アフリカの草原で出会った、白いライオンの仔と幼い少年。やがて成長したライオンは、サーカスに売られて行く。長い別れの年月の後、戦時下のフランスで奇跡的に再会するが…。深い絆で結ばれた二つの魂の、永遠にきらめく愛の物語。
アフリカの牧場で少年バーティが出会った白いライオンとの友情物語。
そう書いてしまうと、この物語の素晴らしさがうすっぺらに伝わるような気がします。
一人っ子で友だちもいない少年バーティは、母親ライオンを殺されハイエナに襲われそうになっている白いライオンを助けようと原野に飛び出します。
間一髪母親の銃声で助けられたライオンとバーティ。
野生の世界と牧場を謝絶するために張り巡らされた柵の中で、白いライオンは飼われることになります。
ライオンはバーティの親友以上の仲として成長するのです。
バーティが8歳になるとき、別離がやってきます。
バーティはイギリスの寄宿学校に入学、白いライオンはフランスのサーカスに引き取られていきます。
白いライオンと別れたくないバーティの言葉「きっと迎えに行くからね」という約束がこの物語の一つのキーワードです。
一人イギリスにわたったバーティは逃げ出した寄宿学校のそばで、ナニーという少女と巡り合います。
バーティはナニーと心通わせるようになるのですが、ナニーは修道院学校へバーティは大学へと別れ離れになります。
やり取りしていた便りが途絶え、大人になったバーティは戦争に出ていきます。
死ぬかもしれない自分を手紙に書くことができず、長い別離。
感動的な二人の再会と、白いライオンとの再会。
このドラマチックな話をしっかりと組み立てているのは三者の共通項です。
白いライオンは母を失って孤独だったのです。
バーティは一人イギリスで生活している間に母親が死に、父親は再婚してしまって帰る場所を失いました。
ナニーにしても父子家庭で、ほとんど家にいない父親のために家庭教師と乳母に育てられていました。
お互いをひきつけ合う寂しさと、お互いを心から求める愛が、結びつきをとても崇高にしているのです。
話は、白いライオンの像がある屋敷に入り込んだ少年が、年老いたナニーから話を聞くという展開で進んでいきます。
そして、私が想像できなかった予想外のラスト。
読み終えて感無量。
それほど長くない物語によくこれだけの内容が凝縮されていると思います。
さらに、訳者のあとがきでみると、モーバーゴこの物語を書かせた背景、モーバーゴが物語を書く姿勢とこだわりが実感できて、モーバーゴ作品の虜になりそうです。
厚生労働省社会保障審議会推薦図書です。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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