
これは小さな紙の舟が大海原を超えていく旅を描いた、文字のない絵本。
鬱蒼と生い茂る森を抜け、葉っぱの影をくぐり、氷山の間を、魚たちの集団を通り抜け、嵐や大波に飲まれそうになりながら、恐ろしい海の怪物たちの間も抜けて進む小舟。
小さな舟はいつも独りぼっち。
でも、独りだからこそ、波の上にも下にも広がる驚異的な自然の美しさ、素晴らしさに気づくことができる。
大人の読者も子どもの読者も、成長することや学ぶこと、そして人生のアップダウンや苦楽についても、この静かで力強い物語から大いなるインスピレーションを得られるだろう。

紙で折った小舟に乗せたのは、作者の冒険心だったのでしょうか。
到着した場所で舟から降りてきた人影に驚いて、スタートからもう一度小舟の旅を見返しました。
様々な出来事に翻弄されながら旅する小舟でした。
文字がなく、モノクロームに徹した絵本なので、否応なく想像力は膨らみます。
これに色があったら、写真のように描かれたら、現実感をもった魔力を備えるのかしらと、その呪縛からの距離感にほっとしました。
小舟は様々な危険を乗り越えながら旅を続けます。
待ち受けているのは、得体のしれない魚人や怪物たち。
今まで生きて来た、自分の人生に合致するような、しないような、不思議な納得感がありました。
仕事をリタイアしたからこその感想でしょうか。
それならば、小舟の旅は終わっても、乗っていた自分の新たな次の旅がこれから始まるようにも思えます。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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