もうなかないよ、クリズラ もうなかないよ、クリズラ
作: ゼバスティアン・ロート 訳: 平野 卿子  出版社: 冨山房 冨山房の特集ページがあります!
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「クスノキさんを守りたい!」少女の思いが絵本になりました。『大きなクスノキ』 みそのたかしさん さとうそのこさん インタビュー

伐採されることになった、1本のクスノキを救うため、女の子が友だちや親を説得し、ついには市長にまで直談判を行ったという実話をもとにした絵本『大きなクスノキ』が発売となりました。作者のみそのたかしさんは、造園家であり、ニホンミツバチを救う活動をしています。画家のさとうそのこさんは、オブジェを中心に作品を発表されているアーティストです。今回の作品が絵本初出版というお二人に、作品に込めた思いを伺いました。

自費出版で作った絵本が結んだ、出版への道

───『大きなクスノキ』は、みそのさんの文章に、さとうさんが絵をつけたおはなし。さとうさんはもともと立体オブジェ作品を中心に活動されていたということですが、とても温かくて、絵本の内容にぴったりの優しい色合いの作品だと思いました。

さとう:ありがとうございます。そう言っていただけると、とても嬉しいです。

───まず、お二人がこの絵本を作ることになったきっかけを伺いたいと思います。お二人は以前からの知り合いだと伺いました。

みその:さとうさんのご主人が、オブジェ作家として活躍されている赤川政由さんで、彼の工房に出入りしていて、さとうさんとも仲良くさせていただいていたんです。ちょうど4年ほど前、ぼくの母が亡くなったときに、母の思い出を絵本に残そうと思いついて、その作品の絵をさとうさんにお願いしました。さとうさんの彩色がとても好きで、どうしてもとお願いしたんです。そのご縁で、婦人之友社で1年間連載をしていた絵本「虫と畑と食べものと」にも絵をつけていただきました。


文章を担当した みそのたかしさん。

───『大きなクスノキ』を作る以前から、一緒にお仕事をされていたんですね。

みその:ぼくとしては、これからさとうさんと二人でコンビを組んで、絵本を作っていきたいと思っています。

───その記念すべき1冊目が『大きなクスノキ』なんですね。この作品は実話をもとに作られたと伺いました。

みその:ぼくは、自分が見聞きしたり、体験したことを作品に残そうと思っているんです。

───では、この主人公のウタちゃんも実在する人物なのですか?

みその:はい。ウタちゃんは、ぼくの娘がモデルになっています。娘がかよった小学校のクスノキが伐採されることになったんです。娘は「クスノキを守りたい!」と声を上げ、絵本に出てきたように、多くの人たちと相談し、大人たちを説得して、新聞に投書をしました。そうしたらテレビに取り上げられて、町を挙げての問題になりました。ぼくは娘の行動、それによりどんどん問題が取り上げられていく様子をすぐそばで見ていました。

───絵本の中に出てくる、ウタちゃんのお父さんがみそのさんご自身なんですね。

みその:実際には、ぼくが移植の名人吉村金男先生を紹介し、無事、クスノキは移植されることになりました。ぼくは、小さな小学校のクスノキが伐採されることに対して、一人の少女が声を上げたこと、それがマスコミに取り上げられ、行政を動かしたということはとてもすごいことだと思います。娘はもう大人になりましたが、絵本を作ろうと思ったとき、このことを一番に作品に残したいと思ったんです。

───ウタちゃんの頑張り、それに周りが動かされて、クスノキを守るために協力するおはなしに、共感する読者も多いと思います。みそのさんは造園家として、今までにいろいろな植物と接してきたと思いますが、その植物に対する思いも、作品に込められているように感じました。

みその:そうですね。ぼくは今までに、行政からの依頼を受けて、公園や公共道路、公共施設に植えられた木々の剪定や伐採を行ってきました。その中で常に感じていたことは、行政によっては、切らなくてもよい場所に生えている木まで、むやみに切ってしまう傾向にあることです。

───切らなくてもよい場所に生えている木ですか?

