「ぼくらの なまえは ぐりとぐら……」おなじみのフレーズが印象的な、ベストセラー「ぐりとぐら」シリーズ(絵:大村百合子 出版社:福音館書店)を生み出した中川李枝子さんは、東京世田谷区のみどり保育園で17年間、保母をされていた子どものプロフェッショナルです。中川さんの新作『子どもはみんな問題児。』(新潮社)は、育児中のお母さんに贈るメッセージ集がたっぷり。本書を書こうと思った経緯から、『ぐりとぐら』誕生のきっかけとなった“ある”絵本の存在まで……。中川さんの仕事場にお邪魔して、おはなしを伺いました。
- 子どもはみんな問題児。
- 著:中川 李枝子
- 出版社:新潮社
焦らないで、悩まないで、大丈夫。子どもは子どもらしいのがいちばんよ。 名作絵本「ぐりとぐら」の生みの親は母であり、数多くの子どもを預かり育てた保母でもあった。毎日がんばるお母さんへいま伝えたい、子どもの本質、育児の基本。「いざという時、子どもは強い」「ナンバーワンは、お母さん」「がみがみ言いたい気持ちを本で解消」……45のメッセージを収めた、心がほぐれる子育てバイブルついに刊行!
●どんな育児書よりも読んでほしいのは……。
───『子どもはみんな問題児。』というタイトルからすでに、「問題児でも、大丈夫よ」と優しく言われているようで……。読んでみると本に書かれている一言一言がお母さんたちへのエールのように感じました。今まで、中川さんが絵本以外の作品を発表することは少なかったと思うのですが、どういう経緯でお母さんのための本を書くことになったのですか?
───それで、中川さんに依頼をされたんですね。
この本は、私が長年、全国各地で保育士のお仲間にはなししてきた講演録を元にしています。とても丁寧に、お母さんたちの知りたいテーマごとにまとめてくださって。この本を見せると、どの人も「いい本ですね」って言ってくれるんだけど、私は、「それは門さんの力なのよ」って答えています(笑)。

───「子どもはたいがい臭いものです」「お母さんのお弁当をどんなに喜ぶか見せてあげたい」「子どもはお母さんの弱みを突いてきます」「ナンバーワンはお母さんなど、どの章にも気になるフレーズが入っていて、ハッと胸を突かれました。
───「いい作品にはいいお母さんがいます」の中で、『小さい牛追い』の四人の子持ちのお母さんや、『あらしの前』『あらしのあと』のお母さん、『大草原の小さな家』のお母さんなどを例に挙げていますよね。

本にも書いたけれど、10代で「岩波少年文庫」と出会って、たくさんの作品を通して登場する子どもたちに感情移入をして楽しみました。でも、自分が母親になって息子と一緒に読んだとき、子ども同士のケンカやいたずら、危険な遊びなど、子どもの頃には気づかなかったさまざまな発見があってビックリしたの。同時に、子どもたちを支え、力を貸していく親や周りの大人の存在にも気づくことができました。子どもを知るために、今のお母さんたちにも是非、児童文学を読んでほしいと思うのよね。
─── 本には子どもの本来の姿について、育児の基本について、お母さんの心得について、それぞれまとめられていますが、ここからは「4章 本は子どもと一緒に読むもの」の内容について聞かせてください。中川さんはお子さんにもたくさん絵本を読んでいたそうですね。
───そのときは、やはり、膝の上に乗せて一緒に読んでいたんですか?

そうよ。お母さんの膝の上は「自分は愛されているんだ」という安心できる場所。そこから子どもの読書ははじまるの。『くまのプーさん』も『たのしい川べ』も『ドリトル先生』も子どもと一緒に読みました。読んでもらう分には長いおはなしでも子どもはちゃんとわかるんですよ。
───『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』を、ものすごい速さで読んだこともあったんですよね。
そう、時速250キロよ。でも、速く読んでも、大喜び(笑)。『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』は大好きな絵本のひとつね。山手線に息子と一緒に乗ったら、車掌さんを指さして「オーリー」って。『3びきのくま』も大好きで、動物園のクマはみんな「ミハエル・イワノビッチ」か「ナターシャ・ペトローブナ」。子どもって本当に絵本の世界に入り込んでいるのだと感心、息子に負けたと思いました。