子猫のばるは、買ってもらったばかりの赤い靴をはいて、バス停までお父さんをお迎えに行きます。
「はやく バス こないかなあ。」
次々にやってくるバス。ところがお父さんはなかなか姿をあらわしません。同じようにお迎えにやってきたちびねこのお父さんも、やっぱりバスからおりてきません。
「あっ、バスよ! ほら みて。
こんどこそ……」
わくわくしてお父さんを待っていたばる。時間が経つにつれ不安な気持ちになったり、自分より幼い子の面倒を見たり、先に帰っていくちびねこ親子を見てさびしくなったり、自分を奮い立たせてみたり。お父さんを待つ短い時間の中で、気持ちが大きく揺れ動く様子が繊細に伝わってきます。誰かを待つ時間は、なんだかとっても長いのです。
こんな風に日常のちょっとした場面の中で、子どもたちの心は驚くほど成長していくのでしょうね。作者は、武井武雄記念日本童画大賞絵本部門大賞を受賞された注目の絵本作家・松丘コウさん。くるくる変わる表情や、優しい色合い、主人公の気持ちを表しているかのような背景描写がとても魅力的。読んでいるうちに、いつのまにかばると気持ちが重なっていきます。
さて、ばるは無事にお父さんに会えたのでしょうか。最後のあたたかな場面は、いつまでもみんなの心に残りそうです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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