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かこさとしさん90歳おめでとう! 記念連載 かこさんを囲む人たちインタビュー

2016/07/21

【連載】第3回 小峰書店 小林美香子さんインタビュー

【連載】第3回 小峰書店 小林美香子さんインタビュー

第3回にお話を伺うのは、小峰書店の小林美香子さんです。かこさんとは、「かこさとし 大自然のふしぎえほん」シリーズや「かこさとし 子どもと行事 しぜんと生活」などのシリーズ。そして、かこさんが長年ライフワークにしていた子どもたちの遊びをまとめた「伝承遊び考」を編集者として支えました。
小林さんから、かこさんの作品に対する思いや意外な一面について教えてもらいました。
● 研究者としてのかこ先生を感じられるシリーズです。
―― 小林さんが、かこさんの担当になられたのはいつからですか?

1999年に「大自然のふしぎえほん」シリーズの1冊目となる『富士山大ばくはつ』の編集を担当させていただいてからですので、15年以上一緒に本作りをさせていただいています。
―― どのような経緯で、この「大自然のふしぎえほん」シリーズは誕生したのですか?

弊社では、『まさかりどんがさあたいへん』や「かこさとし お天気えほん」シリーズをかこ先生にお願いしていました。その本を担当した前任者から引継ぎをしたとき、かこ先生が科学の絵本シリーズをお考えになられているということを聞きました。長年、科学の研究者としてのかこ先生のご活躍は存じていましたので、きっと面白い作品になると思いました。それで、かこ先生にお願いしたのが「大自然のふしぎえほん」シリーズです。
―― 「大自然のふしぎえほん」シリーズは、台風や雷などの自然界のさまざまな現象や動植物の生態のふしぎなどをかこさんならではの切り口で描いた、科学絵本です。この10冊のテーマはかこさんご自身が考えられたのですか?

もちろん、そうです。かこ先生からアイディアのメモを見せていただきました。そこには、15冊くらいの科学絵本のテーマと描きたい内容が丁寧に記されていました。その中から10個のテーマを選ばせていただき、「大自然のふしぎえほん」シリーズとすることが決まりました。
今、改めて10冊のテーマを見てみても、火山や竜巻のこと、土壌問題など、現在とても問題になっているテーマばかりで、かこ先生の視点の鋭さを感じます。
―― 実際にどのようなやり取りで絵本の制作が進んでいったのですか?

かこ先生がご自身でいろいろ調べられて、本の形にレイアウトしたものを見せていただき、私の方でも、できるだけ多くの資料を集めてこちらの意見などをお伝えして、反映していただく……というやり取りを、完成まで何度も繰り返します。当時は、かこ先生と取材に行くことも多く、『富士山大ばくはつ』を作ったときは山梨県にある「なるさわ富士山博物館」に行きました。そこで、熱心にメモしたり、スケッチをされていました。後日、そのときの雲の話が、『富士山大ばくはつ』の中に登場しているのを見たとき、かこ先生はこうやって見聞きしたことを作品に反映されているんだと感動しました。
―― すでにご自身でも調べられているのに、より詳しく知ろうとされる姿は本当にすごいですね。

そうなんです。かこ先生は一時的な知識ではなく、本を読んだ幼い読者が10年20年後、大人になったときにも役立つような、真実の研究に常に目を向けていて、子どもたちに伝えようとされています。そのことを私が特に実感したエピソードがあるのですが、『くらげのふしぎびっくりばなし』を制作しているとき、くらげの研究で有名な新江ノ島水族館を取材しました。そうしたら、絵本の中でとても重要なくらげの生態部分に間違いがあることが分かったんです。すでに構成も固まっていて、出版までのスケジュールも決まっていました。通常であれば、今から描き直すことは時間的に難しく、私は頭を抱えました。でも、かこ先生はまったくうろたえることなく、むしろ、正しい知識を知ることができたことを大変喜ばれていました。そして、当初のスケジュールを遅らせることなく、新しい部分を描きあげられたのです。
―― とてもかこさんらしいエピソードですね。「大自然のふしぎえほん」シリーズは1999年から2003年前の約4年間で10冊が刊行されました。その後、出版されたのが、「伝承遊び考」。これは、かなり専門的な研究書ですね。

