絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  小さい子から楽しめることば遊び絵本!『す〜べりたい』『ぶららんこ』鈴木のりたけさんインタビュー

鉄のくさりの感触、すべりだいの線のパキッとした感じを出したかった

───なぜこんな作り方をしたんですか?

やっぱり、子どもたちはふだん公園の遊具にふれているわけだから、その肌感をリアルに表現しないとまずはダメじゃないかと思いました。くさりをにぎったときのごりっとした感じや、すべりだいのまっすぐな感じ……「そこ」を表現したい! そのためにはどうしたらいいかなと考えました。
ぶらんこのくさりも、すべりだいも、金属質で直線的ですよね。硬質な感じは、きっとアクリル絵の具で塗っただけでは表現できないだろうなと。だったら、いっそ、切って貼っちゃおうと。
すべりだいも、カッターでピーッと切ったらぜったい直線になりますから。そのスパッとした感じがほしくて、切って貼るやり方をはじめました。
でも最初はぶらんこのくさりのことまで考えていなかった。切って貼った上に、くさりのところだけあとから描くというのもかっこ悪いなあ、じゃあ、くさりも切って貼らなきゃ、となったときに、「あれ、やばいぞ」と。
……そこではじめて気づいて(笑)。

───(笑)今回はいつもより手数がかかっていないのかと思ったら。


大きな傘の部分は色紙。内側は木炭で黒くぬり、陰影をつけたそう。

落とし穴があったわけですね(笑)。みずから掘った落とし穴ですけど。
でもね、やっぱり筆で描いたのと切ったのとでは、くらべてみるとエッジがまったくちがって、雰囲気が変わるので、やってよかったです。
背景は筆でペイントし、遊具や主人公の女の子は切り貼りで、パキッと存在感があるから、奥行きが出ました。


くさりもぶたも切り貼り。くさりは、茶色の紙にハイライト(白)とシャドウ(黒)を描いてメリハリ。

───そうか。だから、絵本全体につきぬけたような爽快感があるんですね。
みつばちさんと「ぶんぶん ぶんらんこ」で空に飛んでいったぶらんこは、雲ぶらんこ、海ぶらんこ、お花畑ぶらんこになって……。ため息がでちゃうほど風景が壮大。もう圧巻です。
ぶらんこで空を飛んだらいい気分だろうなあ……。


海にもぐって……ここは手描き。描写によって描き分けています。

───実際、どんなふうに絵を作ったのか、写真を見せてくださいました!


ぶんぶんぶんらんこ。いってきまーす。入念なラフのとおりに絵と文字を配置。

───この方法で絵本を制作したのは、はじめてですか? 

はじめてですね。

───やってみて、いかがでしたか。楽しかったですか(笑)。

楽しかったですよ〜。ふだんやっていないことをやったので新鮮でした。いつもは、絵を描いて色をぬったところからちょっとずつ出来上がっていくけど、これはまず部品をぜんぶ作って、決めた構図どおりにのりでピタッと貼って最終的に合体させたときの「ハマった!」という達成感が気持ちよかったですねえ。
いままでは、100%隙間なく、すべての部分にピントがあっているような絵がおもしろくて描いてきたけど、今回は、ばーっと筆で背景を描いたところと、遊具や登場人物たちのパキッとしたところを分けたことで、空間の感じがよく出た。これまで描いてきた絵とはまたちがう、あたらしい何かを獲得したなと。知らなかった扉が開いたような、新鮮な感じがしています。



読み聞かせで大合唱!

───予想外に制作がたいへんだった場面や、作ってみたら意外とおもしろかった場面はありますか。ぶらんこのくさり以外で(笑)。

長ーいすべりだいの場面ですね。これ、座面の白いところは穴があいてるんですよ。

───……え??

3ミリくらいの幅の長ーーーい赤線を平行に貼ったわけです。すべりだいの両側、べつべつに、ぜんぶ切れずにつながってるのを切って貼っているんですよ。これはたいへんでしたねえ……。
白いところもつなげて切ってしまえばよかったのに、なぜこだわっちゃったんだろう(笑)。
もう、赤い細い線がからまっちゃって「ムキーーーッ」ってなってました(笑)。

───そんなこだわり、実現可能なんですか? 想像するだけで……しびれてきます!

「もうやめて、あたらしい方法でやりなおそう」とかね。思ってもよかったんでしょうけど、そういうときやり方を変えるのは自分に負けた感じがして嫌なので、粘っちゃうタイプなんですよ、僕は(笑)。
ああ、やってしまったな〜〜〜と。


読み聞かせで、子どもたちが盛り上がる!

でもこのページ、読み聞かせでけっこう盛り上がると思いますよ。
昨年(2014年)の12月に、朝日新聞の“オーサービジット”(作家の出前授業)で沖縄の小学校にいきました。
ちょうど原稿ができあがったところだったので、「世界でいちばん早い読み聞かせです」といって20人くらいのクラスで読み聞かせをしました。そしたらこのページにさしかかったとき「おおきくいきをすってぇー」といった、次の瞬間、「すーーーーーーー!!!!!!」って、子どもたちが大、大合唱(笑)。最後のほうはだんだんゆっくりにして「す〜〜〜〜〜〜〜〜」……息がつづかなくなるぎりぎりくらいのところで「……べりだい」(笑)。
本当になんの迷いもなく大合唱するんだから。やっぱりこういうページはみんな好きなんですねえ。
『ぶららんこ』の「ぶららららら……」のページも、いっしょに「らららららら……」っていってましたよ。

───「すべりだい」「ぶらんこ」っていってるだけなのにおもしろいんだから、たまらないですね〜。

もともと音遊びからはじまった本ですから、音のひびきがおもしろい絵本にしたいなと思いました。
口にだして読んだらおかしくて笑っちゃう、というおもしろさを伝えるため、どんな場面があったらいいだろうかと、編集者さんと話し合いながらできたページです。

───ほかに一押しの場面はありますか。こんなすべりだいやぶらんこ、あったらいいな〜と思う場面は?


文字のすべりだい。見てください、この芸の細かさ。

ぶらんこは、いろんなところにいくストーリーですからね。空は飛んでみたいですよね。海につっこんじゃうのはいやだけど(笑)。
すべりだいの一押しは、文字のすべりだいです。これも切って貼るのたいへんだったから、思い入れがあるというのもあります。これ、書き順のとおりにすべれるようになってるんですよ。

───本当だ!

貼るとき、ちょっとずれたら文字が読めなくなっちゃうから、たいへんでした。ぜひどこかの公園で実現していただきたい(笑)。

───本当にあったら、“街の珍百景”に登録されるでしょうね(笑)。

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鈴木 のりたけ(すずきのりたけ)

  • 1975年、静岡県浜松市生まれ。会社員、グラフィックデザイナーを経て、絵本作家に。『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で第17回日本絵本賞読者賞、『しごとば 東京スカイツリー』(ブロンズ新社)で第62回小学館児童出版文化賞を受賞。
    主な作品に、「しごとば」シリーズ(ブロンズ新社)、『かわ』(幻冬舎)、『おしりをしりたい』(小学館)、『そだてば』(朝日新聞出版)などがある。

作品紹介

す〜べりだい
す〜べりだいの試し読みができます!
作:鈴木 のりたけ
出版社:PHP研究所
ぶららんこ
ぶららんこの試し読みができます!
作:鈴木 のりたけ
出版社:PHP研究所
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