私たちが子どもの頃から親しんできた村上勉さんの新作!!
そう聞いただけでもソワソワしてしまうのですが、
開いて1ページ目に広がる大きな大きなどんぐりの木のある風景と、そこに住んでいるかえるとあまがえるととかげの登場には心躍らずにはいられません。
はじまりは少し奇妙。
三人の住むどんぐりの木のおうち。その葉っぱを毎日バリバリバリバリ食べている何かがいるのです。
おそるおそるそばまで行ってみると、そこにいたのはかなり怖い顔をした、何やらけむくじゃらなやつ!
とにかくそのけむくじゃらが、葉っぱをどんどん食べるので、夏までになくなっちゃうんじゃないかと気が気でなりません。
そこで、勇気を出してけむくじゃらにお願いをしてみるかえるくんたち。
無表情ながらも、何となく答えているようなけむくじゃら。
この微妙なやり取りが面白くて、いつのまにかすっかり物語の世界に入り込んでしまっている事に気が付きます。
ところが、ある大きな出来事がきっかけで、話の方向はすっかり変わっていくのです。
かえるくんが、人が変わったようにあることに没頭し始めるのです。
「空を飛ぶ」研究を始めるのです。どうしたというのでしょう?
ここからは思ったよりも長いかえるくんの葛藤の日々が続きます。
かなり読み応えがあります。
かえるくん、すごい。
その決して諦めない心は、まわりの人の心を動かすし、
有り得ないと思っていた結果だって動かしてしまうのでしょうか!?
読み終わった後には、私自身の心まで動いてしまっているみたいです。
村上勉さんの子どもたちへの温かいメッセージが聞こえてきそうな、この素敵な物語。
ゆっくりでもいいから、小学校低学年の子どもたちからじっくりと味わってほしいと願ってしまうのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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