたこともありましたが、オペラのように歌唱テクニックを駆使して歌うものは子どもの耳に入っていかないのか、真面目に聞いてはくれませんでした。だからやっぱり、シンプルなくもんのCDが優れていると思いましたね。

磯崎:これも疑問なんですが、CDの音で聞かせるのと、佐藤さんのようにお母さんが歌って聞かせるのはどちらがおすすめですか?

佐藤:CDはあると便利。でもお母さんの生の声の方が断然子どもの耳には入ります。赤ちゃんはお母さんのお腹の中に居るときから耳が聞こえていて、外から胎内に響いてくるお母さんの声を聞いているので、童謡の歌詞もお母さんの言葉としてちゃんと聞いてくれるんですよ。CDのうたは、見知らぬ他人が歌っているので、正しいかもしれないけれど、子どもがちゃんと聞こうという姿勢になりにくいことがある。

磯崎:聞き流しちゃうんですね。

佐藤:私も最初は、年中歌っていられないし、ずっとCDを聞かせておけばいいかなと思ったんです。でもCDだと、ただのBGMになっちゃうんですね。子どもたちの様子をみても、聞こうとしていないのがわかったので、私は「毎日ママが歌うね」と方向転換しました。たとえ下手でも、いつも聞いているママの声で子どもの目を見ながら歌うだけで、もう愛情たっぷりのうたになるんですよ。やっぱりお母さんの声で歌うと、子どもたちの反応がすごく良くなる。私は歌いながら、「子どもって、手間がかかるわ」と思いました(笑)。

磯崎:でも、子どもの反応を観察できるというのは大きなメリットですね。

佐藤:CDでも反応してくれたらいいのにって思いましたよ。でも子どもって、どうしても親に手間をかけさせるんです。もう非効率の塊。

磯崎:それが最初からわかっていたら、子育ての感覚も全然違いますね。

佐藤:私も最初は知らなかったので、長男を産んだ後は大変でした。だって大人はどうしても、効率の良さを優先して生きているでしょう。だから腹をくくって、子どもは非効率の塊みたいな生き物なんだから、私の人生の中で子育ての間だけは、非効率を追求してもいいかなと思ったんです。子どもが18歳になって子育てが済んだら、大人としてまた効率優先の世界に戻るわけだから。だから子育て中は、非効率であることを楽しもうと思っていました。そのために親が時間と労力を使わないと。

童謡は親も楽しめる子育てツール!

磯崎:私も経験しましたが、まだおしゃべりができない赤ちゃんをお世話している時期、気がつくと言葉を発していないなと気づく瞬間がありました。そういう時に童謡はぴったりですね。

佐藤:私も最初は、話しかける余裕もなくて、黙々とおむつを換えていた時期がありました。だから童謡のCDを流しっぱなしにしていましたね。これは子どものためというよりは自分のため。童謡を聞いていると、私の気持ちも落ち着きました。ある時主人が、童謡ばかりでは飽きるだろうと、シンセサイザーのインストゥルメンタルのCDを買ってきてくれたんです。初めは良かったのですが、繰り返し聞いているうちにその音を聞くとしんどかったことがよみがえるようになったので、聞くのをやめました。

磯崎:やっぱり言葉がある方がお好きなんですか?

佐藤:童謡には言葉があるから、流れてくると何の気なしに口ずさむことができるんですね。とりあえず、ついでに歌えるというのがいい。呼吸法というものがありますが、息を吸うよりも吐くほうが大事らしいですね。だから童謡を歌うのも、吸って吐くから身体に良いんじゃないかと思います。言葉もとてもきれいで上品だし、昔聞いたことがあるし、内容も深いし季節も感じられる。

磯崎:内容に深みがあると、考えるきっかけになるので、大人にとっても良い時間になるかもしれないですね。

佐藤:そう。赤ちゃんはしゃべらなくて泣くだけでしょう?長男が生まれた時は辛すぎて。「ちゃんと言葉で言ってくれたらわかるのに、赤ちゃんだから泣くしかないんだな」なんて、しばらくして当たり前のことに気づいて。その時に「赤ちゃんがしゃべってくれたら親は楽なのに」と思ったから、早くこの子の耳に言葉を届けなくちゃと思ったんです。未熟な母親だったんですよ。

