●印象的だった取材場所は……?
───「探Q! 日本のひみつ」シリーズを通して、いろいろなところへ取材に行かれたと思いますが、特に印象的だった場所はありますか?
「探Q!日本のひみつ」シリーズの後継版「イラストと地図からみつける!日本の産業・自然」という本でも土地の様子を描いたのですが、そちらのほうがタイトルの通り「産業」の取材だったので普段は入れない場所も取材させてもらい、印象に残っています。 何といっても、精肉工場、あれが一番強烈でしたね。朝5時から取材に行って、体中消毒して、豚舎を見せてもらうんです。それから、豚が豚肉になるまでの一連の流れを見学させてもらいました。最後はとんかつ屋でとんかつを食べてね。食べないと失礼にあたるぞと思って頼んだけれど、正直、あの様子を見た直後に食べるのはきつかったですね。
『イラストと地図からみつける!日本の産業・自然 第2巻 畜産業・水産業』「畜産」より
───そのほか、印象に残っている取材先はありますか?
『探Q! 日本のひみつ いろいろなしごと』で描いた「大船渡港のひみつ」でしょうか。取材では市役所の人が大勢協力してくれて、カキの養殖場や2011年4月のオープンする予定の最新式の魚市場などを見せてくれました。しかし、その魚市場はオープン直前に壊滅してしまったんです。
───2011年というと、東日本大震災ですね。
はい。本の中では震災に見舞われる前の活気あふれる様子をありのままに描いています。いつの日かまた、絵本の中のような活気あふれる魚市場に戻った姿を見てみたいと思います。
『探Q! 日本のひみつ いろいろなしごと』「大船渡港のひみつ」
●前職は建築家 絵本作家へのデビューとは?
───青山さんは絵本作家になる前、建築のお仕事をされていたと伺いました。
はい。ぼくは早稲田大学建築学部を卒業して、その後、建築事務所に入社しました。ぼくの描いた『こびとのまち』(パロル舎)はこの事務所をモデルにしています。
───なぜ、建築家から絵本作家になろうと思ったのですか?
実は、絵本作家になろうと明確に決めていたわけではないんです。ただ、子どもの頃からマンガが好きで、一時は漫画家を目指していた時期もありました。ただ、社会人になってしばらくたって、九州のリゾートホテル建設の現場監理をする機会があったんですね。その時、工事現場の様子を絵に描いてみたんです。
───え、毎日ですか?
はい。5時半にみんなが仕事を終えて帰った後に、一人で残って描いていたんです。ホテルが完成した後、描き続けた絵をまとめて一冊の本の形にしてみました。そうしたら、自分の中ですごくすっきりしたというか、「こういうことをやりたいんだ」と腑に落ちた感じがしたんですね。
───それが記念すべき初の作品集だったんですね。
同じころ、ある建築コンペに参加しました。そのときの課題が「チャールズ・ダーウィンの家」だったので、ぼくは絵本のようなテイストの作品を作って提出したんです。そこで入賞して表彰式に行ったんですが、ほかの入賞者の作品を見てビックリ。ぼくのようなテイストで描いている人なんて一人もいなかったんです。そこではっきりと、「自分の表現したい世界は建築の分野じゃないんだ」と気づき、思いきって会社を辞め絵本作家を目指すことにしました。
───建築家から絵本作家への転身ですね。先ほど漫画の話が出ましたが、子どもの頃に絵本もよく読んでいたのでしょうか?
それが、全然……。ぼくの中の絵本の定義は安野光雅さんの『旅の絵本』(福音館書店)なんです。
───なるほど。青山さんの描く、細かい街並みの描写や構図のルーツがだんだんと見えてきたように思います。建物を割って、中の様子を見せる描き方も、建築ならではの表現方法なのでしょうか?
そうですね。建築業界では「パース」といって、建築図面を元に放射線状に線を伸ばして立体を描いていく手法です。ぼくが大学時代に「パース」と出会ってから、この方法論にハマってしまって(笑)。今でも建築物の図面を見て、そこから立体に起こすことは得意ですよ。
───それで、これほど分かりやすく建物の内部の様子が描けるんですね。今まで日本の建物から世界遺産に登録されているような世界の建築物までいろいろ描いてこられたと思いますが、今描いてみたい建築物はありますか?
そうですね。取材できるなら、奥州平泉にある「中尊寺 金色堂」。あと、何度も描いているんですが、行ったことは一度もない「軍艦島」。世界まで目を向けるなら、ヨーロッパの大聖堂とか、ローマのコロッセオに行って描いてみたいですね。いずれ「探Q!」シリーズで「世界編」を企画してもらって、行ってみたいと思います。
───「探Q!」シリーズ「世界編」! 素敵ですね。
その前に「探Q! 日本のひみつ」シリーズで描いてきた、都道府県があと10くらいで全部コンプリートするので、それを描き切りたいと思いますね。
───コンプリートしたら、すべての都道府県を並べて見てみたいです。きっとすごく壮観ですね。「探Q! 日本のひみつ」シリーズについていろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございます。最後に絵本ナビユーザーにメッセージをお願いします。
この「探Q! 日本のひみつ」シリーズは、お子さんが大好きなさがし絵と、日本各地の歴史や文化、産業などの学習的な要素が上手に両立している作品だと思います。小さいお子さんには、まずさがし絵を楽しんでもらいたいです。もう少し大きくなったら、自分の住んでいる町のある都道府県について興味をもって読んでみるのもいいと思いますし、旅行などで出かけたときに、絵本の中に出てきた場所を見つけてもらうのも楽しいと思います。大人の方でも知らないことや行ったことのない場所なども登場しますので、お子さんだけでなく、家族みんなで何度でも楽しんでもらえたら嬉しいです。
●青山邦彦さんのイラストがアプリでも楽しめます。
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