●取材を通して絵本を作る流れが来ています!(笑)
─── 絵本と出会われたのはいつごろなんですか?
ちょうど僕が大学生くらいのとき、イラストレーターが格好良い職業として若者の中で注目を集めたんですよ。僕も小さいころから絵を描くのが好きだったから、「イラストレーターになろう」って決心して、大学3年生くらいのときは、昼間は学校に行って、夜はセツ・モードセミナーに通ってました。
卒業する年に、知り合いを通じて高校の先輩だった田島征三さんと出会って、田島さんの活動していたベトナム反戦の野外展に誘われたんです。そのときのメンバーには、長新太さんや和田誠さんなど、第一線で活躍されている方がたくさん参加していて、「そんなすごい人が出るの? じゃあ僕もやろう!」って。最初は単純な動機だったんだけど、そこで絵を見てもらったり、いろんなことを教わったりするうちに、自然と絵本にも関わるようになりました。
─── 西村さんにとって、絵本の魅力とはどういうものですか。
田島さん達と関わっていく中で、「イラストレーターは描く職業じゃないんだ。描きたいものがあって、それを表現する方法なんだ」って思うようになったんだよね。そこで、自分が本当に描きたいものってなんだろう…と探しているうちに、絵本につながっていったんです。絵本は世代を超えて残っていくものじゃないですか。そういう部分が自分にはとても魅力的に感じます。
─── 確かに、『はらっぱ』(神戸光男/構成・文、童心社)や『絵で見る広島の原爆』(那須正幹/文、福音館書店)などは、絵本として次の世代に残していく使命を帯びた作品ですね。西村さんが今、手がけている絵本にはどんなものがありますか?
僕は常々、「仕事には流れがあるな〜」と感じているんです。この『ようちえんがばけますよ』の前後は、特に取材を必要としない、イメージを膨らませて描く仕事が多かったんだけど、これからちょっと取材をして描く作品が増えていきます。
去年、瀬戸内海の祝島を舞台にした「祝の島」という映画のポスターを描いたんですよ。そのご縁で、祝島を舞台にしたおじいさんの絵本を作ることになっています。あと、フィリピンのカオハガンという島にいる日本人の方ともご縁があって、島の人々の生活を絵本にすることになっていまして、その絵を描くためにフィリピンへ取材に行く予定です。
※「カオハガンのキルト展」(2012.4.28〜6.10 開催中)>>>
─── これからも西村さんの新しい絵本をたくさん拝見できそうで、とても嬉しいです。今日は本当にありがとうございました。
(おまけ)
西村さんのご自宅兼アトリエ。柔らかな日差しの入る2階で、ちゃぶ台を囲んでまったりインタビューがスタートです。あまりの居心地の良さに、取材だという事を忘れそうになる瞬間も(笑)。
お部屋にはたくさんの素敵な絵や不思議なものが飾られていましたよ。
西村さんがお孫さんのためにお庭に作った池!「雑誌の取材で孫へのプレゼントを聞かれて、苦し紛れに“池をあげます”って書いたんだよ(笑)。書いたからにはって作ったんだけど、いろんな生き物がやってきて面白くなっちゃって。結局、4年がかりで観察を行い、絵本にしたんだよ」。
こちらです!>>>かがくのとも最新号(2012年5月号)「ターくんのちいさないけ」福音館書店刊
西村さんの最寄駅にある、藤野のアーティストの方の作品が展示販売されている「シーゲル堂」さん。楽しくどこか怪しいお店の看板は西村さんがデザインされたそうです。これは気になりますよね。取材の帰りにしっかりとお買い物を楽しませていただきました。
(編集協力:木村春子)