●「ばけたくんは探し絵に向いている」そう言われたとき、パン屋さんの場面が浮かびました。
───今回で5冊目となる「ばけたくん」シリーズ。今回は「さがし絵」になっていて、さらに楽しめる作品だと思いました。
ありがとうございます。さがし絵のアイデアは、編集者さんからいただいたんです。
───そうなんですか?
「ばけたくん」の次のおはなしは何にしよう……と編集者さんと打ち合わせをしたとき、この、片方のページがびろーんと横に開く絵本のダミーを見せてくれて、「ばけたくんは、さがし絵に向いていると思うんですが、どうですか?」と提案してくれたんです。それを聞いたときに、私の頭の中でパン屋さんの場面がパッと浮かんで、「あ、描いてみたい」って思いました。
───お店の品物の中にばけたくんが隠れているのは、探すのにとてもワクワクしました。テーマが決まってから、おはなしの構成を考えるのは大変でしたか?
今回はお店屋さんを巡っていくストーリーだったので、登場するお店の順番をどうするかが一番悩みました。それと、後半にばけたくんが、あっとおどろく変身を遂げるので、それをどこで登場させるかも考えました。
───そうなんです! まさか、ばけたくんがあんな姿になるなんて……ビックリしました。
その設定自体は、『ばけばけばけばけ ばけたくん おまつりの巻』のときにアイデアを出していて、ボツになったものなのですが、今回のさがし絵にはピッタリ! と思って、再登場することになりました。
『ばけばけばけばけ ばけたくん おまつりの巻』のときの習作。まさか、ばけたくんが……!
───おかげで、さがし絵がさらに高度に、さらに面白くなって、小さい子から大人の人まで楽しめると思いました。おみせやさんも、「ケーキ屋」「八百屋」「惣菜屋」と一見、普通のお店に感じますが、「おばけまち しょうてんがい」なので、品物もやっぱりちょっとブキミで……(笑)。

やっぱり、おばけの商店街だから、食べ物も人間界にあるものではつまらないと思ったんです。「ばけたくんの世界では、こんな食べ物を食べているんだ〜」と、ばけたくんを探しながら、いろいろなものに気づいてもらえたら嬉しいです。
───品物のいたるところに目がついているのも、「あれ? ばけたくん?」と思ったりして、ばけたくんを見つける楽しさがよりアップしますね。
品物にはあえて顔を描いて、みなさんを混乱させようという作戦です(笑)。
───なるほど〜(笑)。八百屋さんに並んでいる「キュウリンゴ」「あべこべスイカ」やケーキ屋さんの「モングラン」など、ネーミングもユニークなものが多いですよね。どんな味なんだろう……ってワクワクします。
品物の名前を考えるのは、けっこう難しかったです。頭の中で常に考えていて、思いついたらメモを取って……。本当は全部、「おばけまち しょうてんがい」ならではの品物の名前にしたかったのですが、すべてを考えるのは無理でした。でも、編集者さんから「ところどころ、実際に売っている品物の名前が入っているほうが、子どもたちは、“この大根はもしかしたらばけたくんの所から来たのかも……”と思えるから、良いんですよ」と言っていただいて、そうかもと気持ちが楽になりました。
───たしかに、普通の名前の中におばけの品物が入っていると、より目を引きます。描いていて楽しかったお店はありますか?
大変だったけど面白かったのは、スーパーマーケットですね。ラフ(下絵)を描いている時点で、「細かくて大変そうだな」と思っていたんですが、楽しかったですね。
───スーパーマーケットって、お肉もお魚も野菜もなんでも売っていますが、子どもが大好きなお菓子コーナーになっているのも、嬉しいですよね。
スーパーマーケットは最初、ポップコーン屋さんにする予定だったんです。実際に表参道の行列ができるポップコーン屋さんに行って、リサーチもしてきました。でも、ラフに起こしてみたら、形が単調で、探しやすいと感じてしまって……。スーパーマーケットの店内で実演販売をしている場面に変更しました。
───やはり、絵を描く前にお店屋さんに取材に行ったのですね。
パン屋さん、ケーキ屋さん、八百屋さん、いろいろお店に行って、並んでいる品物や陳列のされ方などチェックしました。それと、さがし絵絵本を作るのがはじめてだったので、どのくらい難しくすれば良いのかも手探りで……。『ウォーリーを探せ!』や『ミッケ』などのさがし絵絵本を見て参考にしました。そうそう、「おまけのもんだい」もいろいろさがし絵絵本を見ている中に出てきて、「ばけたくんにもおまけのもんだいを作ろう」と思ったんです。
おまけのもんだい
───『ばけばけばけばけ ばけたくん たんじょうびの巻』に出てきた、ばけたくんのともだちを探す問題は、シリーズを知っている読者はさらに楽しめますね。「もっと おまけの もんだい」に出てくる、「おばけ すうじ かいどくひょう」は、すご〜いって思いました。
うちの子が小さいとき、『かいけつゾロリ』に出てくる「ゾロリ語」が好きで、親子で解読をして遊んだことがあったんです。そういうことが、ばけたくんでもできたら良いなと思っていて、古代文字を見るたびに切り抜いて、保管していました。今回の「かくれんぼの巻」で使えて、嬉しかったですね。

おばけすうじかいどくひょう
───あえて、答えを出していないのも「おまけの もんだい」の楽しみだと思います。読んだ後は、自分で問題を考えて、おうちの人や友達とみんなで探しあいっこもできますね。
さがし絵絵本は、そうやって、みんなで探しながらコミュニケーションを取れるのが良いですよね。