みその:例えば、学校の校庭や神社仏閣、あと森や緑地などです。武蔵野の雑木林などは、定期的に切ることで「萌芽更新」が起こって、森が活性化します。そして、切った枝は薪や炭など、我々の生活に必要なものに形を変えます。それは必要なことだと思っているんです。でも、今回のおはなしのように、学校の新築工事のための重機が入らないからだとか、家の前にあって邪魔だとかいう理由でむやみに切ってしまうことは、とても危険なことだと思っているんです。なぜなら、木はその1本だけで生きているわけではなく、木を寝床にしている鳥や動物、葉っぱを食べて生きている昆虫など、多くの生き物の住処を奪い、命を奪うことにつながるからです。

───絵本の中でも、ニイニイゼミやアオスジアゲハが、クスノキがなくなると困ることをウタちゃんに訴えていますね。

みその:実際に、ニイニイゼミはクスノキの根っこから栄養をもらっていますし、アオスジアゲハの幼虫はクスノキ科の葉をエサにして成長します。ヤマバトはクスノキの枝を使って巣作りをするのです。

───おはなしを通して、本物の昆虫の生態を知ることができるんですね。

みその:そうです。ただ、そこばかりをクローズアップしてしまうと、環境保護を訴えるおはなしになってしまいます。そうすると、子どもたちが読んでもあまり面白いと感じてもらえないのではないかと思いました。なので、あまり深刻な内容にならないよう、文章でも昆虫たちがウタちゃんに話しかける形でファンタジー要素を入れるようにしました。さとうさんに絵をお願いしたのも、チョウチョやセミをさとうさんの優しいタッチで描いてもらえば、きっと子どもたちも楽しく読んでくれるのではないかと思ったからです。

───さとうさんは、いつ『大きなクスノキ』の原稿を、みそのさんから渡されたのですか?

さとう:絵本の原稿を手にしたのは、絵本を出版することが決まって、絵の依頼を受けたときでした。でも、その前から、みそのさんに「こんなお話を作りたいと思っているんだ」とストーリーは伺っていたんです。

───原稿をはじめて見たとき、どのように思いましたか?

さとう:ほかのおはなしに絵を描かせていただいたときもそうですが、とてもあたたかいストーリーを書かれる方なので、今回も楽しく読ませていただきました。ただ、ニイニイゼミやアオスジアゲハなど今まであまり描くことのなかった昆虫がおはなしに出てきたので、どうやって私なりのセミやチョウを描けばいいのか考えました。

───ニイニイゼミもアオスジアゲハも、とても印象的に描かれていると思いました。絵本に登場するクスノキも、青々として、とても生き生きと描かれています。さとうさんは実際に、移植されたクスノキをご覧になったのですか?

さとう:残念ながら、実際に移植されたクスノキを見に行くことはできませんでした。ただ、みそのさんが撮影したクスノキの写真をたくさん見ることができたので、その写真をアトリエに貼って、観察しながら原画を描きました。やはり、実際の写真を見て描くのと、何も見ないで描くのでは、絵の説得力が違いますから。


絵を担当された さとうそのこさん

───絵を描くときに、特に大変だったことはありますか?

さとう:そうですね、文章によっては繰り返しのように感じる描写もあったので、そこは絵で変化をつけたり、2ページを1つにまとめさせてもらったりと、こちらの希望をお伝えして、話し合いをしながら決めていきました。

───画家さんの中には、作家さんとあまりやり取りをせずに、ご自分の想像力を膨らませて描きたいと思っている方もいると思います。さとうさんとみそのさんは、お二人で何度も相談しながら制作を進めていかれたのですね。

さとう:その都度、相談しあうということは私たちもあまりしませんでした。ときどき私が「この2ページは1場面にまとめたほうが良いと思います」と伝えると、みそのさんが「じゃあ、そうしてください」と答えるような感じで、絵に関してはほぼ私に任せてくださいました。

みその:ぼくがいろいろ言うと、絵が固くなってしまうので、さとうさんに自由に描いていただくのが良いと、今まで一緒に仕事をしていく中で学んだんです(笑)

───さとうさんの作品を、とても信頼されているんですね。さとうさんが、特に楽しかった場面はどこですか?

