ジェットくんは、修行中の子どものカラス天狗です。
カラス天狗ってなにか、みなさん知っていますか?
その名のとおり、カラスみたいな黒いつばさと、くちばしを持った“天狗”なんです。
昔はたくさんいたそうですが、最近はめっきり数が減って……。
でもジェットくん一家みたいに、山の、クヌギの木にかけた巣で、家族で仲良くくらしているカラス天狗たちもいるんですよ。
もちろんジェットくんには友だちもいて、おしゃべり好きなチャットくんや、力もちのマッチョくん、のんびりやのボットくん……。
女の子のお友だちもいますよ。
みーんな、同じ天狗学校の生徒たちです。
大天狗先生のもとで、一緒に修行したり、お弁当を食べたりしています。
そんなある日、おそろしいやつに、子どものカラス天狗だけで立ち向かわなければならない事件が起こり……!?
団地や裏山など、身近な場所に妖怪たちをすんなり紛れ込ませた物語を、紡ぎ出す名手の富安陽子さん。
そんな富安さんが書くカラス天狗のジェットくんは、日本古来の妖怪だけに、朝ごはんもいっぷう変わっています。
谷底からわき出す、霧を食べるというのですから。
またその美味しそうなこと! 金色のキャラメル味、朝もやのすみれ色のプラム味、ピンクの霧はイチゴ味……。
読んだら味わいたくてたまらなくなるはず!
ジェットくんたちの学校の授業も、読者が「やってみたい!」と羨ましくなるほどユニークです。
植垣歩子さんの手によって飄々としたタッチで描かれた絵が、軽やかに、読者をジェットくんのそばに連れて行ってくれます。
元気いっぱいでゆかいなジェットくんのおはなしは、ちょうど学校に通いはじめたばかりの小学1、2年生にぴったり。
長編シリーズや絵本などをたくさん手がける富安陽子さんの作品の中では貴重ともいえる幼年童話。シリーズ化を期待したくなる作品です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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