絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  小さい子から楽しめることば遊び絵本!『す〜べりたい』『ぶららんこ』鈴木のりたけさんインタビュー

戦略的にアイディアを練ります 〜鈴木のりたけの仕事術!?

───「ぼくの」シリーズでは、いろいろな形のおふろやトイレ。今回は、変な形のすべりだいや、ぶらんこ。読者レビューでどなたかが書いていたのですが、「のりたけさんのアイディアは尽きることはないのでしょうか」と。

考えればみなさんもでてくると思うんですけどねえ。どうなんでしょう。

───簡単におっしゃいますが、そんなことないと思います(笑)。
具体的に、アイディアを出すときはどんなふうに考えるんですか?

たとえば最初は、ぶらんこにトラがのって「とらんこ」とか、犬がのって「ぶわんこ」とか、音からキャラクターも考えました。でもあんまりたくさん動物を出してもなあ、と、ぶらんこはぶただけになりました。
ボツになったのは、すべりだいでは、「大すべりだい」と「すべちっちゃい」(小さいすべりだい)とか。
ぶらんこでは、川の両岸に支柱があって、そこへ桃が流れてきてぶらんこにくっついて「どんぶらんこっこ」とか(笑)。
まずは「桃がどんぶらこと流れてくる」という予備知識がないと笑えない。そんなくだらないことをいーっぱい考えたんですよ。なんかわかりにくいなあ、イマイチだよなあというのは、ボツになるべくしてボツになります。

僕はアイディアを出すときは戦略的に考えます。たとえば『ぼくのおふろ』だったら、「おふろの大きさを変えてみよう」と考えて、思いつくものをどんどん描き出していく。大きさを変えるって、どういうことかな?と自問しながら、「大きさ」という変数を自分の中にインプットして、いろんなものを試しに入れていきます。
「おふろに似ているものを、おふろにしてみたらどうだろう」という変数を入れて、いろいろ考えていくとか。
やたらわーっと描いて並べたり、漠然とイメージするのではなく、考え方をきちっと設定したほうが、アイディアはたくさん出てきますね。
すべりだいでも、「言葉遊びから絵にする」方法もあれば、「こんな形のすべりだい、すべったら気持ちいいだろうな」という観点から考える方法もある。光の当て方をいろいろ変えて、なるべく多様なアイディアが出てくるようにしています。

ぼくのおふろ
ぼくのおふろの試し読みができます!
作・絵:鈴木 のりたけ
出版社:PHP研究所

おふろがわいた、ゆがわいた。パンツをぬいで、さあはいろう。でも、まいにちまいにちおんなじおふろ。たまにはちがうおふろにはいりたい。たとえば、ながいおふろはどうだろう? はしまでいってもどってくれば、すっかりからだもあったまる。めいろのおふろはたのしそう。でも、まよっちゃったらのぼせるよ。シーソーぶろ、プリンぶろに、にんじゃぶろ……こんなおふろもあったらいいな。ひこうきずきのにいちゃんは、そらとぶおふろのパイロット。そらとぶおふろで、よぞらへむかってテイクオフ。あれあれ、おふろのせんが、ぬけてるぞ! このままじゃ、おふろがついらくしちゃう。おふろのせんをぬすんだ「アフロ」をさがして! 主人公の男の子がユニークなおふろを考えだして、空の旅へとでかけます。

───な、なるほど。

本を作るって、具体的な作業の連続ですからね。線を描く。色をぬる。言葉を考える。
戦略がないと、やっぱり物事はすすんでいかない。絵本の話だけじゃないですよね。世の中の仕事は、ぜんぶそう。
いま、僕は6歳、3歳、1歳の子どもがいるので、子どもとのやりとりのなかで、絵本が生まれていくことがあります。でも、「子どものために」本を描くというより、「自分が楽しい」から描いている。かといって、子どもの反応を気にしないなんてこと、ありえない。
子どもたちはどんなことが楽しいだろう、好きだろう。どこをおもしろがってくれるだろうか。考えて狙って、「きっと、このへんじゃないかな」というところを絵本で描いています。

───だんだん“仕事術”みたいな話になってきました!
しかしのりたけさん、1作、1作ていねいに作っていらっしゃいますよね。

たしかに僕は、作品数があまり多くないですね。時間かけてやらなきゃって思っているわけじゃないけど、余白を生かしたおしゃれな絵じゃなく、みっちり、がっちり作りこまれた駄菓子みたいな味わいの絵が、僕自身が好きだから。
そういう絵を作るためには、結果として手をかけ、時間がかかるものになってしまう……という感じですね。

