おいらはフカフカの土のベッドで大事に育ててもらったカブ。栄養もぎゅっと詰めこんで、そろそろ食べごろ。だけど……あれ? 「ちょっと われちゃってるな おまえさんはこっち」と、おじさんにみんなと違う場所に連れていかれちゃった。変わり者ばかりが集まる場所には、虫食いだったり形が変だったりのカブばかり……。おいらたちは食べてもらえないの?
カブを主人公に、自らも農業に携わるそのはらいくみさんが描いた絵本。
農家さんが野菜を売るとき、変わった形のものは店頭に並べないことがよくあるんですよね。そんな“並べてもらえない”カブがもししゃべったら? 「おいていかないで」「あじはおいしいよ かわった かたちだねって おもしろがってもらえるよ」と自己主張して、店頭で子どもと目が合っちゃったりするかも!?
「すごーい! みたことない こんなの これほしーい!」とお母さんにおねだりする女の子。おじさんに「このかぶはね、ほんとうは畑でしか見られない とくべつなカブなんだよ」と言われたら、女の子もカブも「なんだかカッコイイ!」と大喜び。刻んでシチューに煮込まれ……すごく美味しそうに食べる女の子の表情がたまりません。
そのはらさんによると「他と違うことは“個性”。その個性を大切にして多様性を受け入れる社会になってほしい」という思いと、「栽培時に出てしまう、規格外の野菜をなんとか表舞台に立たせてあげたい」という思いで描いた作品だそうです。
畑で作られた野菜のことを想像するって、絵本がないとなかなかできないことかも。見た目と関係なく、味はおいしい。カブも他の野菜もみんな食べてもらえるのを喜んでいるよ、と子どもに伝えてあげられたらいいですね。食育にぴったりの一冊。野菜があまり好きじゃない子にもぜひどうぞ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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