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作: いわい としお  出版社: 偕成社 偕成社の特集ページがあります!
かるた以外の遊び方もたくさん! 絵本から生まれたあたらしいかるた
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連載

かこさとしさん90歳おめでとう! 記念連載 かこさんを囲む人たちインタビュー

2016/07/14

【連載】第2回 偕成社 千葉美香さんインタビュー

【連載】第2回 偕成社 千葉美香さんインタビュー

今回、おはなしを伺うのは『からすのパンやさん』や『どろぼうがっこう』をはじめとした「かこさとしおはなしのほん」シリーズを刊行している偕成社。編集者の千葉美香さんは2000年からかこさんの担当になり、「からすのパンやさん つづきのおはなし」や「続 どろぼうがっこう」の編集に携わりました。4月に発売されたばかりの『出発進行! 里山トロッコ列車』のおはなしを中心に、千葉さんから見たかこさとし作品の魅力について伺いました。
●90歳のかこさとしさん、描きおろし絵本
―― 2016年4月に発売されたばかりの『出発進行! 里山トロッコ列車』は、千葉県房総半島を走る小湊鐡道(こみなとてつどう)を舞台にした絵本。実際に里山トロッコ列車の始発駅である「里見駅」から、終点「養老渓谷駅」までの鉄道の旅を楽しみながら、その土地の歴史や地理、自然までいろいろな角度からトロッコ列車を楽しむことができる。まさに、かこさんならではの作品だと思いました。

そうですよね! この作品はもともと、小湊鐡道が2015年11月にトロッコ列車を運行させることになり、その宣伝のためにと、小湊鐡道からかこさんに、絵を描いてほしいと依頼があったことからはじまっています。ちょうど私がかこさんのお宅に打ち合わせに伺ったとき、かこさんがいつも絵を描いていらっしゃる机の横に、ちらっと鉄道の絵が見えたんです。もともと、ちょっと鉄道好きなこともあって、その絵の美しさに目を奪われていると、かこさんが「お願いされてね。こんな絵を描いているんですよ」と描かれた絵をみんな見せてくださったのです。
里山トロッコ列車は「里見」からスタートします。
―― 絵本の「あとがき」に「下絵を進めていた折、俊敏な出版社の目にとまり、列車運行をめざして絵本を作ることとなりました。」と書いてありますが、「俊敏な出版社」とは千葉さんのことだったんですね(笑)。

そのときかこさんが描き上げてらした絵が、絵本の中の右ページに載っている絵です。「千葉日報」にも掲載された絵も含めて、十数点を小湊鐡道のために描き下ろされていました。絵本では、すでに出来上がっている絵を中心に、新たに構成をしていただき、絵も描き足していただきました。
里山トロッコ列車のことが大々的に紹介されたときの「千葉日報」
―― 鉄道会社の依頼から、絵本ができあがるなんて、意外ですね。

小湊鐡道の石川社長が、かこさんのファンでいらして、ご自身も小さいころにかこさんの作品を読んでいらっしゃったんだそうです。かこさんに宛てた手紙には、かこさんへの思い、小湊鐡道への思いが綿々と書かれていて、かこさんもとても胸を打たれたとおっしゃっていました。そうして描きあがった何枚かの絵は、絵本のために描いたものではありませんでしたが、かこさんが描かれたものなので、すごく物語性を感じました。そこで、「先生、これ絵本にしましょうよ」とおはなしを持ちかけて、一冊にまとめることが決まったんです。
―― トロッコ列車の絵本を作ることが決まってから、制作はすぐに進んだのですか?

トロッコ列車の運行と、出版時期をあまり遅らせたくないとの希望もあり、とても早いペースで、ストーリーを考えていただきました。私がかこさんのアトリエで絵を見たのが10月くらい、原画がすべて完成したのが12月でした。
―― 約2か月で、構成から、原画の完成までを進めてしまったなんて、本当にすごいです! 今回、制作のやり取りをしているダミーを見せていただいていますが、実物と比べても遜色ないくらい、完成度が高いですね。

そうなんです。ダミーをいただいてから、何度かやり取りをさせていただきましたが、最初のダミーから構成はほとんど変わっていません。小湊鐡道の紹介からはじまり、里山トロッコ列車の客車の説明などが載っているところも、本当にかこさんらしい作品だと感じました(笑)
―― 構成をするときに、ページの中で絵や文字の位置を切り貼りされて、ご自身で考えていらっしゃるんですね。

