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東京とトロントで。絵本を描くこと。みやこしあきこ×シドニー・スミス インタビュー2020/01/30 【連載】第3回 お互いのこと
『よるのかえりみち』で、2016年度のボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞した、みやこしあきこさんと、『うみべのまちで』で、2018年度のケイト・グリーナウェイ賞を受賞したカナダ在住の絵本作家、シドニー・スミスさん。
東京とトロント、海を隔てて絵本作家として活躍されている同世代のおふたりは、ボローニャ・ブックフェアで出会って以来、親しく交流をつづけています。
インタビュー3回目は、おふたりに「お互いのこと」について、おはなしをうかがいました。特別に描き下ろしていただいた原画や、お互いへの質問&回答も読みごたえ充分の、インタビュー最終回です。 インタビュー・構成=沖本敦子 翻訳=岩城義人
――シドニーさんは、みやこしさん以外にも、国を超えておつきあいのある絵本作家さんはいらっしゃいますか?
シドニー:イギリスとアイルランドに、イラストレーターの友人が何人かいます。数年前ブータンに旅行したとき、とても才能のある若いイラストレーターたちにも出会いました。ブータンは、伝統的に物語を口で伝えてきたので、絵本は新しい文化です。その新しい形とともに、彼らの新たな旅がはじまると思うと、胸が熱くなります。世界には、絵本にたいして深い歴史と理解をもつ国が多く存在します。ブータンもきっとそのひとつになるでしょう。さまざまな国のさまざまな創作者から、学ぶことはたくさんあります。
![]() ボローニャブックフェア会場で。シドニーさんとみやこしさん。
――シドニーさんとみやこしさんの作家同士の交流は、どんな風にはじまったのでしょう?
みやこし:『おはなをあげる』(文:ジョナルノ・ローソン 絵:シドニー・スミス 出版社:ポプラ社)の作者、ジョナルノ・ローソンさんが、英語版『もりのおくのおちゃかいへ』(作:みやこしあきこ 出版社:偕成社)を読んで気に入ってメールをくれました。私もちょうどその頃『おはなをあげる』に、私と似たものを感じて気に入っていたのでとても嬉しかった。そのつながりで今度はシドニーさんからもメールをもらってやりとりをしていたら、偶然ボローニャの会場でお会いできたので驚きました。
![]() シドニーさんの 『おはなをあげる』より。
Sidewalk Flowers c2015 JonArno Lawson (c)2015 Sydney Smith
![]() みやこしさんの『もりのおくのおちゃかいへ』より。
The Tea Party in the Woods (c)2010 Akiko Miyakoshi
――シドニーさんは、みやこしさん最新作『ぼくのたび』をお読みになって、
どんな感想をもたれましたか?
シドニー:口にすると照れますが、ぼくはみやこしさんの大ファンなんです。正直、『ぼくのたび』を受けとるのがこわかった。同じイラストレーターとして、嫉妬するかもしれませんし。なにをどう見せるかという点で、ぼくとみやこしさんには共通するところがあると思います。そして、ときに彼女はぼくよりも上手にそれを表現する。光と遠近法の使い方が、天才的だと思います。彼女の描くキャラクターたちは、表情や動きがゆたかでありながら、なぞめいてもいる。それが読者をひきつけるのでしょう。動物であっても、気まぐれな幼稚さはまったくありません。ぼくは自分の描くキャラクターすべてに愛着をもっていますが、みやこしさんの作品からも同じものを感じます。
![]() 『ぼくのたび』とシドニーさん。
――みやこしさんは、シドニーさんの『うみべのまちで』をお読みになって、どんな感想をもたれましたか?