───絵本を作るとき、悩むことはありますか。

ありますよ。『す〜べりだい』と『ぶららんこ』でいえば、音遊びからはじまっているから、それをどうやって最終的に一つのストーリーにするかは悩みました。すべりだいは「もっともっとすべりた〜い」のエンドレスでOKだなと思いましたが、ぶらんこは悩んだあげくダジャレの力技で終わらせちゃいました(笑)。

───今回、見返しの絵にも感動してしまいました。
『す〜べりだい』は、すべった順番に、すべりだいがぜんぶ描かれているし、『ぶららんこ』は風景がひとつにつながっている。見返しの絵は、舞台設定としてはじめからイメージされていたのですか?


鉛筆一本勝負!


いいえ、絵本の中身を描き終わったあとに、こういう絵があるとおもしろいかなと思って。
いつもは見返しに絵探しのキャラクターやヒントを描くんですが、今回はそれがなかったから……。
そうそう、今回の注目ポイントですが、『す〜べりだい』にはどの見開きにもひとつ、必ず、何か飛んでます。
『ぶららんこ』には、見開きごとに生きものの絵が隠れています。探してみてください(笑)。


今回の絵探しはかなり難易度が高い!? 実際に手にとってみてくださいね。

───今回はないのかと思ったら……ノーアナウンスでこっそりお楽しみが仕込まれていました。やっぱり(笑)。
絵と言葉が一体化した『す〜べりだい』と『ぶららんこ』。鈴木のりたけさんの作品のなかでもあたらしいタイプの2冊になりそうですね。
みなさんにどんなふうに楽しんでほしいですか? 最後にメッセージをおねがいします。

ぜひ声にだして読んでみてください。わが家では、重低音で「ズン!べりだい」と読むと子どもたちが大喜びで、しょっちゅう「ずんべりだい!」といっています。「するするべぇりべぇりだい〜〜〜ん!」も気合いを入れて演じてほしいです(笑)。効果音勝負ですから、こういう本はパパにも読みやすいのではないでしょうか。
声色を変えたり、抑揚をつけたり、読み方次第で、楽しみ方が何倍にも広がります。読み聞かせでやってみてくださいね。


2冊そろって、記念にぱちり。

───鈴木のりたけさんの「だい〜〜〜ん!」(ちょっとアゴがあがって白目をむいてる感じ!?)が夢に出てきそうです(笑)。
息子と、挑戦してみなくちゃ(笑)。きょうはありがとうございました。







アイディア出しの戦略についてはじめて詳しくお聞きして、そのプロフェッショナルな感じに圧倒されたスタッフ一同。
いや、本当になんでもないことのようにおっしゃいますけれど、実際にそこから制作に展開し、絵に描きつづけるパワーたるや、並大抵ではありません。
「やりたいことがいっぱいあるんですよ」とおっしゃる鈴木のりたけさん。いま描いているのは、食べものが次々問題をだしていく言葉遊びの絵本だそう。処女作『ケチャップマン』のような重厚な絵で、これまでとはまたちがった雰囲気の絵本になる予定なのだとか。
絵本制作を通じてつねにおもしろいことを探している鈴木のりたけさん。そんなのりたけさんの、自他共に認める新境地、『す〜べりだい』と『ぶららんこ』を見逃してはいけません。
シンプルでつきぬけたおもしろさを、手にとってたしかめてくださいね。

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インタビュー:磯崎園子(絵本ナビ編集長)
文・構成:大和田佳世(絵本ナビライター)
撮影:所靖子

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鈴木 のりたけ(すずきのりたけ)

  • 1975年、静岡県浜松市生まれ。会社員、グラフィックデザイナーを経て、絵本作家に。『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で第17回日本絵本賞読者賞、『しごとば 東京スカイツリー』(ブロンズ新社)で第62回小学館児童出版文化賞を受賞。
    主な作品に、「しごとば」シリーズ(ブロンズ新社)、『かわ』(幻冬舎)、『おしりをしりたい』(小学館)、『そだてば』(朝日新聞出版)などがある。

作品紹介

す〜べりだい
す〜べりだいの試し読みができます!
作:鈴木 のりたけ
出版社:PHP研究所
ぶららんこ
ぶららんこの試し読みができます!
作:鈴木 のりたけ
出版社:PHP研究所
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