さとう:どのページも楽しんで描かせていただいたのですが、特にウタちゃんが木を抱きしめている絵は好きですね。

みその:ぼくも、この絵がすごく好きですね。

さとう:私の絵は決して写実的な絵ではなく、私が感じたようにデフォルメして描いています。そのデフォルメする度合いにいつも悩みます。今回は、おはなしの中で主人公のウタちゃんが1年生、6年生、そして大人になるまでを描いているので、彼女のビジュアルをどう成長させるのかに一番気持ちを込めて描きました。

───1年生と6年生ではウタちゃんの髪形が変わっていますね。でも、ウタちゃんのテーマカラーであるオレンジ色が変わらず塗られているので、ウタちゃんのことがきちんと読者に伝わるようになっていると思いました。悲しいときは髪の色が沈んだブルーになって、嬉しいときはピンク色に変わるのも、感情を全身で表現しているようで、とてもかわいらしかったです。

さとう:ありがとうございます。ただ、読んでくださる方がいる以上、独りよがりで描いてはいけないものだと思っているので、なるべく、ビジュアルを大きく変えることは避けて、読者の方がスムーズにおはなしの世界に入っていけるよう、気を配りました。

みその:ぼくも自分の経験だけで文章を書いてしまって、途中でハッとしたことがこの原稿の制作中に何度かありました。例えば、クスノキを精製すると「樟脳」というタンスの中などに入れる防虫剤になるのですが、作品の中でニイニイゼミやアオスジアゲハがクスノキで生きているという描写があります。実際に、クスノキの根元を掘ると、ニイニイゼミが出てきた経験をもとに書いたのですが、クスノキが樟脳の成分だと考えると、この描写はおかしくないか……と後で気づいて悩みました。結果的に調べてみたら、ニイニイゼミもアオスジアゲハの幼虫もクスノキをねぐらにしたり、葉っぱを食べたりして生活しているということが分かったのでよかったのですが、それから、自分の経験だけで書いていないか、いつも気にするようになりました。

さとう:今回の絵本の題材となったおはなしもそうですが、みそのさんからは、今まで知らなかった自然のことや植物のこと、昆虫、動物のことを教えてもらえるので、私自身はとても発見があり、物の見方が変わってきたと思います。

みその:そういってもらえるのはとても嬉しいですね。ぼくは造園家として、植物と接する中で、そこに暮らす昆虫や動物たちを見てきました。彼らを見ていて思うのは、決して単体だけでは生きられないんだということです。絵本の中ではクスノキを伐採する話ですが、それによって、ニイニイゼミもアオスジアゲハも殺してしまう。動物たちもいなくなってしまう……。つまり、生態系が崩れてしまうのです。そう考えると、簡単にクスノキだけを伐採すれば良いということにはならないはずです。絵本を読んだ子どもたちが、そういうことを考えてくれるようなきっかけになればいいなと思っています。

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みそのたかし

  • 三浦半島の里山に囲まれた緑豊かな地域で生まれ育ち、暇さえあれば裏山に行き、暗くなる まで遊んでいました。自然の恵みを収穫することが当時の暮らしや遊びに組み込まれていた こともあり、花咲き乱れる新緑には山菜を採り、梅雨が明けるとニッケイの根を掘ってしゃ ぶりながらカブトムシを捕り、紅葉が始まるころになるとクリやアケビやヤマイモを採り、 木枯らしが吹くころには枯枝を集め薪にして、落ち葉を集め畑の堆肥にしました。 自然の恵みを収穫することで、余計なお金を使わない暮らしをします。自然を大切にしない と恵みが枯渇します。少年の頃の体験が私の心にしっかりと残っています。

さとうそのこ

  • 美術短期大学で造形を学びました。 オブジェ作家として立体・平面にとらわれず、数々の作品を創り出し、海外にも展開。夢の ある作品は小学校の音楽教科書の表紙を飾るなど、子どもから大人までを楽しませる“その こワールド”をつくりました。殊に作品に紡ぎ出される「色」の魔術は人々を虜にします。 また、みそのたかしさんと組んで、『きのこのはなし たまごたけ』『かみさまのおくりもの  ひまわりの油』、そして『婦人之友』で1年間毎月、絵本「虫と畑と食べもの」を連載しました。

作品紹介

大きなクスノキ
大きなクスノキの試し読みができます!
作:みその たかし
絵:さとう そのこ
出版社:高陵社書店
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