料理家で文筆家の高山なおみさんと、画家の中野真典さんによるこの本は、とてもパワフルで五感を刺激する絵本です。
ばかじゃない?
へんじゃない?っておねえちゃんは言う。
でも、なみちゃんは知ってるんだ。
全部、全部ホントウのこと――。
紙で切って作った人形のすずちゃん。
柿の木の下にうめたはずのすずちゃんは、降りつづいた雨がやんだ日に掘ってみたら、いなくなっていた。
車にひかれてしまったカマキリ。
茶色のはねをもらっていいよって聞こえたから、もらったの。
おひさまにかざしてみたら、世界が光る。
ふしぎなことも、ありえないこともある毎日。
でも、なみちゃんはそれが全部「ホントウ」だと知っているんです――。
素朴な手書きの文字と、力強さと美しさに満ちた絵が、ひとりの女の子が見つめる生命を描き出していきます。
生命をはぐくむ、水、土、太陽の光。
なみちゃんが、身体全体で感じている、においや色や陽ざしが、ページをめくるたびに広がります。
小さい頃って、なんでもまじまじと見ていた。なんでも口に入れて、食べられないものは慌てて吐き出していた……。
ページをめくるうちにそんな思いが満ちてきます。
少女の感受性をそのまま絵本に体現したようで、子どもはなみちゃんと一緒に遊ぶ気持ちでしょう。大人は心をざわめかせずにはいられません。
(絵本ナビ編集部)
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