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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  ぼくたちのこと、好きになってほしいんだ!『おかしになりたいピーマン』『おもちゃになりたいにんじん』岩神愛さんインタビュー

食べ物を描くのが大好き。食いしん坊です

───絵本を開いたとき、ポップな色使いと、描き込まれた盛りだくさんの内容にびっくりしました。制作のご苦労はありませんでしたか?


(『おかしになりたいピーマン』より)


(『おかしになりたいピーマン』より)

2作目を描いているときに腱鞘炎になりました(笑)。
でも絵を描くのはとても楽しいので、苦労だとかつらいと思ったことはあまりなくて、ひたすら描くことが楽しかったです。


(『おかしになりたいピーマン』より)

───ショートケーキにピーマンが隠れているのも、お坊さんみたいにピーマンがチョコレートの間に座っているのも、変だけど美味しそうです! 食べ物を描くのが好きなんですか?

大好きです。食べるのも、見るのも好きですね。資料のためにデパ地下を歩き回ったり、「絵を描くため」とケーキを買ったりしました(笑)。食いしん坊なんですね。

───ピーマンの肉詰めが入ったパトカーのお弁当、リアルですよね。息子が食い入るように見つめていたので、いつか「つくって」と言われそう(笑)。 サイレンはミニトマトですよね。黒いところは海苔、タイヤはソーセージ? Pは……?

Pは、人参の型抜きのつもり。どんなお弁当にしようかと、すごく凝って考えたので、気に入ってもらえて嬉しいです(笑)。


ついに、ゆずるくんのお弁当の肉詰めにしてもらったピーマン!パトカーにも注目です。(『おかしになりたいピーマン』より)

制作を通じ、新しい画風へ

───画材は何をつかっていますか?

下描きはシャープペンシル、本描きは、ホルベインの不透明水彩のガッシュです。ポップな感じを出そうとしたとき、どんな画材がいいかと色々試しました。蛍光ピンクや蛍光イエローに近い色の発色のよさが、ホルベインと相性がよく、ずっとこの画材をつかっています。


シャープペンシルで描かれた絵。実際の絵本は、お団子の表情や位置など、細かいところが変わっています。見比べてみてくださいね。

編集者(秋山):『よなおしてんぐ5にんぐみ てんぐるりん』のときはトーンの落ち着いた色が多かったのですが、今回の2冊では、かわいさ、ポップさ、カラフルさ、そしてレトロ感が合わさったテイストが、岩神さんのあたらしい画風となっていったのを感じています。

───ふだんはいつ制作されているのですか。

幼児教室がお休みの日や、仕事の後、夜中も描いています。休みの日は集中して描きますね。朝夜関係なく、描きはじめると8時間くらいずーっと描いちゃいますね……。朝のうちにご飯を用意しておいて、「お腹がすいたらこれを食べよう」と決めて、わりと長い時間、描いていると思います。
音楽をかけることで「さあ、描くぞ!」と腕まくりするような気持ちで、制作のスイッチを入れています。

絵本をつくることが楽しくてたまらない

───もともと絵本に興味をもったきっかけは?

実は、大学ではロシア語を専攻していたので、美大出身だとか、絵の勉強をしていたとかいうことはないのですが……。一度就職をして、外国の方と接する仕事をした時期もありました。でもそういう方向に行けば行くほど、子どもの頃から絵を描いたり、絵本をつくるのが好きだったことを思い出すようになりました。「私、本当は絵を描きたかったのよね」という気持ちが出てきました。

幼稚園の頃、大好きな先生がいて、絵本を描いてはプレゼントをしていました。ひたすら、落書き帳に描いたり、ホッチキスで止めたりしたものをつくっては、先生にあげていたんです。おはなしも書きたい、絵も描きたい、絵本って素敵だなと、そういう気持ちが幼稚園の頃からありました。

だから社会人としてしばらく働いて、自分の気持ちに気づいたときに、「絵本を描こう」と決心して、思いきって描きました。出版社に電話をしたら会ってくださるという方がいて、描いたものを持ち込んだのが、最初の絵本が出るきっかけです。
幼稚園の頃から今も、絵本をつくるのが楽しくて、絵を描きたくてたまらなくて……やっていることは変わらないんだと思います(笑)。

───好きな作家さんはいますか?

鈴木のりたけさん、よしながこうたくさんの絵本が好きです。お二人とも絵にユーモアがあって、自分の好みに通じるものがあるのでしょうね。他に、長谷川義史さん、minchiさん、エリサ・クレヴェンピーター・コリントン……。視覚デザイン研究所の食べ物絵本も好きですし、児童文学の「くまのパディントン」シリーズ「ぼくは王さま」シリーズの挿絵も好きです。

『おかしになりたいピーマン』『おもちゃになりたいにんじん』の制作を通じて、この2冊の絵本に育ててもらったなという思いがあります。描きながら自分のスタイルを見つけていくというか、絵本をつくりこんでいる実感がありました。
みなさんに本当の意味で楽しんでもらうためには、細部まで誠実に描かないと伝わらないし、印刷されるところは仮に余白であっても気が抜けないです。

───絵本をつくるのが本当に好きなんですね。

はい。絵本って楽しいなあと思います。子どもも親も楽しめて、一緒にめくっても楽しめるし、大声でみんなの前で読み聞かせしたり、ひとりで部屋の隅っこで読んだり、いろんな楽しみ方ができる。貴重で、独特のメディアだなと思います。

───これからどんな絵本をつくりたいですか?

にんじんに続く他の食べ物も描きたいですし、カラフルでポップでユーモアのある作品を、さらに追求していきたいです。何度読み返しても発見があり、手にとってくださった方の大切な1冊になる絵本を、心を込めて描いていくのが目標です。
『よなおしてんぐ5にんぐみ てんぐるりん!』で描いたような時代物の世界も描きたい。頭の中は、絵本のことでパンパンです(笑)。

───最後に、読者にメッセージをお願いします!

絵本を手にした子が、もしピーマンやにんじんが苦手でも、ピーマンやにんじんにちょっとでも親しみを感じて、いつか食べる勇気が出てきたら、とても嬉しいです。でも、食べられなくても、絵本を読んでいる時間が楽しかったり、お母さんやお父さんとおしゃべりする時間につながったり……、お母さんにとってはお弁当をつくる気持ちがちょっとだけラクになったり……。絵本の先に、世界が広がっていってくれたらいいなと思います。

どんな食べ物も、生産者の方や料理してくれる人がいて、食卓にあがっているんですよね。『おかしになりたいピーマン』では、そんなことも考えて、畑の場面を描きました。 ピーマンって、こんなふうに畑になってるんだね、ぼくたちに食べられるのを楽しみにしてるんだね、と子どもたちが少し想像できたら、食べ物をちょっと大事にする気持ちが生まれるかな、そうなったらいいなと思っています。

───ありがとうございました!

文・構成: 大和田佳世(絵本ナビ ライター)
撮影: 所 靖子



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岩神愛(いわかみ・あい)

  • 1981年東京生まれ。都内の幼児教室で、絵画工作の講師をしている。日々子どもたちと触れあいながら制作を続けている。絵本に『青おにとふしぎな赤い糸』(PHP研究所)、『よなおしてんぐ 5にんぐみ てんぐるりん!』『おかしになりたいピーマン』『おもちゃになりたいにんじん』(以上3作、岩崎書店)がある。

作品紹介

おかしになりたいピーマン
作・絵:岩神 愛
出版社:岩崎書店
おもちゃになりたいにんじん
作:岩神 愛
出版社:岩崎書店
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