90歳を超えた絵本作家、かこさとしさんが描きおろした、千葉県房総半島の小湊鐵道を走る「里山トロッコ列車」の絵本です。
かこさとしさんが魅了された里山トロッコ列車は、どんな場所を走っているのでしょうか?
沿線の駅「里見」から出発し「飯給(いたぶ)」「月崎」「上総大久保」、終点の「養老渓谷」まで。
列車とともに進みながらさまざまなものを紹介します。
「川廻し」工事の跡や、77万年前の磁場逆転層、縄文時代の住居跡。沿線案内と平行して、ページ下部では房総里山の植物、鳥、虫、動物たちが描かれます。
読めばトロッコ列車で「養老渓谷」へ、さらに川をさかのぼった場所にある、高い崖の紅葉の名所「懸崖境」までいってみたくなります!
すべてルビがふられ、ひらがなが読める子どもなら読めます。
トロッコ列車の機材設備、用具から、房総里山の自然・社会・歴史と網羅された1冊。
縄文、鎌倉、戦国、江戸と出てくる歴史も幅広く、多くの社寺も紹介されています。
あとがきで「房総は歴史、文化、自然科学に至る総合多元の由緒の地域」と記しているように、まさしくかこさとしさんならではの着眼点で資料が盛り込まれた、多元的な一冊です。
旅のおともに、そして身近なところから広い世界を学ぶ“教育的”意味でもすばらしい一冊です。
里山トロッコ列車は、ガラス窓がない吹き抜けで、光や風をからだいっぱいに受けて走ります。
「トロッコ」とはもともと堤や道路工事のとき材料や人を運ぶ、業務用の小型の車です。
トロッコにのったときのような、「耳や肌や鼻にまで沿線のさわやかな感じ」をお客さんに伝えるため、全国で「トロッコ列車」と呼ばれる列車が走っているのだそうです。
(見返しに全国の「トロッコ列車」の地図があります。)
全国各地にあるはずの、日本の原風景をたずねる旅。
こんなふうに地域に興味をもち、しらべ、歩きまわってたしかめる知識を、人生の糧にしたくなりますね。
お子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、ご家族みんなでお楽しみください。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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千葉県五井駅から養老渓谷まで続く小湊鐵道の一部区間を、トロッコ列車が走ります。ドイツの蒸気機関車の設計図をもとに、クリーンディーゼルエンジンの機関車が、風を感じる、ガラス窓のない吹き抜けのトロッコ列車を引っぱります。沿線には見所がいっぱい。里山の自然を肌で感じることができ、さらに歴史、地理にまつわる話も多く、さまざまな分野で興味深いローカル線の旅を、かこさとしさんが案内する知識絵本。日本各地にある里山にも、大切な話がたくさん眠っているはずです。自然と一体となって、ゆっくりゆっくり旅をすることを思い起こさせてくれる、大人と子どもが一緒に楽しめる絵本です。
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