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世界の国からいただきます!

世界の国からいただきます!(徳間書店)

世界26か国の食べものを紹介した、楽しい大判絵本!

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やなせたかし おとうとものがたり

やなせたかし おとうとものがたり(フレーベル館)

アンパンマンの作者やなせたかしが弟・千尋との思い出を綴った幼物語。

  • 泣ける
絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  『しろくまちゃんのほっとけーき』40周年記念こぐま社相談役 佐藤英和さんインタビュー

「4人全員が合格点を出さないと出版されませんでした」

───4人でおはなしを作るということがとっても気になっているんですが、具体的にはどういった形で進んでいくのでしょうか?

当時、こぐま社は小さなマンションの1室にあったんですが、ちゃぶ台を囲んで4人で何十回と議論を重ねました。おはなしの作り方としては、森さんが「原案提出者」。こんなテーマはどうだろう…と案を出して、わかやまさんがどんどん絵を描いていくんです。それを見ながらみんなで次はどういう展開にしていったらいいだろうと考えていきます。ときには取材のため、4人で出かけることもありました。『こぐまちゃんとどうぶつえん』では1日上野動物園で動物達の観察をしたんですよ。

───動物園では、どのようなことを観察したんですか?

動物園で動物達をじっくり見ていくと、動物の1日の行動が分かってきました。基本は「食べる」「眠る」そして「排泄」。これは絵本の中にしっかりと描かなければと感じました。わかやまさんも「子どもは絵本の絵を読んでいるのだから、文字が読めなくても、絵を見て動物の行動が分からなければならない」と仰っていましたね。「かばが うんち ぴっぴっぴっ しっぽを ふりまわしている」という文章もじっくり観察したから生まれた言葉ですね。でも、『こぐまちゃん おはよう』でトイレシーンを描いて絵本のタブーをやぶった後に、カバのウンチでしょう。当時は、「こぐま社はウンチが好きな出版社なのか」って思われてたんじゃないかな(笑)。

───原案がそのまま出版された作品などはありますか?

「こぐまちゃんえほん」シリーズは必ず4人全員が合格点を出さないと出版されませんでした。4人で打ち合わせをした後、わかやまさんが絵コンテを描いて、下絵を完成させます。その絵を見ながら、森さんが言葉を読み上げるんです。そうするとまた全員で「この場面の言葉はもっと短くした方がいいのでは」とか「ここは短すぎる」と、ダメだしが出ます。それを再び森さんが持って帰って、第2稿を考えてくる…。文章だけでも3、4回修正をしていました。だれか1人が勝手に考えて出した本は一冊もありません。

───昨年出版40周年を迎えられた『しろくまちゃんのほっとけーき』は「こぐまちゃんえほん」シリーズの中でも食べ物をメインに扱っていますよね。このホットケーキの案も4人で考えて生まれたんですか?

そうですね。食べ物が出てくるものは『しろくまちゃんのほっとけーき』以外にも、『こぐまちゃんおはよう』と『しろくまちゃんぱんかいに』があるのですが、『しろくまちゃんのほっとけーき』のときは、4人での打ち合わせで「食べ物を取り上げたいね」という話が上がったんです。じゃあ何を食べようか…、2〜3歳の子が喜んで食べるものは何だろう…と考えたとき、やっぱりホットケーキだよねと決まったんです。
「こぐまちゃんえほん」シリーズの中でもこの絵本は特に人気が高くて、読者の方から毎日沢山の感想をいただきました。その中には「我が家でもホットケーキを作りました」と感想をいただくこともかなりありました。

───分かります。ホットケーキが食べたくなりますもの。

でもその後に「市販のホットケーキミックスで作ったら子どもから「違うよ!」といわれてしまいました…」って続くんですよ(笑)。「こむぎこ たまご ふくらしこ」を使っていないと『しろくまちゃんのほっとけーき』の作り方じゃないと、子ども達は分かっているんです。そんな感想をいただくと、改めて「こぐまちゃんえほん」シリーズが愛されているんだなぁと感じます。

───「こぐまちゃんえほん」シリーズは第1集から第4集と別冊の全15冊で完結されていますよね。ファンとしては新しい作品が出ないのかとても気になるところなのですが…。

生みの親としてはっきり言えるのは、15冊で完結、ということです。最初にお話したように、このシリーズは「日本の子どもがはじめて出会う絵本」をコンセプトに生まれたシリーズなんです。物語が生まれるきっかけは子ども達の生活が土台になっています。一日の生活、食べ物、お出かけ、泥遊び、ケンカ、おかいもの…、私たちはシリーズを通して、子ども達がはじめて出会う本にぴったりのテーマを探して絵本を作り続けました。そして、『こぐまちゃん おやすみ』を出した時、「描きたいテーマは描き切った」って思ったんです。「おはよう」で始まり「おやすみ」で終わる。シリーズとしてもとても良い形だと思いました。でもそのあと、「遊び歌がまだ入っていなかったよ」「お誕生日も入れないと」…と案がでて、別冊が3作できました。これで本当にラスト。本当に描き切りました。

───15冊というのは、生みの親のみなさんが、子ども達がはじめて出会う絵本について真剣に考えて、厳選したテーマの数なんですね。
最後になりますが、「こぐまちゃんえほん」シリーズがこんなにも長く、何世代にもわたって愛される作品になった理由は何だと思いますか?

分かりませんね(笑)。子どもが絵本を楽しむ理由は私たち大人にとっては永遠に謎です。ただ、私たち4人の中では、「こぐまちゃんえほん」シリーズが長く愛される絵本になるように、普遍的なテーマ、言葉を使うことをテーマにしていました。





───普遍的なテーマ、言葉を使うとは?

