●言葉遊びとダジャレ
ねじめ:林さんのダジャレは正統派のダジャレだよね。きちんと「ダジャレをやります」といって披露している。ダジャレって、遊んでいるんだけど、やっていてこれ以上本当に出なくなる時ってある。どんどん出てくる時もあるけど、出なくなると全く頭が働かなくなることもあるから。そういうところを何度も乗り越えてできたものだと思います。労力からいったら、『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』は、相当大変な絵本だったんじゃない?
林:はい。大変でした。もう少し良くなるんじゃないかと思う言葉は、何度も何度も考えて、ずっと面倒を見続けました。より面白いものを思いついたら、やっぱりこれ、やっぱりこれ、といくつも書き換えていって。
どの絵本の言葉でも、最後まであきらめずに考え続けるのは同じですが、文章量が他の絵本に比べて莫大だったので、時間はかかりました。さらに地理が絡んだ制約もあったので。
ねじめ:みんなにわかるように書かなきゃいけないし、といって、わかりすぎてもやる意味がない気がしてくるし。その辺りのせめぎあいが、考えすぎると気持ちが悪くなってくるよね。吐き気がするくらい。
林:それ、わかります。
ねじめ:言葉遊びって、「遊び」と言ってもなかなかつらいところがあるね(笑)。
林さんは俳句はやっていないの?
林:やっていたことがあります。昔、文芸雑誌に俳句も短歌も投稿していました。企業の俳句のコンテストに応募して受賞したこともあります。
ねじめ:やっぱり。制限の中で表現するという点で、ダジャレは俳句に近いね。俳句って季語があるわけだけど、季語にピタッと合わせるんじゃなくて、一番遠いところで何とかつながるようなのが面白い。でも離れちゃダメなんだよ。そういうところが、すごくダジャレと似ているかなって。
その場で発してウケるダジャレはまた違うけど、絵本のダジャレって、そういう感じだよね。
一方で、谷川俊太郎さんみたいに隙がない言葉遊びの達人が、ふつうのダジャレを言うと何かホッとしたりしてね(笑)。
───おふたりは、仕事以外で日頃からダジャレや言葉遊びを考えることはありますか?
林:ダジャレは、思いついても、言うと変な空気になりそうだなと思った時は我慢しています。
ねじめ:逆にダジャレを言うことで、固い雰囲気が良くなることもあるけどね。緊張がとけたり。
───ダジャレは、辞書をひくと「下手なシャレ」と書いてあることもありますが、子どもたちにとっては、ゲーム性があって盛り上がる言葉遊びですよね。
林:言葉遊びの中では1番メジャーかもしれないですね。
ねじめ:子どもの頃は、ダジャレばっかり言っていたね。シャレ帳ってノートを作ってダジャレを書きこんだり。当時、「ゴジラさん、ゴジラへどうぞ」って言ったら、クラス全員からどっと笑いがきた。それがダジャレの魅力にひこきこまれた最初のダジャレです。今でもダジャレとしては最高レベルだと思ってるんだよね。「ゴジラさん、ゴジラへどうぞ」って、ゴジラがすごくかわいい感じがしてさ。これを越えるのは今でも大変だと思っています。
ダジャレは人気者になる武器だったんです。そういえば「換気扇こわして感知せん(かんちせん)」とか、いろいろ作ったよね。
林:私も小さいときから言葉遊びが好きでした。覚えた童謡をずっと歌っていて、そのうちそれを替え歌にして大人を笑わせたりしていました。言葉遊びの体験は、そういうところから始まっていると思います。