
「あなたに『本当のこと』をひとつかみ差し上げましょう」川のそばにあるお菓子屋〈おやつ〉。ある日店を訪れた青年は、チョコレートと引き換えに不思議な「種」を置いていく。それをきっかけに、店主のエリカはかつて出合った一冊の本を思い出して……表題作ほか4篇+エッセイ。忘れられない本をめぐるささやかな冒険。

吉田篤弘さんといえば作家でもあり、「クラフト・エヴィング商會」名義で装幀なども手掛ける才人。
この『エデンの裏庭』は吉田さんが子供の頃に読んだ作品、(『不思議の国のアリス』と『ガリヴァー旅行記』)と、
児童文学の代表としての『星の王子さま』と『モモ』の四作の周辺を題材にして、
新たに創作として小さな物語と「舞台袖からの報告」と題されたそれぞれの作品の小さな書評を綴ったパートと、
本を愛する人々に贈る「エデンの裏庭」という書下ろし小説のパートで出来ています。
一冊の本の構成(編集)としては、不思議な感じがしますが、
読書の面白さはどこか不思議な空間への迷い込みであることを思えば、
この本の出来上がりそのものが読書体験だともいえます。
吉田さんは「説明が省かれたことによってできた余白」にこそ、
「語られていない色とりどりの物語」が隠されていると書いていますが、
そういうところにはまり込んでしまうのが、
子供の頃の読書体験だといえるかもしれません。
だから、大人になってもう一度その不思議な体験をたどってみたい。
この本はそう思っている大人の読者へのガイド本ともいえます。
なぜなら、この本を読めば、子供の頃に読んだ児童文学を読んでみたくなるのですから。
この本からこんな名言を見つけました。
「本の優劣を決めるのはじつに簡単なこと。先を読みたいかどうかだ」 (夏の雨さん 70代以上・パパ )
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