絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  『オオムラサキのムーくん』タダサトシさんインタビュー

《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2013.06.06

『オオムラサキのムーくん』
タダサトシさんインタビュー

一覧を見る

昆虫は好きだけど、昆虫を育てることに向いていない子どもでした

───ご存知の方もいるかと思いますが、タダさんのお父様は『おんなじ おんなじ』や『りんごがドスーン』などで人気の絵本作家、多田ヒロシさんですよね。小さい頃から絵本が身近にある環境だったかと思うんですが…。

そうですね。我が家にはおそらく他の家より沢山絵本があったと思います。でも、僕はもっぱら昆虫図鑑に夢中になっていて、絵本を読んだ記憶はほとんどないんです。
唯一、寝る前に親父が読み聞かせをしてくれるんですが、ちょうど寝る時間になると、太田大八さんや近くに住んでいる絵本作家の人から電話が来て、父を呑みに誘うんですよね。だから途中までしか読んでもらえなかったことも、ありましたね。

───子どもの頃はどんなお子さんでしたか?

興味を持つと他のことが一切目に入らないような子どもでしたね。アリの巣観察キットでアリが巣作りをする様子をずっと見ていても飽きないくらい、好きなことに対する集中力はすごかったです。普通、自分の子どもがずっとアリの巣の前から動かなかったら、不安に思う親もいると思うんですけど、うちの親は子どもの好きなようにさせてくれていて、それが今につながっていると思うと、とてもありがたいですね。

───「見守る」ということの大切さ、分かっていてもなかなか実行できないことですよね…。先ほどからのタダさんの昆虫に対する思いを伺っていると、本当にたくさんの昆虫を飼育していたんだなと感動しました。

そうでもないんですよ。実際に育てるのは下手な方だったと思います。飼い方なんてロクに調べもせずに育てようとするので、うまく育てられず、悲しい別れを何度も経験しました。僕は昆虫を育てるのも好きだったんですが、昆虫の絵を描いたり、工作をすることも大好きな子どもでした。今日、小学校のときの工作を持ってきたんですよ。

───すごい細かいところまで忠実に再現されていて、紙で作ったとは思えないくらいのリアリティですね!お腹や足の節なんて本物みたいです!

僕、昆虫のお腹が特に好きなんです。だから工作で作るときもお腹をいかに立体的に作ることができるか、小学生ながらに苦心して作りました。
昆虫の絵を父が一緒になって描いてくれることもあったんですが、父が描く昆虫の足の生え方が適当だったので「こんな生え方してないよ!」と怒ったこともあります(笑)。今の編集者さんは父の担当者でもあって、父の事務所で、小学生の頃の僕の作品を見て、「いつか絵本を描いてもらいたい」と思ってくれたそうです。

───昆虫以外に飼ったことのある生き物はいるのですか?

実は、小学校5年くらいで虫ブームは一度去っていて、その後、熱帯魚に移行しました。きっかけは当時、ビンの中で飼えると話題になったベタ(闘魚)。それからエンゼルフィッシュを飼うようになって、次第に肉食の熱帯魚に興味が移っていきました。最終的に30匹くらい熱帯魚を飼っていた時期もあるんですよ。でも、あるとき、親父がサーモスタットの電気をつけたままにしてしまって、お湯になって熱帯魚は全滅。それで熱帯魚熱も覚めました。大学生の頃は「時計仕掛けのオレンジ」という映画を見て、ヘビに一目惚れ。子ヘビのときから飼って、かなりな大きさまで成長したんですが、家族旅行の間、火事になったら大変だからとヒーターを消していったら、寒さで死んでしまいました…。

───昆虫、熱帯魚、そしてヘビ…。どのときもお母様は見守っていたのですか?

さすがにヘビのときは母も嫌がっていました(笑)。僕自身は生き物に対する不思議、好奇心が尽きなくて、一度興味がわくとどんどんのめり込んでいくタイプでしたね。それは幼少期のハエにはじまり、今に至るまで、変わっていないところだと思います。

───今後描いていきたい作品、ムーくんの続編の予定などはありますか?

出版社からは続編のお話もいただいているのですが、こればかりは描きたい昆虫が出てこないと描けないんです…。でも、まだまだ昆虫のエピソードはたくさんストックがあるので、その中から必死に絵本を作っていくと思います。

───子ども達に『オオムラサキのムーくん』をどのように楽しんでもらいたいですか?

僕は絵本に教訓や勉強になるようなことを入れるのがあまり好きではないので、自由に楽しく読んでもらえたら嬉しいです。お母さんたちには昆虫だからと怖がらないで、ムーくんを可愛いと思ってもらえると嬉しいですね。

───ありがとうございました。新たな昆虫の魅力をタダさんの作品から知ることができるのを楽しみにしています。

【編集後記】

タダサトシさんはどんなに沢山昆虫を飼ってきたのだろう、昆虫の飼い方の話を沢山聞こうと思ってお会いしたのですが、小さい頃は昆虫を育てることが苦手だったと聞き、グッと親近感を覚えました。今回、ご紹介できなかったのですが、小学校のときの工作以外にも、日記や新聞の切り抜き、授業で使ったノートなど沢山持ってきていただき、スタッフから感嘆の声があがりっぱなしでした。幼い頃から昆虫を見つめていたタダさんの鋭い観察力と、それを見守り、全て手元に残していたご両親の愛情の深さを感じました。私も息子の作品をちゃんと残しておかなきゃなぁ…。

 class=

インタビュー: 磯崎園子 (絵本ナビ編集長)
文・構成: 木村春子(絵本ナビライター)

今、あなたにオススメ

出版社おすすめ

  • 朗読詩 ひろしまの子
    朗読詩 ひろしまの子
    出版社:BL出版 BL出版の特集ページがあります!
    反戦平和の詩画人・四國五郎が書いた朗読詩「ひろしまの子」。戦後80年の年に、長谷川義史の絵で絵本化。


夏休みの読書を応援! おすすめ絵本・児童書13選 レビューコンテスト2025
可愛い限定商品、ゾクゾク♪

タダ サトシ

  • 1968年、東京に生まれる。多摩美術大学絵画科卒業。
    子どもの頃からの昆虫が大好きで、物心ついたときから虫と友だちになれると信じ、絵や工作でも表現して楽しんでいた。
    カブトムシの背中に乗って、空を飛ぶという夢を絵本にした『カブトくん』が、子どもたちの大きな共感を得ている。

作品紹介

オオムラサキのムーくん
オオムラサキのムーくんの試し読みができます!
作:タダ サトシ
出版社:こぐま社
カブトくん
カブトくんの試し読みができます!
作:タダ サトシ
出版社:こぐま社
カマキリくん
作:タダ サトシ
出版社:こぐま社
ありんこ リンコちゃん
作:タダ サトシ
出版社:こぐま社
全ページためしよみ
年齢別絵本セット