「大自然のふしぎえほん」を担当しているとき、かこ先生から「実は、へのへのもへじ″を集めているんですよ」と資料を見せていただきました。それは、かこ先生が50年間集められている、「絵かき遊び」や「じゃんけん」など、子どもの遊びに関する、膨大な資料でした。そのときは、どこか別の出版社から出版する作品というわけではなく、「自費出版でもいいから、いつか本にまとめたいと思っているんです」とおっしゃられていました。それで、「大自然のふしぎえほん」シリーズが完結したタイミングで、かこ先生に「ぜひ、弊社で出版させていただきたい」とお願いしました。
―― 50年間分の資料! かこさんはどうやってその資料を集められてきたのでしょうか?

原点となったのはセツルメントでの子ども会の活動だったのだそうです。子どもから金魚の絵かき歌を教えてもらったのが、絵かき遊びに興味を持ったきっかけだとおっしゃっていました。絵本作家になられてからは、地方の講演会に行く度に、「あなたが知っている絵かき遊びやじゃんけん、鬼遊びを教えてください」とアンケートを取って、素材を集め、早くも帰りの電車の中から、もう分類をしはじめていたそうです。そうやって集めた子どもの遊びの資料は30万点近くにも及びました。
―― 30万点! 想像を超える数の資料が集まったのですね。

その内の10万点の、絵かき遊びの図や歌詞を調べて分析したものが『絵かき遊び考』になりました。同じようにかこ先生が50年間で集められた子どもの遊びに関する資料をまとめたものを『石けり遊び考』『鬼遊び考』『じゃんけん遊び考』として出版しました。
―― 600ページ近いボリュームもさることながら、装丁の豪華さにも惹かれる作品ですね。

やはり、かこ先生の長年のライフワークを集約するシリーズですから、しっかりとしたものにと思い、杉浦範茂先生にブックデザインをお願いしました。表紙は杉浦先生の案で、子どものかすりの着物をイメージして布クロスに印刷し、かこ先生が描いた資料を散らすことにしました。
資料を整理される中でのメモ書きもいくつか入っています。よく見ると「スミ(済みの意)」や「正(数を表す画線法として)」の文字、原稿用紙の一部が見つかりますよ。
「伝承遊び考」シリーズのデザイン指定紙(左、中央)と表紙(右)
―― 「伝承遊び考」シリーズにこれ以上ないほどピッタリな表紙ですね。

巻によって使われているイラストが微妙に違いますので、4冊比べてみていただくとより面白いと思います。また、この本に登場する遊びには、すでに廃れてしまった遊びもいくつもあります。子どもの姿を知る上でもとても貴重な資料だと思いますので、子どもに関わっている方にはぜひ、手に取っていただきたいシリーズです。
―― 懐かしさを感じる方もたくさんいると思います。こういった遊びを研究しながら『からすのパンやさん』や『だるまちゃんとてんぐちゃん』などの名作を生み出されていたと思うと、とても感慨深いですね。

本当にそう思います。
その次に出版をした「かこさとし こどもの行事 しぜんと生活」シリーズは、伝承遊びを収集するきっかけとなった、セツルメントでの子ども会の活動で、日々、子どもたちに接していらっしゃったかこ先生だからこそ、大切と思われる行事や習わしについて、お書きいただきたいと思い、お願いしたシリーズです。
最初は「こどもの行事」のみだったのですが、かこ先生と「これからを生きる子どもたちへの行事絵本とはどのようなものか」と打ち合わせを重ねているうちに、先人たちが祭りやしきたりに込めた願いや心を伝えられるような本にしたいという方針が定まり、行事が日本の自然や人々の生活に密接に関わっていることから、「しぜんと生活」という言葉を入れたシリーズタイトルとなりました。
―― 「かこさとし こどもの行事 しぜんと生活」シリーズは、2012年に絵本ナビでもおはなしを伺った、大変思い出深い作品です。このとき、各巻の見どころを教えていただきました。

インタビューの中でかこ先生も語っていらっしゃいますが、「3月のまき」を作っているときに、東日本大震災が起こりました。すでに絵も文章も出来上がっていましたが、このときもかこ先生は一切迷わず、ページを構成し直して、東日本大震災のことを「3月のまき」の中に加えられたのです。
―― 子どもに伝えたい大事なことを優先させる姿勢は、ずっと変わられていないのですね。