みやこし:まず、表紙の海の絵が大好きです。言葉にならない、見る人に共感を抱かせる、ストーリーを感じる絵が大好きで、自分でもそういう絵が描けるようにといつも制作しています。そういった、その1冊の鍵となる大事な1枚があるかどうかがわたしにとって大事なポイントなのですが、この海の絵はまさにそうです。見るたびにずっと眺めていられます。シドニーさんの絵は、優しくて品があって、真似して描きたくなってしまいます。
![]() 『うみべのまちで』とみやこしさん。
みやこしさんから、シドニーさんへ質問
今回のインタビューでは、双方にそれぞれへ向けた質問を用意していただきました。
まずは、みやこしさんから、シドニーさんへの質問です。
ひとつめ「いままでは文章に絵をつけられていましたが、次作では文章も絵もシドニーさんが手がけられるそうですね。絵のみを担当するときと、作・絵を手がけるときのちがいはなんでしょう?」
シドニー:次作は『Small in the City』というタイトルで、はじめてテキストもぼくが書いています。いままで手がけた絵本から学んだことの集大成として、なにかつくろうと思いました。テキストだけでもイラストだけでも語れない物語を、両方の観点から表現してみたくて。これまで担当した絵本のテキストは、別の人が書いており、ぼくの元に届いた時点で物語は完全なものです。ぼくがやるべきことは、そこに必要不可欠なイラストを描くこと。しかし、自分がつくる物語では、テキストを不完全なままにしてみようと思いました。
ふたつめの質問です。「絵本以外でやってみたいことはありますか?」
シドニー:映画やアニメーションをつくってみたいです。それに家もつくってみたい。大工技術はありませんが、やりがいがあると思います。
最後の質問です。「誰に最初のラフを見せますか? 家族には見せる?」
シドニー:ラフはだれにも見せず、しばらく手元に置いておきます。最初に見せるのは、担当編集者ですね。ラフは仮のアイディアで、そこから頭の中にあるより大きなアイディアに近づけていきます。自分のラフに可能性を見いだすのは、だれより自分自身ですし、どれだけ最終的なイメージからはなれていても、根気よくやるのが近道かなと。
![]() みやこしさんが、シドニーさんへ向けて描き下ろしてくれたイラスト。
シドニーさんから、みやこしさんへの質問
ひとつめ。
「あらゆる芸術、とりわけみやこしさんの作品にとって、光は重要な要素だと思います。光源や光度の表現にとてもこだわりを感じました。ちなみに、絵以外の芸術から光や構図の着想を得ることはありますか?」
みやこし:写真や映画です。自分で撮った写真もよく参考にして描きます。でもやはり絵画から得ることがいちばん多いですが。ドラマ「TWIN PEAKS」の、なにかほのめかすようなシーンに惹かれて絵を描いたこともあります。
ふたつめの質問。
「イラストレーターを続けていくうえで、テーマや手法をしぼっていくタイプですか。それとも、あえて壁やルールをもうけず、自由に表現していくタイプですか。もしくはその両方?」
みやこし:わたしはむしろ手法から絵の着想を得ることも多いので、描きたいものが浮かぶ手法は試していきたいと思っています。でも実際それぞれの手法を自分のものにするのにはかなりの時間と試作が必要なので、結局絞ることになりますね。
最後の質問です。
「みやこしさんの作品、ひいてはみやこしさん自身にとって、静けさや孤独はどんな意味をもっていますか?」
みやこし:飛行機でシベリア上空からひとつだけぽつんと見えた家の明かり、夜のまちの窓に見えた慎ましい生活。そういうものがやさしく影のように普段の何気ない平和な時間を浮き上がらせている感じがして、愛おしく感じます。 作品にそういう気持ちを込めることも多いです。
![]() シドニーさんがみやこしさんへ向けて、描き下ろしてくれたイラスト。
全3回に渡った「東京・トロント、同世代作家インタビュー」は、これでおしまいです。海を隔てたそれぞれの場所で、誠実にこどもの本に向き合うおふたりの、すてきなおはなしを伺うことができました。
「これからの子どもたちに、いいものを手渡していきたい」というつくり手の気持ちは、世界中どこでもそんなに大きく変わらないはず。これからも、こどもの本のつくり手たちの交流が、国境を超えて豊かにひろがっていきますように。
HP: http://miyakoshiakiko.com twitter: @akikomiyakoshi ![]() 主人公のホテルのオーナーは、世界中からやってくるお客さんから知らない国のはなしをきき、旅への思いを募らせます。そして、あるひ、ぼくは、おおきなかばんをもって・・・。リトグラフによる美しい色彩と幻想的な絵が、読者をここではないべつのどこかへと誘います。 ●絵本の製作過程を記録したメイキング動画はこちら
カナダのノヴァ・スコシア州郊外に生まれる。ノヴァ・スコシア美術デザイン大学卒業。ジョナルノ・ローソン原案の文字のない絵本『おはなをあげる』(ポプラ社)で、カナダ総督文学賞(児童書部門)、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞など、さまざまな賞を受賞する。海辺の炭鉱のまちのいちにちを描いた『うみべのまちで』(BL出版)で、2018年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞。2児の父。家族とともにトロントに在住。 twitter: @Sydneydraws ![]() 文/ジョアン・シュウォーツ 絵/シドニー・スミス 訳/いわじょうよしひと BL出版 定価1600円+税 うみべの炭鉱のまちで暮らす少年のいちにちが、しずかにやさしく描かれます。時間によってさまざまに姿を変える海。夕方になると炭鉱からおとうさんがかえってきて、家族を眺めて潮風に吹かれます。ありふれた日常の愛おしさが、しずかに胸にせまる絵本。ケイト・グリーナウェイ賞受賞作。
提供:ブロンズ新社公式ブログ
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