絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  笑ってびっくり、思わずホロリ!? しりとり絵本の傑作誕生! 『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』シゲタサヤカさんインタビュー

長いしりとり作りに奮闘

───最初のラフは縦書きだったのですね。

はい。縦書きであること以外は、展開からオチまでほぼ完成形に近いです。最初にお寿司屋さんからスタートするのも同じです。


最初のラフ。


「おすしやさんチーム」のラフページ。30種類以上描かれています。

───本を手に取ったとき、こんなにたくさん食べ物が出てくるなんて豪華!と思ったのですが、ラフではもっと多かったのですね。

とにかく食べ物をいっぱい描きたいなと思っていたので、最初のラフではかなり多かったです。でも絵本にしていく過程で、ひとつひとつのキャラクターが生きるように、だいぶ数を減らしました。


「パンやさんチーム」「ケーキやさんチーム」のラフページ。

───食べ物のしりとりだけで、ひとつのおはなしが最後のオチまで展開していく……。なんてよく出来ているんだろうとびっくりしました。長いしりとりを考えるのは、大変だったのでは?

そこが一番大変でしたね。ストーリーはあっという間に完成したものの、途中の長いしりとりを考える行程は時間がかかりました。食べ物を書き出したリストを作って、パソコン上でしりとりを何通りもつなげては、「あぁ、また行き詰まっちゃった〜!」と組み直して……。そのくりかえしでした。

ストーリーに合うようにしりとりを作らないと、せっかくひらめいたオチも使えないから、タルトをフルーツタルトにしたり、ピラフもシーフードピラフに変えたり、必死でひねり出してつなげたところもあります(笑)。
お寿司は、たくさん種類があったので助かりました。


最後に「ん」がつくものは×をつけて……。あいうえお順に並べた、食べ物名リスト。

表情豊かなキャラクターたち

───しりとりが出来上がって、いざ実際の本作りに入ってからのことを聞かせてください。

最初のラフではお店ごとに、食べ物をただ並べて描いていたのですが、チーム対抗らしくなるよう、「パン屋さんチーム」「ケーキ屋さんチーム」「八百屋さんチーム」……とチームごとに、色の違うベンチに並んで座ってもらいました。

お寿司屋さんが参加するので、ぜひ『いくらなんでもいくらくん』(イースト・プレス)のいくらくんを出したいと思っていました。最初は「あ」がつく食べ物から始まって「アップルパイ」。次にいい具合に「いくら」を出せたので、決め台詞はいくらくんらしく「あいよ」で(笑)。


「さあ、いよいよ たべものやさん しりとりたいかいの はじまりです。さいしょは あがつく たべものから はじめます! どなたか いませんか?」(『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』より)

───『いくらなんでもいくらくん』ファンには嬉しい登場です!

いくらくんは『いくらなんでもいくらくん』の中で、ずっと無表情だったので、ここでも無表情に描きました。そして「いくら」の「ら」の次に「ラーメン」が出てきたら……、「ピピピピー!」とホイッスルが鳴って「ダメです! ダメです! しりとりなんですから、『ん』がついたらダメですよ!」と、ここでしりとりがストップしちゃうんですよね。


「ラーメンやさんチームから さっそうと ラーメンがでてきましたが……」(『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』より)

気を取り直して、またしりとりが始まるのですが、やっぱりまた「ん」がついている食べ物が出てきて「ピピピピピー!」。このままじゃ競技が続かないので、「ん」がついている食べ物は全員まとめて帰らされちゃうんです。


「しょんぼり ぞろぞろ……」(『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』より)

───「おかえりください」と言われるなんて、たしかにかわいそう……。がっかりしたキャラクターたちに、わが家の子どもたちも心をつかまれていました。

チームの席から「ん」の食べ物たちがいなくなってしまって……。ぽつんと取り残された雰囲気が伝わるように、残った食べ物が座る位置は動かさず、空いたスペースが目立つように描いています。


仲間がへってしまったパン屋さんチーム。


こんなに仲間がいたのに!

───ドーナツもサンドイッチも、「ん」がつくパンがみんないなくなっちゃって、しょんぼり膝を抱えています。デビュー作の『まないたにりょうりをあげないこと』でも、まな板の表情が印象的でした。
にやっとしたり、しょんぼりしたり、拗ねたり……。キャラクターのそういう表情を描くのが好きなのでしょうか。

好きです! 悲しい顔も、はたから見るとちょっと笑える感じが出せたら……と思っています。
私自身も「かわいそうだなあ……」と思いながらやっぱりどこかフフッと面白がって描いていますね。私の絵本は、たいていそんな落ち込んだ場面から、おはなしの終盤に向かうにしたがって、もうひとひねりの山があります。すんなり終わるのではなく、「えっ、そうなるんだ!?」と驚いてもらいたいなと思いながら、絵本を作っています。


アスパラガス→スイカ→カンパチ……。どこまで続く? 気を取り直してしりとり大会が本格的にはじまったシーンのラフ。

───うーん、しりとりが最後にどうなっていくのか、楽しみで仕方ありません(笑)。帯に「こんなにネタバレしてほしくない絵本ははじめてです」というパパの声が書かれていましたが、ぜひ大人も子どもも一緒に、しりとり大会の結末を楽しんでほしいですね!

今、あなたにオススメ

出版社おすすめ

  • ひつじシステム
    ひつじシステム
    出版社:小学館 小学館の特集ページがあります!
    めくるめく羊の世界!羊を数えると眠れるらしい。羊が1匹、、2匹、…108匹、ちくわ!、そうめん!?…


編集長・磯崎が新作絵本を推薦!【NEXTプラチナブック】
可愛い限定商品、ゾクゾク♪

シゲタサヤカ(しげたさやか)

  • 1979年生まれ。 短大卒業後、印刷会社勤務を経て、パレットクラブスクールで絵本製作を学ぶ。 第28〜30回講談社絵本新人賞で佳作を3年連続授賞する。 2009年、第30回佳作受賞作『まないたにりょうりをあげないこと』(講談社)で絵本作家デビュー。 絵本作品に『りょうりをしてはいけないなべ』『コックのぼうしはしっている』『カッパもやっぱりキュウリでしょ?』(共に講談社)、『キャベツがたべたいのです』(教育画劇)、『オニじゃないよ おにぎりだよ』(えほんの杜)、『いくらなんでもいくらくん』(イースト・プレス)、『わりばしワーリーもういいよ』(鈴木出版)他多数。 オフィシャルHP「アカモチ工場」:http://akamochi.net/
全ページためしよみ
年齢別絵本セット