「かこさとし こどもの行事 しぜんと生活」シリーズでは、日本の伝統的な行事はもちろん、ハロウィンやバレンタインなど、最近注目を集めるようになったイベントについても紹介しています。そして、やはりかこ先生でないと語れない戦争のこと、8月の「終戦」と12月の「開戦」についてもふれています。お子さんの誕生月の巻からでもよいですし、興味のある行事、絵、遊びなどいろいろなところから読んでもらえたら嬉しいです。
――  そして、最新刊となるのが「かこさとし あそびずかん」シリーズ(全4巻)ですね。

「伝承遊び考」シリーズは研究者向けの、資料性の高いシリーズでした。しかし、題材となっているのは子どもたちの日常的な遊びの数々です。子どもたちにも、かこ先生が出会ってきた遊びの知識を伝えたいと思って依頼したのが「かこさとし あそびずかん」シリーズです。
―― 春、夏、秋、冬のそれぞれの季節で楽しめる遊びがいっぱい詰まっている作品で、どのページを見ても、実際に遊んでみたくなる内容ばかりでした。

「楽しみながら体や心を育て、知恵や力を伸ばす遊び」をテーマに、かこ先生が厳選した遊びがたくさん紹介されています。もちろん、かこ先生のことですから、遊びだけでなく、行事や自然、動植物のこともたくさん載っています(笑)。かこ先生の絵本はどれも、本を読んで終わりではなく、実践して初めて、その楽しさが十二分にわかると思います。ぜひ、保育園や幼稚園などで、子どもたちが気になった遊びを、みんなで一緒に遊んでもらえたら嬉しいです。
●お茶目なところもかこ先生の魅力です。
―― 30冊近くかこさんと絵本を作ってきた小林さんが感じる、かこさんの作品の魅力は何だと思いますか?

やはり、子どもたちに正しい知識を伝えたいという姿勢ではないでしょうか。そのための勉強を惜しまない熱心なところが作品にも十二分に反映されていると思います。かこ先生ご自身も、とても好奇心旺盛な方で、『ヒガンバナのひみつ』を作っていたときは、全国で呼ばれている「ヒガンバナ」の別名を全部調べて、都道府県別の一覧表として、見返しとされました。また、『かいぶつトンボのおどろきばなし』のときは、模型トンボを作るのにハマってしまって、山ほどトンボを作っていらっしゃいました。あとがきに掲載した写真には、たくさんの模型トンボと共に写っていらっしゃいます。そんなお茶目な部分も、作品から感じられると思います。
『かいぶつトンボのおどろきばなし』奥付より
―― 小林さんはどんなときにかこさんのお茶目さを感じますか?

『富士山大ばくはつ』で読書感想文を書いた子が、その年の読書感想文コンクールで、文部科学大臣奨励賞を受賞したんです。かこ先生と一緒に授賞式に参加したのですが、待ち時間のときに喫茶店でクリームソーダを頼まれたんです。80歳のかこ先生がクリームソーダを召し上がっている姿がとてもかわいらしくて、お茶目だなぁと思ったのを覚えています。
―― とても微笑ましいエピソードですね。他社から出版されているかこさんの作品中で、小林さんが特に好きな作品はどれですか?

子どものときに読んで、今でもよく覚えているのが『たべものの たび』(童心社)でした。父が医師なので、母が父の仕事を教えるために読んでくれたんだと思うのですが、食べ物たちが、「しょうちょうこうえんのジェットコースター」に乗って、食べ物や栄養が入っている「きいろいカバン」を吸い取られていく場面がとても好きで、記憶に残っています。大人になった今、読み返すと、体の中へ食べたものが消化吸収されていく様子がとても分かりやすく描かれていて、改めて作品のすごさを感じます。
―― 今後、出版を予定している作品がありましたら、教えていただけますでしょうか。

かこ先生には、2017年に出版する予定の本をお願いしています。詳しい内容はまだお伝えできませんが、かこ先生の生まれ故郷である福井県越前市にとても縁のある生き物を取り上げた絵本になる予定です。
―― なんの生き物なのか、とても気になります。かこさんの新作を拝見できるのを今から楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました。



序章 かこさとしさんってどんなひと?
90歳にして、新作を次々と発表されているかこさとしさん。
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