アーサー王伝説に登場するシャロット姫は、不思議な予知能力を持つ清らかな美しい姫です。呪いをかけられたため
外の世界を見ることもできず、ひとり塔にこもり、鏡に映し出される現実の世界を次々にタペストリーに織り上げています。
ある日、鏡に映ったランスロット卿に一目で恋した姫は、思わず窓辺に走りました。その瞬間、鏡がひび割れ、自らの運命を
悟った姫は…… 幻想的で神秘的な「愛と死の物語」です。ヴィクトリア女王から桂冠詩人の栄誉を授けられ、
英国詩壇の傑出そた一人といわれるアルフレッド・テニスンは、アーサー王と円卓の騎士に生涯惹かれていたといいます。
叙情性あふれる詩句と見事な韻律が響きあうテニスンの『シャロットの姫』は、多くの芸術家を魅了し、数々の名画が
生み出されました。比類の無い美しい詩のリズムをそのままに訳された本書は、ジュヌヴィエーヴ・コテ
(ニューヨーク市が優れたイラストレーターに贈るシルヴァー・アワード賞受賞)の繊細で優美な絵とともに、
アーサー王伝説の時代を魔法のように現代に蘇らせています。“シャロットの姫”をめぐるテニスン、コテについての巻末の
記述も味わい深く、洗練された大人の絵本として、英詩への関心を問わず多くの人の心に残るだろう、とても美しい本です。
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