ありそうでなかった、耳心地の楽しい赤ちゃん絵本ですね! 今回の企画はどのように生まれたのですか?
ナカオ:もともとfancomiさんとはべつの絵本の企画を進めていたんですが、打ち合わせ中にふとfancomiさんの絵を見て「ぐにゃぐにゃさせたらおもしろいんじゃないか」と思ったんです。それで、かんたんなラフといっしょにfancomiさんに提案したら、「それいいですね!」って盛り上がって、その場でいろいろ案出しをして。『ぐにゃぐにゃ わんわん』というタイトルといっしょに、あっというまにいまの原型になるテキストができあがりました。
でも、そのときの編集者さんは赤ちゃん絵本のご担当ではなかったので、「これ、おもしろいけど、どうしよう……」という話に。その後、しばらくはそのままになってしまっていたのですが、あるときにfancomiさんを通じて偕成社さんに企画を提案してもらって、紆余曲折の末、晴れて出版に進めることになりました。
制作中には、6か月から1歳半くらいに成長していくお子さんに何度も読んであげたと伺いました。そのときの反応はどうでしたか?
ナカオ:もともと絵本が好きなので、ふだんから息子にもたくさん読んであげていましたが、この『ぐにゃぐにゃ わんわん』は、ほかの絵本とくらべても、とくに反応がよかったんです。それはもう、びっくりするくらい。とくに「ぐにゃぐにゃ?」のリズムのときに、大よろこびして楽しんでくれました。
「赤ちゃん絵本」には昔から興味があって、『もいもい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の監修をした開一夫先生に、個人的に話を聞きにいったりもしていました。実際につくるのは今回がはじめてだったのですが、まわりの親子に読んでもらったときもいい反応だったので、「これはいけるかも」という自信になりましたね。
fancomiさんは偕成社では幼年童話『あしたもオカピ』(斉藤 倫 作)の挿絵を描いていただいています。今回のような「赤ちゃん絵本」はfancomiさんもはじめてですね。苦労されたところなどありましたか?
fancomi:ナカオさんからテキストをいただいて、最初に絵本のかたちにしたときは、いまとはまったくちがう絵柄でした。もっとなにかわからないくらいまでぐにゃぐにゃさせて、線の無いキュビズムっぽくデフォルメした絵柄にして。これもあらためて見るとかわいいんですけど、「すこし怖いのではないか」というような意見もあって。
それで、太いアウトラインをとった現在のかたちへと、すこしずつブラッシュアップしていきました。ただ、これがもうたいへんで……。相手は赤ちゃんなので、どのくらいの「ぐにゃぐにゃ」具合にしたら、ちょうどよく楽しんでくれるのか、そのあたりのさじ加減がわからない。それを探りながら、たくさん試作をつくりました。
やればやるほど迷ってくるので、最終的には悩みすぎてどれがいいのかわからなくなったりもしました。これまで絵本の仕事はいくつかありましたが、いちばん大変だったかもしれない(笑)。本ができあがったいまも「正解」はわからないですが、何度も試行錯誤をしていくなかで、納得のいくものになったと思います。
最後に、このページをごらんの方にメッセージをお願いします!
fancomi:この本は読み方しだいでおもしろさがいろいろ変わるので、お子さんといっしょにリアクションをとったり、体を動かしたりしながら、自由に楽しんでもらえたらいいなと思います。
ナカオ:制作中に読んでくれていた息子は2歳になったんですが、いまでは、外で犬を見かけると「わんわん、ぐにゃぐにゃわんわん!」っていうようになりました。絵本のタイトルをいえるようになったのは、はじめてのことです。子育てのこういうタイミングで赤ちゃん絵本をつくることができたのは、僕にとって小さな奇跡だなと思っています。ぜひたくさんのお子さんに楽しんでもらえるとうれしいです!
この書籍を作った人
1982年、和歌山県生まれ。子ども向けテレビ番組の制作を経て、絵本作家としてデビュー。絵本を使った、トークショーや絵本ライブ、絵本のテーマソングの演奏など、精力的に活動している。ブログ:https://ameblo.jp/kokoniiruyo-koisuru/主な作品として、「うれないやきそぱパン」「ちょんまげとんだ」「ようかいばあ」「ぞうきんレスラー」「いってらっしゃいうんちくん」「どんどんくるくる」「ようかいでんしゃ」がある。
この書籍を作った人
イラストレーター。1980年生まれ。A&A青葉益輝広告制作室勤務の後独立。イラストレーターとして、ジャンルにとらわれずに幅広く活躍中。第3回グラフィック「1_WALL」ファイナリスト。近著に『SMALL STORY』(SUNNY BOY BOOKS)、『ねこがたいやきたべちゃった』(文・円城塔/アタシ社)『ガハクとブラシ』(小学館)がある。