ただ子どもはいつまでも赤ちゃんじゃなくて、大きくなりますし、私は童謡があったおかげで、楽しみながら子育てができたなとも思います。やっぱり楽しいツールがないと子育ては楽しめませんね。

磯崎:童謡は子育ての頼りになるし、楽しめるし、思い出にもなる素敵なツールなんですね。

歌うタイミングは親が決める! 隙間時間に童謡ショーを開催♪

磯崎:3歳までに童謡1万曲が目標だと、1日何曲くらい歌うのでしょうか。また、いつどんなタイミングで歌っていましたか?

佐藤:大人はノルマを課して、それを着実にクリアしていくのがモチベーションになるので、私は1日15曲と自分で目安を決めました。決めすぎると大変になるので、最低10曲みたいな。子どもの世話をしながら、なにか1つのことをまとめてやるのは基本的に無理だし、子どもたちも飽きてしまうので、昼食後にゴロゴロしているときや、お茶を飲んでいるときなどの隙間時間に、「今からママ、童謡を3曲歌います」と言って、歌いました。

磯崎:お母さんの童謡ショーですね(笑)、楽しい。お子さんたちは、興味津々で聞いてくれましたか?

佐藤:「ふーん」という感じで取りあえず聞いてくれました。『童謡カード』が便利なので、歌詞を見ながら3曲歌っても、10分もかかりません。そうやってきょうだい4人にそれぞれ3歳まで歌ったので、末っ子までかなり長く歌ったことになりますね。ノルマの15曲を一気に歌うと私の仕事はすむのですが、まとめて歌うのはなかなかできないと思いました。

子育て中には、なんでもまとめてやるのは無理なので、するべきことはバラバラにして小刻みにすませる方法がいいですね。なんでもまとめて済ませてしまいたいのが大人ですが、子どもがいるとそうはいかないのです。また、上の子と下の子に違うことをさせなければならない場面にもよく遭遇すると思いますが、なんでも同時並行でするということが大事なんですよ。1人ずつやるという考えはうまくいかないし、ストレスが溜まります。

磯崎:兄弟の年齢の差があると理解度が違いますし、好みも違いますよね。歌ううたはどういう基準で決めたんですか?

佐藤:そこは私が歌いたいうたを歌います(笑)。そうじゃないと心がこもらないですから。雨が降っていれば雨のうた、秋なら「もみじ」。紅葉は日本の四季独特ものですから、日本人の心にすごく刺さります。私は紅葉のすばらしさを感じる子どもになって欲しいなと思っていたので、秋には毎日歌っていました。そうすれば、街路樹の葉っぱが黄色や赤になっているのを見たときに、子どもたちの耳にはママが歌った「もみじ」が聞こえているんだろうなーと思って。実際に子どもに聞いたことはないですけれどね(笑)、そういう風にしたかったんです。でも1つ困ったことがあって。

磯崎:なんでしょう?

佐藤:今このうたを歌いたいと思っても、歌詞をちゃんと覚えていないこともあるんですよ。ああ、1曲丸々覚えていたら今このうたを歌いたかったのにと思う瞬間がたくさんあったんです。だから、うたをたくさん知っているのは大事だなと思いました。今の季節だと「はるよこい」や「ちょうちょ」、「はるのおがわ」や「さくらさくら」もあるでしょう。

磯崎:その場に合ううたを歌いたいならたくさんのうたを知っていた方がいいし、好きなうたを繰り返し歌ってもいいんですね。『くもんのうた200えほん』は200曲ものうたの歌詞が1冊にまとまっているので、とても役立ちそうです。童謡には難しい言葉も出て来ますが、その言葉の解説はどうしていましたか?

