絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  読んだらきっと、食べたくなる!『あれたべたい』枡野浩一さん 目黒雅也さんインタビュー

実在するお店をモデルにしています。

───『あれたべたい』の見どころは、なんといっても食べ物の美味しそうな描写と、懐かしさを感じるお店の雰囲気。「あれ」を探して、男の子とお父さんが訪れるお店にはモデルがあるそうですが……。

目黒:『挿絵道』の中に、喫茶店を描いたと先ほどお伝えしましたが、ぼく自身、喫茶店でぼーっと過ごすのが好きなんです。それは枡野さんも同じでした。

枡野:ぼくはメニューに「あれ」のある喫茶店をいくつも知っていて、それ目当てで喫茶店に足を運んでいます。「あれ」が売り切れだとコーヒーも飲まずに帰るくらいです。例えば、絵本の中に登場する、青い屋根のコーヒーハウス。これは目黒さんとぼくが生まれた街である、西荻窪にある「それいゆ」というお店をモデルにしています。「それいゆ」には「あれ」は常にあるわけじゃないんですが、雰囲気が好きで目黒さんと一緒によく行くんです。

目黒:見た目で分かるモデルとしては「それいゆ」の外観ですが、お店の内観などは、二人でよく「あれ」を食べている新高円寺にある「七つ森」という喫茶店や、「名曲喫茶ライオン」、西荻窪のコーヒー専門店「物豆奇(ものずき)」の要素をところどころ散りばめて描いています。


お店の外観は、西荻窪にある喫茶店「それいゆ」がモデルなのだそうです。

───お店に行ったことがある人が見ると、嬉しい発見がありそうです。お店にいるお客さんも良く見るととても個性的ですが、モデルがいるのでしょうか?

目黒:お店に来ている常連さんをモデルにしているところもありますね。ぼくの師匠で、絵本の話をいただく直前に亡くなってしまったイラストレーターの安西水丸さんには、絵本の中に登場していただいています。

───このプリンを食べている男性が、安西さんなのですか?

目黒:そうです。美しい女性と一緒にいるイメージで描かせてもらいました。


手前右側にいる、メガネの男性は安西水丸さん?!

───安西さんの食べているプリンがとても美味しそうです。よーく見ると、お客さんみんながプリンを食べているんですね。

枡野:お店全体を俯瞰したとき、みんなが同じものを食べていると面白いんじゃないかとぼくが提案して、目黒さんがそのとおりに描いてくれました。でも、いろいろな食べ物を食べている場面が描けなかったのは物足りなかったみたいで、苦肉の策で描いたのが、アイスを食べているお店のメニューなのだそうです。

目黒:カレーやナポリタン、オムライスなどの写真付きメニューにしたんです。あとショーケースに並んでいるケーキも、描かせてもらいました。ようやく、ちょっとストレス発散になりました(笑)。


店内のあちこちに、美味しそうな料理のメニューが!

枡野:目黒さんは本当に食いしん坊なんです。食べるのも好きだし、作るのも好き。食いしん坊の人って、美味しそうな絵を描けるじゃないですか。まったく食いしん坊ではないぼくにも美味しさが伝わるように描いているから、さらにすごいと思うんです。

───たしかに、空腹時に見るのはとても危険な絵本ですよね(笑)。美味しい絵といえば、男の子とパパが問答のように、食べたいものを考えている場面。いろいろなスイーツが登場して、とても豪華ですよね。

枡野:ここの絵にも工夫があって、男の子が「あま〜いの」「ひんや〜り」「ふわっふわ!」と食べたい物を言っていくと、絵の食べ物が絞られていくんです。その中には喫茶店の場面に登場する「アイス」「プリン」「ゼリー」も出てきますし、「あれ」も、もちろん描かれています。これは編集者さんから「あれが抜けてます」と指摘があって、いちど仕上げた絵を描き直したりしてるんですよね。一部、切り貼りしたりして。

目黒:子どもは絵を見て、そういうところにも気づきますから、妥協はしたくなかったんです。

───目黒さんの細かいところへのこだわりがページをめくるたびに感じることができます。後半は喫茶店の中のリアルな描写から一転、イメージの世界に導かれるような感じがしました。

枡野:ここは、濁音と半濁音を生かそうと思って書いた文章なんです。言葉の意味というより、言葉の響きを意識した言葉遊びです。

───「ボ〜ボ〜? ブ〜ブ〜? バビブベボ!」って声に出すと気持ちいいですよね。さらに絵も「ブドウ」「バナナ」「ブリ」「バッタ」「ブタ」などが登場して、「ここにこんなバビブベボが隠れている!」と見つける楽しみがあります。

枡野:まさか「モモモモモ」のところで、桃の絵を描いてくれるなんて、思ってませんでした(笑)。

目黒:絵を描くときは、あまり考えすぎずに、文章を読んで最初に浮かんだアイディアを描いています。ただ、絵本に関しては、構図や画面の寄りと引きなどを編集者さんに見てもらって、何度も描き直しました。前半がリアルな構図なので、後半はもう少し遊んで、イメージの中のような雰囲気が出るようにしました。

今、あなたにオススメ

出版社おすすめ



編集長・磯崎が新作絵本を推薦!【NEXTプラチナブック】
【絵本ナビ厳選】特別な絵本・児童書セット

枡野 浩一(ますのこういち)

  • 1968年生まれ、東京・西荻窪出身。歌人。短歌の代表作≪毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである≫が高校国語教科書に掲載されている。短歌小説『ショートソング』ほか著書多数。

目黒雅也(めぐろまさや)

  • 1977年生まれ、東京・西荻窪出身。イラストレーター。日大芸術学部在学中、安西水丸に師事。出版物の表紙イラストレーションはもちろん、手書きのタイトル文字も手がける。枡野浩一と「枡目組」というコンビを組み、短歌とイラストレーションTシャツなども制作。剣道六段で、こどもたちの剣道指導もしている。

作品紹介

あれたべたい
あれたべたいの試し読みができます!
文:枡野 浩一
絵:目黒 雅也
出版社:あかね書房
全ページためしよみ
年齢別絵本セット