●お話の作り方
───おばけのシェイク、ちびドラキュラのブルード、トントゥ(サンタのおてつだいをする小さな妖精)のベル、きつね村のキコちゃんにたぬき村のポコくん。かわいい登場人物がいっぱい出てきますが、キャラクターやお話はどんなふうに考えるのですか?
ますだ:そうですねえ…。いろいろですが、行事については資料を読んだり、ふと思いついて疑問に思ったことを調べたりして、ストーリーを練り上げていきます。
たちもと:ますださんのお話は、毎回、読むたびに「なんだこれは〜」「そうくるか!?」と意表を突かれる展開があっておもしろいんですよ。夫に言われるんですが、絵を描きながら顔が笑っているらしいです(笑)。
───どんなところに「そうくるか!」と思われるのですか?
たちもとさん、思い出し笑いが止まりません・笑
たちもと:たとえば『ひなまつりルンルンおんなのこの日!』では、たいくつしたおひなさまがネコの背中に乗って家を飛び出してしまうのですが…ネコに乗っているおひなさまを描いていると、なんだか、ふつふつと笑いがこみあげてくるんです。
ますだ:雛壇に飾られたおひなさまが動いたらおもしろいな〜と思ったんです。おひなさまが自由に動き出すとしたら、たぶん、うちにいる家族が留守のとき。玄関は閉まっているし、どこから外に出たらいいかなー…、「あっ、ネコぐちだ!」と(笑)。
───ネコぐちからネコにのって…なんておてんばなおひなさま(笑)。おだいりさまがびっくりして追いかけるんですよね。かごにとびのり、仕長(じちょう)たちがかごをかついで。そして追いついたおだいりさまが、カラスに扇をとられそうになっていたおひなさまを、間一髪で助けて…。
たちもと:無事、おだいりさまとおひなさまはネコに二人乗りして家に帰ります(笑)。
───女の子が活発なことが多いですか?(笑)
ますだ:そうかもしれませんね〜(笑)。女サンタだし、おひなさまは飛び出しちゃうし、『たなばたウキウキねがいごとの日!』のキコちゃんだって積極的に会いにいっちゃうし。私の性格が出てるのかな(笑)。
ひなまつりの日、ゆずちゃんの家のおひなさまたちは、ゆずちゃんがお出かけしている間に大冒険をはじめたから、さあ大変! ますだ&たちもとのコンビで贈るシリーズ、ひなまつりのお話です。
●絵の制作
───絵はどんなふうに、どのくらいの時間をかけて描くのですか?
たちもと:お話を読んでラフを作り、ラフを編集者さんとますださんにお見せします。構図を決めるまではけっこう考えるほうなので、ラフまでがいちばん時間がかかるかもしれません。
通常、企画立ち上がりから完成まで絵本によっては1〜2年かかることもあります。ラフが出来上がってしまえば、あとは無心に絵を描いていくだけです。実際に描く作業期間は3ヶ月くらいでしょうか。
───たちもとさんの絵はファンタジックな季節感がありますよね。かわいいだけではない・・・。
ますだ:ほんとうにそうですよね。『クリスマスわくわくサンタの日!』のキラキラした夜や、『たなばたウキウキねがいごとの日!』の山の風景の大きな絵が大好き。文章ではあらわせないものを、たちもとさんが大きく絵のなかに広げて表現してくださっている。ふーっとその夢の世界に連れていってもらえるように感じて、惚れ惚れします!
たちもと:家のまわりに田んぼが広がる石川県ののどかなところで育ちました。ですから、雪のなかの暗ーい感じや、春の草のにおい…子どもの頃に自然から感じたものを絵にしたい、という思いがありますね。
いただいたお話を読んで、どんな絵にしようかと頭のなかで考えこむことはあまりないです。むしろ自分をニュートラルな状態にして、ぱーっと手を動かして描いてみると、あ、こんなものが描けた…という感じです。
『クリスマスわくわくサンタの日!』の夜のページ
『たなばたウキウキねがいごとの日!』のきつね村とたぬき村のページ
───行事の絵本だと、ファンタジックな絵とは違うものを描く苦労もあるのでは?
たちもと:そうですね。『ひなまつりルンルンおんなのこの日!』は雛壇の模様や家具など細かい決まりごとがあるので、完成までが想像以上に大変でした。時間がかかりましたし、何度も資料と絵を見比べたりしました。
───具体的には、どうやって何で描かれているんですか?
たちもと:マウスで描いています。
ますだ:マウスで!? マウスで絵を描けるという意味がサッパリわからない(笑)。私の(理解の)範疇を越えてしまいます〜(笑)。いろんな技術があるんでしょうねえ。
たちもと:ラフは手で描くんですが、ラフで構図が決まったあとは、パソコン上でマウスで描いていくんです。
───ぱっと見ただけでは、どれだけの数の色、質感のバリエーションが使われているかわからないくらいに、多種類の素材が一枚の絵に凝縮していますよね。
たちもと:紙に絵の具やクレヨン、パステルなど様々な画材を使って描きスキャンしたり、毛糸やレースを写真に撮ったり、気分転換もかねて気が向いたときに制作します。これが「絵のもと」になります。
実際にマウスで絵を描くときは、そういうものの色やテクスチャーをコンピューター上で変えたり、偶然の効果を利用したり、この世にないような質感を、素材と素材をかけあわせて作ったり…試行錯誤しながらデジタルとアナログを融合させ絵を作っていきます。
もともと私はアニメーション映像を作っていたので、仕事で目や手のパーツを別々に作って動かしたりしていました。その延長線上でこんな手法になりました。