●「アニメーションの動きには、かなりこだわりました」
───「ふねくんのたび展」、すみからすみまで楽しませていただきました!
会場に来て、まず最初に海と空をイメージした真っ青な世界に圧倒されました!
中津井:今回、『ふねくんのたび』の世界に一瞬で入り込んでほしいと思い、このような空と海の空間を作りました。
───船や島など、まるで絵本から飛び出してきたような、完成度ですね。
三戸:最初、島は船と同じような四角い立体だったんですよ。でも、いしかわ先生からご提案があって、本物の島のような丸い形にしました。青いマットの上は靴を脱いで遊んでもらうようにしたので、本物の海を航海するように船や島に乗って遊んでいる子も多いんですよ。
───今回もいろんな場所に見所がありますが、何といっても「ふねくんシアター」の迫力がすごいですよね。
いしかわ:絵本の世界からアニメーションにするという作業を今回、はじめて行ったのですが、DNPさんが優秀な技術者の方をそろえてくださって、すごく満足のいくものを作ることができました。
───いしかわさんもこのアニメーションにはかなり関わられたんですか?
いしかわ:はい。最初はおまかせしようかなとも思ったんですけど、この絵本について一番分かっているのは作者であるぼくだから、試作版を見せてもらったときなどに色々お願いをしたんです。そうするとグッと良くなるのが分かって、だんだん面白くなってきて、演出も僕が担当することになり、最終的にはアフレコ現場にもたちあったんですよ。
───特にどんなところに、こだわりがありますか?

いしかわ:絵本ではページをめくるたびにふねくんが移動して、島やほかの船に出会うのですが、ふねくんシアターでは、全部をつなげて、ふねくんが旅している様子をリアルに体感してもらいたかったんです。最後のシーンも絵本ではページが横に広がっていくしかけになっていますが、アニメでは画面を引いていって、全体が広がって見えるような形に変化させました。
中津井:ふねくんの錨(いかり)が口になっていて、何か起こるごとに表情が変化しているなど、細かい部分はいしかわ先生に伺って気が付いたところなんですよ。

いしかわ:嵐で波に飲み込まれる部分を最初1回転だったのを2回転にしてもらったり、虹の下の部分を透けるようにして、その間をふねくんが通るようにしてもらったり、絵本では頭の中で想像していたことが、アニメでは実際の動きとして感じられるようになっています。
中津井:いしかわ先生のアイディアを取り入れることで、映像によりリアリティが出て、躍動感が感じられるようになりました。小さい子ども達は食い入るように見てくれています。
───そして、もうひとつの見所でもある、「ふねくんをつくろう」ですが、自分でつくった船がふねくんと並んで走ったり、港に到着するのがテンションが上がりますね。
いしかわ:自分の船を川や池に浮かべたいという気持ちは、きっとみんなが持っていると思うんですよ。それを形にしたのがこのアプリだと思います。スクリーンに映っている景色は、『ふねくんのたび』の旅の最後の場面ですが、スクリーンを窓に見立ててそこから港を見ている感じにしたかったんですよ。ぼく自身、旅先のホテルから見下ろす港の景色が大好きで、飽きずに何時間でも魅入っちゃう…(笑)

中津井:このアプリもDNPが開発したのですが、大きなスクリーンで、みんなで遊べるようにしたかったので、船を作れるだけではなく、画面をタッチすると島が現れたり、虹がかかったり、いろんなしかけも組み込まれているんですよ。
いしかわ:今は、画面の中に夜が来て朝になると作った船はリセットされてしまいますが、いつかこれをアプリで販売するようなことになったら、自分の作った船を保存できるようにしたいですね。

子ども達の作った、色とりどり、形もさまざまな船が展示されていました。
三戸:デイリーワークショップで行っている「じぶんのふねくんをつくろう」は、このアプリをアナログで体感できるようにしたものです。こちらはアーカイブできるようになっています。