●戦略的にアイディアを練ります 〜鈴木のりたけの仕事術!?
───「ぼくの」シリーズでは、いろいろな形のおふろやトイレ。今回は、変な形のすべりだいや、ぶらんこ。読者レビューでどなたかが書いていたのですが、「のりたけさんのアイディアは尽きることはないのでしょうか」と。

考えればみなさんもでてくると思うんですけどねえ。どうなんでしょう。
───簡単におっしゃいますが、そんなことないと思います(笑)。
具体的に、アイディアを出すときはどんなふうに考えるんですか?
たとえば最初は、ぶらんこにトラがのって「とらんこ」とか、犬がのって「ぶわんこ」とか、音からキャラクターも考えました。でもあんまりたくさん動物を出してもなあ、と、ぶらんこはぶただけになりました。
ボツになったのは、すべりだいでは、「大すべりだい」と「すべちっちゃい」(小さいすべりだい)とか。
ぶらんこでは、川の両岸に支柱があって、そこへ桃が流れてきてぶらんこにくっついて「どんぶらんこっこ」とか(笑)。
まずは「桃がどんぶらこと流れてくる」という予備知識がないと笑えない。そんなくだらないことをいーっぱい考えたんですよ。なんかわかりにくいなあ、イマイチだよなあというのは、ボツになるべくしてボツになります。
僕はアイディアを出すときは戦略的に考えます。たとえば『ぼくのおふろ』だったら、「おふろの大きさを変えてみよう」と考えて、思いつくものをどんどん描き出していく。大きさを変えるって、どういうことかな?と自問しながら、「大きさ」という変数を自分の中にインプットして、いろんなものを試しに入れていきます。
「おふろに似ているものを、おふろにしてみたらどうだろう」という変数を入れて、いろいろ考えていくとか。
やたらわーっと描いて並べたり、漠然とイメージするのではなく、考え方をきちっと設定したほうが、アイディアはたくさん出てきますね。
すべりだいでも、「言葉遊びから絵にする」方法もあれば、「こんな形のすべりだい、すべったら気持ちいいだろうな」という観点から考える方法もある。光の当て方をいろいろ変えて、なるべく多様なアイディアが出てくるようにしています。
おふろがわいた、ゆがわいた。パンツをぬいで、さあはいろう。でも、まいにちまいにちおんなじおふろ。たまにはちがうおふろにはいりたい。たとえば、ながいおふろはどうだろう? はしまでいってもどってくれば、すっかりからだもあったまる。めいろのおふろはたのしそう。でも、まよっちゃったらのぼせるよ。シーソーぶろ、プリンぶろに、にんじゃぶろ……こんなおふろもあったらいいな。ひこうきずきのにいちゃんは、そらとぶおふろのパイロット。そらとぶおふろで、よぞらへむかってテイクオフ。あれあれ、おふろのせんが、ぬけてるぞ! このままじゃ、おふろがついらくしちゃう。おふろのせんをぬすんだ「アフロ」をさがして! 主人公の男の子がユニークなおふろを考えだして、空の旅へとでかけます。
───な、なるほど。
いま、僕は6歳、3歳、1歳の子どもがいるので、子どもとのやりとりのなかで、絵本が生まれていくことがあります。でも、「子どものために」本を描くというより、「自分が楽しい」から描いている。かといって、子どもの反応を気にしないなんてこと、ありえない。
子どもたちはどんなことが楽しいだろう、好きだろう。どこをおもしろがってくれるだろうか。考えて狙って、「きっと、このへんじゃないかな」というところを絵本で描いています。
───だんだん“仕事術”みたいな話になってきました!
しかしのりたけさん、1作、1作ていねいに作っていらっしゃいますよね。
───絵本を作るとき、悩むことはありますか。
ありますよ。『す〜べりだい』と『ぶららんこ』でいえば、音遊びからはじまっているから、それをどうやって最終的に一つのストーリーにするかは悩みました。すべりだいは「もっともっとすべりた〜い」のエンドレスでOKだなと思いましたが、ぶらんこは悩んだあげくダジャレの力技で終わらせちゃいました(笑)。
───今回、見返しの絵にも感動してしまいました。
『す〜べりだい』は、すべった順番に、すべりだいがぜんぶ描かれているし、『ぶららんこ』は風景がひとつにつながっている。見返しの絵は、舞台設定としてはじめからイメージされていたのですか?

鉛筆一本勝負!
今回の絵探しはかなり難易度が高い!? 実際に手にとってみてくださいね。
───今回はないのかと思ったら……ノーアナウンスでこっそりお楽しみが仕込まれていました。やっぱり(笑)。
絵と言葉が一体化した『す〜べりだい』と『ぶららんこ』。鈴木のりたけさんの作品のなかでもあたらしいタイプの2冊になりそうですね。
みなさんにどんなふうに楽しんでほしいですか? 最後にメッセージをおねがいします。

2冊そろって、記念にぱちり。
───鈴木のりたけさんの「だい〜〜〜ん!」(ちょっとアゴがあがって白目をむいてる感じ!?)が夢に出てきそうです(笑)。
息子と、挑戦してみなくちゃ(笑)。きょうはありがとうございました。
