現代に残り、過去を伝える歴史的な遺産の数々。寺院、遺跡、絵画や彫刻、書物──そして、ミイラ。
死者がミイラになることで、骨格しか残らないはずのその体はより生前に近い形で現代によみがえり、多くのことを私たちに伝えます。
9歳にして王になり、19歳でこの世を去った少年王ツタンカーメン。世界でいちばん有名なミイラは、生前どんな少年で、どんな生活を送っていたのか?
歴史上で最初に死者をミイラにした人々、チンチョーロ人。ミイラにした死者をすぐそばに置いて、何年も一緒に生活したという彼らのおどろくべき文化とは。
一夜にして火山灰の下に消えた都市、ポンペイ。悲劇の夜に命を落とした人々の最期の瞬間を、服のひだや表情にいたるまで克明に伝えるのは、形しか存在しないミイラ=H
世界中のさまざまな場所で眠るミイラ。彼らを分析し、それぞれの地域であきらかになった、死にまつわる歴史と文化を紐解く科学絵本です。
登場するミイラは、写実的ではあるものの細部のデフォルメされたイラストで描かれているので、なまなましさはやわらぎ、写真や映像で見るような怖さはありません。
とはいえやっぱり、ミイラやガイコツの持つ、死にまつわる奇妙な怖さに惹かれるところもあるわけで……。本書によれば、イギリスビクトリア女王の時代にはエジプトのミイラに巻かれた布を開封するパーティーまでひらかれていたというのだから、怖いもの見たさ≠ニいうのは世界共通のようです。
そして、日本にもミイラはいた! ミイラになりやすい体にするための食事制限をし、最後には断食をして、みずからの意思で土に埋まる。いわば、生きたままミイラになることを選んだ人々です。その正体は、本書でぜひ。
ときには死者の帰る場所として、ときにはその死を嘆くあまりに……そしてときには、事故や殺人のあとでまったくの偶然に。人々がミイラを作る理由や、その製造方法までを記した、ミイラガイド(?)の決定版!
(堀井拓馬 小説家)
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