
養護学校四年生のあつおは、漁師の子の友情にささえられ、海を渡って沖の小島へ初めての冒険に出た。

私が障がいの利用者さんが通ってくる来る介護施設で働いているからか、特別の教示がある絵本でした。
発語がないと思われていた利用者さんの声を見出したことがありました。
周りから発語がないと思われ、いつも先回りして選択肢を強いられていたので、アイコンタクトか仕草で表現するしかなかったのです。
言葉がはっきり聴き取れない利用者さんがいます。あつおのような存在です。彼らは語ろうとしても、スムーズに伝わらないのです。きっと彼らはこの絵本のすなおに語りかけながら、自己表現しているのでしょう。
移動介助、食事介助、トイレ介助等の身体介助が必要な利用者さんがいます。その不自由さを支援することで、彼らの生活が成り立っています。
この絵本は、特別支援学校が養護学校と呼ばれていた頃が舞台であり、現在の教育事情とは異なるのかも知れません。
でも障がいを考える上で、とても大切な事を伝えています。
あつおもひとりの人間として、懸命に生きているのです。
そのアクティブなチャレンジ精神には頭が下がります。
受け身でいるとなかなか自己実現はできません。
そのためには周りの理解と、共生への取り組みが必要です。
自らも先天性脳性小児まひの障害から児童文学の道を目指した吉村敬子さんと、弱者への思いやりを形にしつづける田島征彦さんの合作です。
再読するにあたって、田島征彦さんご自身からの一言があったことに感謝しています。
(ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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