サトウハチローの詩集『おかあさん』は奥さまの幼いころからの愛読書。
そらんじている詩も収録されています。
私にもサトウハチローのリズミカルで優しい表現の詩は、わかりやすくて感情移入しやすいので、好きな詩のひとつです。
今回、いわさきちひろさんがそれぞれの詩に絵を添えて出されたこの絵本については、「おかあさん」が二重に楽しめる本だと思います。
様々なお母さんが登場します。
お母さんの視線から捕えた子ども、子どもの視線から見た母親、それぞれに「おかあさん」をモチーフにした詩と絵。
日本的なお母さん、洋風のお母さん。
ママだったりマミーだったり、和洋、現代過去を問わず、お母さんのイメージが様々に表現されていて、感心させられました。
そんな中で、「母がある」の後姿は、父親から見た妻でもあるようでゾクリ。
「ちりぬるをに母がある、もの悲しさに母がある、花のひだにははがある、ゑひもせずに母がある」の表現は感性的でもあり、母であり妻である女性の生々しい心情であり、この絵の女性がこちらを向いて、見つめられたら身動きできなくなってしまいそうな緊迫感を覚えました。
「おとうさん」を描くのは、サトウさんにしてもいわさきさんにしても論外なのでしょうね。