佐藤:歌っている最中はできないので、別の時間に『童謡カード』を見ながら子どもと話しました。だから歌詞が書いてあるカードや絵本は、言葉の解説の時にすごく役に立ちます。特に「絵」があるのがいいんですよ。私は4人の子どもで同じカードを使ったので、カードを見るとそのときの思い出がよみがえって懐かしくなります。『くもんのうた200えほん』でも同じことができると思います。

私が歌詞カードを自作したものもありました。その時に描いた鳥に、足を4本描いちゃったんですよね。「ママ、鳥に足が4本あるのはおかしいよ」と子どもに言われて「え、4本じゃないの?」となって、描き直したんです。すごく下手な絵で、子どもたちは吹きだしながら見て、歌っていました。

磯崎:おもしろい。喜びますよね。しかも絵とうたが強く結びついて、記憶に残りますね。

佐藤:耳だけじゃなくて、目や鼻も、使える五感はフルに使わないと。歌っているときにカレーの匂いがしたとか。やっぱり感覚は、使えば使うほど豊かになりますから。

『くもんのうた200えほん』を使いつくして、うたのある楽しい子育てを!

磯崎:『ことばの豊かな子をそだてる くもんのうた200えほん』は、1曲につき絵が1カットつけられています。絵本もそうですが、歌いながら絵をじっと見るといろんな想像が広がって、絵本のおはなしとは違った豊かな世界がありそうです。

佐藤:童謡の歌詞は絵本のおはなしよりもコンパクトなのに、ものすごく奥深い。野口雨情の「シャボンだま」も、亡くなった親戚の子や娘の命をシャボンだまに例えているという考察があるでしょう。子どもたちがずっと楽しく「シャボンだま」を歌っていたのに、私がその考察を教えたら、同じうたなのにめちゃくちゃ悲しくなってしまって。でもそんな風に、言葉には深い意味があるということを知るということが大事です。表面だけを捉えるのではなく、言葉には奥行きがあることを教えられたかなと思いました。

子どもの視野は本当に狭くて、自分の周りしか見えていない。童謡を通じて、もっと違う世界があることに気づいてくれたらいいなと思いました。

磯崎:素敵ですね。この『くもんのうた200えほん』は、出産した方へのプレゼントにもいいなと思うのですが、逆に歌わなければいけないプレッシャーを与えてしまうかもしれない心配があって……。佐藤さんなら、この絵本をプレゼントするときに、どんな言葉をかけられますか?

佐藤:「3歳までに1万曲を目標にして。200曲じゃ全然足りないでしょ? 200曲くらい知ってて当たり前。日本人の教養ですよね?」と渡しておきます。童謡200曲くらいでプレッシャーになっていたら、その先の子育てなんてできないですよ。人間ちょっとやそっとじゃ賢くならないんだから、200曲くらいはちゃんとやってねと話しますね。

磯崎:わかりました、買います(笑)。この絵本の使いかたで気になるのですが、絵本の順番通りに歌ったほうが良いんでしょうか? それとも1曲ちゃんと覚えてから次に進むみたいなことも考えた方が良いのでしょうか?

佐藤:その日パッと本を広げたページにあるうたでもいいし、動物とか季節とかのテーマで選んでもいい。好きなうたからでいいんですよ。1から順番にやっていこうなんて決めたら、20曲くらいで絶対に挫折します。だから順番でやるのはおすすめしません。

この絵本はうたの記録が書き込める「うた200おやこノート」という別冊付録もついているので、思い出を書き込んだら日記代わりにもなるでしょう。歌い終わったら子どもと一緒にシールをはっていくのもいいし、子どもの落書きは、スマホの写真よりも大事な思い出になりますから。絵本自体の表紙も柔らかいし、絵もきれい。ちゃんと歌詞も楽譜も載っているから、本当に使いやすいんです。だからこれを楽しみ尽くすのがいいと思います。

手遊びがあるものはその遊び方も掲載されているので、お子さんと一緒に楽しめます

磯崎:佐藤さんは、なんでも材料があったら使いこなしてしまうんですね……! 最後に、子育て中の絵本ナビユーザーにメッセージをいただけますか?

佐藤:子育ては大変だけど、いろいろ考えずにとりあえず歌ってあげるのが大事です。毎日同じうたでもいいから、お母さんが楽しかったらいいんです。そのくらい童謡を歌いきかせるのは、子どもの言葉の発達に効果があるんです。そこは間違いがないので、どんどん歌ってください。

聞き手:磯崎園子(絵本ナビ)
テキスト:中村美奈子(絵本ナビ)
撮影協力:佐藤亮子
※このインタビューはリモートで行いました

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