
ぼくは苦しくなると、君に会いに行く。君の名前は、タロウ。 遠い国、シンガポールから一人でやってきた13歳のタロウは、体長2.7m、重さは約50kg。巨大な体にギザギザの歯を持ち、毒を出して敵をやっつける。生きるために闘うんだ。そんな君とぼくは、友だちになれるかい……?
絵本の中ではっきりと書かれてはいませんが、「君」はたぶん、日本で唯一、愛知県東山動植物園で飼育されているコモドドラゴンのタロウのことでしょうか。「生きる恐竜」と呼ばれる世界最大のトカゲは、見る者が思わず慄くくらいの迫力に満ちみちています。 でもぼくと目が合うとタロウは、ギョロッとやさしい目で笑うのです。そしてぼくは返します、「だいじょうぶ、きっと大丈夫だよ!」。
まったく生態の違う、言葉も交わせない生き物。そんな境界を優に越えて、タロウはぼくに揺るぎない強さをくれます。タロウのような存在がいるだけで、子どもたちにとって毎日はどれほど輝くことでしょう。大人にもまた、特別なだれかに思いを馳せるきっかけとなる一冊です。
(竹原雅子 絵本ナビライター)

海をこえてきた君と出会ったぼく。ぼくは苦しくなると、君に会いに行く。毎日はいろいろあるけれど、ぼくは言い聞かせるんだ。大丈夫、だいじょうぶ。きっと、大丈夫だよ! 君の目は、やさしい目をしていた。君の目に、ぼくはうつっているかい? ぼくが笑ったら、君も笑っていた。君との出会いがぼくを強くする。心に宿る友・タロウとぼくの物語。
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