はい。かこさんは今でも、すべての作品を手描きで作られていて、構成の文字や絵なども切り貼りしてレイアウトを考えていらっしゃいます。作業はほとんどひとりで行っていらっしゃるので、ご家族の方も、完成した原画を見てはじめて「こんな作品を作っていたのね」と驚かれるそうです。
貴重なラフ(下)を見せていただきました。
―― 『出発進行! 里山トロッコ列車』では、桜が満開の季節から、田植えの風景、蛍狩り、稲刈り、そして雪景色と、駅を越えることに季節の移り変わりが描かれているのも、絵本的な表現に感じます。千葉さんは、絵本を作るにあたって、小湊鐡道のトロッコ列車に乗車されたのですか?

はい。試乗会で乗せていただきました! かこさんが描かれた絵そのままのような、美しい里山の風景が広がる、とても気持ちの良いところでした。本当に絵の通りで驚きました。小湊鐡道は地元密着型で、地域の皆さんが生活の足として活用しているような路線でもあります。風を感じるトロッコ列車はただの観光列車ではなく、里山の暮らしをリアルに体感することができるのも魅力だと思いました。
里山トロッコ列車。
田園風景の中をゆったりと走行します。
―― かこさんも小湊鐡道のトロッコ列車に乗ったのでしょうか?

かこさんは腰を悪くされていらっしゃるので、今回はご自分で取材に伺うことができませんでした。その代わり、小湊鐡道さんからたくさんの資料が送られてきて、その資料を見ながら、さらにご自身でもいろいろ細かく調べられて、作品を作られたそうです。私も見せていただいたのですが、小湊鐡道のことを調べた資料が辞書のような分厚さになっていて、勉強熱心なかこさんの一面を垣間見た気がしました。
―― 千葉さんが特に思い入れ深いページはどこですか?

どのページも、とても大切でひとつを選ぶことがなかなか難しいのですが……。例えば、「月崎」のページには、「初夏の虫たち」とトンネルの掘方が一緒に載っていたり、川廻し工事のことや、もしかしたら「チバニアン」と名づけられるかもしれない地層の話など、1ページに幅広い情報が載っているのが、この作品の魅力だと思います。
「月崎」のページには、ホタルとトンネルの形状も紹介されています。
そのような構成になったのも、小湊鐡道が、歴史もあり、自然もあり、地層もあり……と、かこさんの好奇心を十二分に満たすことのできる、とても恵まれた地域を走っていたからだと思います。絵本を手にした子どもたちには、自分の好きなカエルや虫のページから見てもらって、さらに同じページに書かれている、地層や歴史などにも興味を持ってもらえるきっかけになればと、かこさんは思っていらっしゃるのだと思います。
―― 夏休みに入り、お子さんと小湊鐡道に乗るご家庭もいらっしゃると思います。この絵本を読んでから乗ると、より一層、楽しみが広がりそうですね。

そうなんです。それと、この絵本の舞台は千葉県の小湊鐡道ですが、日本のどこにもこのような里山風景は広がっています。里帰りをしたときや、旅行で里山に出かけたときなど、ぜひ窓から外を見て、絵本の世界とつなげて、いろいろ想像していただけたら嬉しいです。
見返しには、「全国トロッコ列車運行状況図」も掲載されています。
小湊鐡道里山トロッコ列車HPでは、絵本の紹介もされています。
●かこさんはとても大きな人です。
―― 千葉さんは2000年から、かこさんの担当編集者になられたとのことですが、最初に、かこさんと作った作品について、教えてください。

太陽と光しょくばいものがたり』です。これは、著者で光しょくばいの発見者である藤嶋昭先生が、かこさんのファンで、かこさんに光触媒を子どもたちに伝える絵本を作ってほしいと依頼したことがきっかけで絵本作りがスタートした作品です。当時、川崎にある「光触媒ミュージアム」に伺って、おはなしを伺いました。藤嶋先生をはじめ、研究スタッフの皆さんから光触媒に関するレクチャーを受けたのですが、正直、私には難しすぎて、おはなしの内容が少しも頭に入ってきませんでした(笑)。でも、かこさんは、素早く理解をされて、どうやったら子どもたちに分かりやすく光触媒のことを伝えることができるか、いろいろ構成を考えてくださったのです。
―― 難しい話に終始することなく、ところどころ実験の様子が紹介されていたり、キャラクターがくすっと笑えるようなほほえましいやり取りをしていたり……、随所に、かこさんらしい、子どもたちへの心遣いが感じられる作品ですね。

