
死神のイメージって、どんなものでしょう? ガイコツ頭に、黒装束で、大きなカマ! でも、ほんとうはスーツ姿の、さえないおじさんだったなら? “彼”にいわせれば、カマなんてぶっそうなものも、持ち歩かないそうで……
公園であそんでいるところに、道を聞かれた主人公の「ぼく」。 話しかけてきたのは、メガネをかけた、やせっぽっちのおじさん。 差し出された名刺を読むと、『有限会社死神本舗』の文字が!
まさか、このおじさんが死神!?
なんだか見た目は死神っぽくないし、いかにも気弱。 そのうえなんと、お花好き! 見た目どおりにやさしいせいで、つい、人間に情けをかけてしまうダメダメな死神だといいます。
困り果てている死神がかわいそうになってきた「ぼく」は、彼をその日の仕事場へと案内してあげることにします。 でも、ちょっと待って! それってつまり——?
著者は、『二日月』、『チキン!』などの作品で、おとなでもひるむような人生の問いに立ち向かう子どもたちを描いてきた、いとうみくさん。 その新作は、ファンタジックであたたかな物語です。
得意なことなんてなにもないという「ぼく」と、死神に向かない死神。 どこか似ているふたりの出会いは、似ているがゆえに、キラリと光る互いの個性を浮き立たせることになります。
自分ではまるで気付いていなかった、「ぼく」の特技とは? そして、「ぼく」とであった死神がたどる、意外なその後とは?
思いもよらない死神のビジュアルや、彼が迷子になるという突拍子もないストーリーが魅力的な本作ですが、自分の「好き」や「得意」を見つめることのすばらしさを説く、力強い物語でもあります。
「死神」とタイトルにあるとは思えない、ホッコリあたたかなその結末を、ぜひたしかめてみてください。
(堀井拓馬 小説家)

ぼくが道案内することにしたおじさんは死神だという。今の仕事が自分に向いていないという死神とのふれあいを通し「自分の好きなことって?」「自分の得意な方向って?」「社会の中の自分って?」をちらりと垣間見ていきます。

死神の話なのに、心が暖まる優しいお話でした。
非人情的な死神のイメージを払拭するようなお話で、応援もしたくなりました。
死神としては駄目なのかも知れませんが、人の涙にもろい死神、花を愛でる死神に悪い人はいません。
方向音痴なのがたまにきずでしたが。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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