『しろくまちゃんのほっとけーき』を例にあげると、「ベーキングパウダー」や「フラワー」という言葉を、私たちももちろん知っていました。でもそこはあえて「ふくらしこ」「こむぎこ」としたんです。こぐまちゃん達のフォルムや洋服もこの普遍性に通じています。こぐまちゃんの丸い形は新しい時代になっても子ども達が変わらず好きな形ですし、シンプルなポンチョ型の洋服も時代遅れになることはありません。10年後、20年後の子ども達が見ても古いと感じない絵本にすることが最大のテーマでした。

───確かに、その思いは、発売から40年たった今の子ども達にも伝わっていますね。

それと、子ども達がこぐまちゃん、しろくまちゃんになりきって絵本を楽しんでいることも長く愛されるひとつの答えだと思います。子どもはごっこ遊びが大好きですから。ただ、多くの子が登場人物になりきれる絵本の仕組みというか、セオリーを見つけるのは非常に難しいです。難しいけど楽しい。絵本ってまだまだ奥が深くて、楽しい世界だなぁって思います(笑)。

<編集後記>


「こぐまちゃんえほん」シリーズ誕生について、まるでつい昨日の事のように熱を込めて詳しく話してくださる佐藤さん。本当に強い思いで絵本を創作されてきた事が伝わってきます。最後にはこぐまちゃんと2ショット!!ありがとうございました。

実はとても長い時間に渡って貴重なお話をしてくださっていて、「11ぴきのねこ」シリーズや「わたしのワンピース」など、誰もが知っているロングセラー絵本についても驚きのエピソードが次から次へと…!
その中からおまけとして最後に一つ、ご紹介しちゃいますね。

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<スペシャルエピソード>
馬場のぼるさんと「11ぴきのねこ」シリーズ、
『ぶどう畑のアオさん』に込められたメッセージ

こぐま社を作るとき、私は日本の作家による創作絵本を作ると決めていました。でも、当時、絵本業界では翻訳絵本が主流で、おはなしも絵も描ける絵本作家がほとんどいませんでした。そこで私は、おはなしも絵も作れるマンガ家さんに絵本を作ってほしいと声をかけました。その中の一人が馬場のぼるさんでした。私は馬場さんと「11ぴきのねこ」シリーズを6冊作りましたが、6冊作るのに29年かかりました。29年の間に、アイディアが出ずに、続編をあきらめなければならないかと思うときもありました、馬場さんの絵本の発想に脱帽することも何度もありました。1996年に6作目となる『11ぴきのねこ どろんこ』を出したとき、馬場さんと2人で「次はいよいよ7冊目ですね」「そうです。やりましょう」と言葉を交わしました。でも、2人ともこれが「11ぴきのねこ」シリーズのラストだと分かっていました。分かるんです。おはなしの終わりが「みんな みんな うれしい うれしい」で終わるんですから。
遺作となった『ぶどう畑のアオさん』は馬場さんの亡くなった後に発売した絵本です。出版された後に、馬場さんが亡くなる3日前に完成させたという奥付のイラストを、当時の編集担当者から見せてもらったとき、私は涙があふれました。アオさんが見ている空は『11ぴきのねこ』の空だったんです。これは私だけに分かる馬場さんからのメッセージだと思いました。きっと馬場さんは万感の思いでこれを描いたと思います。その時、馬場さんと出会って絵本を作っていくことができた自分は、何て幸せな編集者なんだろうと思いました。

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(編集協力:木村 春子)

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佐藤 英和(さとうひでかず)

  • 1928年生まれ。長崎県の島原で幼少時代を送る。1953年、大学卒業と同時に、児童書編集者を志して河出書房に入社、編集者となる。
    1966年、日本の画家と作家による日本の子どものための創作絵本を作るため、株式会社こぐま社を設立。「11ぴきのねこ」シリーズ、『しろくまちゃんのほっとけーき』をはじめとする「こぐまちゃんえほん」シリーズ、『わたしのワンピース』など、数々のロングセラー絵本を作家と共に生みだした。
    また、肉声で読み、語ることを大切に考えた「子どもに語る」シリーズは、図書館、学校、ストーリーテリングの語り手から定評を得ている。
    現在、株式会社こぐま社相談役、公益財団法人東京子ども図書館監事。

作品紹介

しろくまちゃんのほっとけーき
しろくまちゃんのほっとけーきの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
こぐまちゃんおはよう
こぐまちゃんおはようの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
こぐまちゃんとぼーる
こぐまちゃんとぼーるの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
こぐまちゃんとどうぶつえん
こぐまちゃんとどうぶつえんの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
こぐまちゃんのうんてんしゅ
こぐまちゃんのうんてんしゅの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
こぐまちゃんのみずあそび
こぐまちゃんのみずあそびの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
こぐまちゃん いたいいたい
こぐまちゃん いたいいたいの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
こぐまちゃん ありがとう
こぐまちゃん ありがとうの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
こぐまちゃんとふうせん
こぐまちゃんとふうせんの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
こぐまちゃんのどろあそび
こぐまちゃんのどろあそびの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
しろくまちゃんぱんかいに
しろくまちゃんぱんかいにの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
こぐまちゃんおやすみ
こぐまちゃんおやすみの試し読みができます!
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
さよなら さんかく
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
ひらいた ひらいた
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
たんじょうび おめでとう
作:わかやま けん
出版社:こぐま社
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