『太陽と光しょくばいものがたり』を一緒に作らせていただくことで、かこさんの構成力のすばらしさ、物を分かりやすく伝える力を目の当たりにすることができました。そして、もっともっと、かこさんの作品を作るお手伝いがしたいと思うようになりました。
―― そのようなやり取りを重ねていった中で生まれたのが、40年ぶりの続編となる「からすのパンやさん つづきのおはなし」や「続どろぼうがっこう」だったのではと思います。

そうですね。かこさんから、「カラスのパンやさん つづきのおはなし」のことを聞いたのは、もう10年以上も前だったかと思います。それから、お会いするときに、少しずつストーリーの構想など進捗を伺っていたのですが、いつ完成するかは、まったく予想できませんでした。でも、かこさんは、密かにずーっと準備をなさっていて、あるとき、「こんなはなしにしたいと思います」と作品を見せてくださったんです。もう、ビックリしました。それから、かこさんと改めて相談しまして、新たに10冊の「つづきのおはなし」を作ることになりました。
―― 「つづきのおはなし」はすべて「かこさとしおはなしのほん」として出版された作品の続編ですが、描かれている画材なども当時と同じ手法を使っていらっしゃるのが、とても驚きました。

特に『あおいめ くろいめ ちゃいろのめ』の続きのおはなし、『あおいめの めりーちゃん おかいもの』はコラージュを使っていて、かこさんご自身がすべてのパーツを切り貼りして作っていらっしゃいます。この制作をしている間は、アトリエのいろいろなところに紙の切れ端があったそうで、「とても大変だったんですよ」と嬉しそうに話していらっしゃいました。「目」だけを集めていらした小さな袋も見せてくださいました。
―― かこさんが、一生懸命切り貼りされている姿を思うと、とても微笑ましいですね。

そうなんです。『あおいめの めりーちゃん おかいもの』では、あおいめのめりーちゃんのお母さんやお父さんなど、家族が登場します。それに、美味しそうな料理も出てきてとてもキュートです。前作の良さを踏襲しつつ、キャラクターのバックグラウンドがしっかりと描かれていて、私も大好きな一冊です。

―― 千葉さんの中で、他の出版社さんから出版されている、かこさとしさんの作品で、特に好きな作品、自分が編集してみたかったと思う作品はありますか?

編集してみたい作品は、『とこちゃんは どこ』(作:松岡享子 出版社:福音館書店)です。
―― 元気な男の子、とこちゃんを人込みの中から探す、探し絵絵本ですね。どんなところが、編集してみたいと思うのでしょうか?

編集作業は絵を隅々まで見ますから、絵本の中に出てくる、いろいろなものをチェックしてみたいです(笑)。かこさんの作品なので、じっくり見るといろいろなストーリーが隠されていそうですよね。
―― たしかに。キャラクターひとりひとりに、物語がありそうですね。最後に、千葉さんが感じる、かこさんの魅力を教えていただけますでしょうか。

すごく大きな方です。懐ももちろんそうですが、考え方などすべてにおいて、大きな方だと思います。絵本作家さんだけでなく、多くの方は自分の生きてきた中で、得意なもの、不得手なものがあると思います。学校教育の中で、文系と理系に分かれるのも、そのひとつなのではと思います。でも、かこさんには、その境目がないんです。どちらもプロフェッショナル。それは、持って生まれた才能ばかりでなく、ご自身の興味や関心、学び、吸収したいという姿勢が根本にあるのだと思います。そして、それらを分かりやすく伝えるための表現力のすばらしさ! 二人といない、貴重な方だと思っています。
―― ありがとうございました。


序章 かこさとしさんってどんなひと?
90歳にして、新作を次々と発表されているかこさとしさん。
かこさんってどんなひと? 知りたい方はこちら>>


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