絵本作家・長新太(ちょうしんた)さんは「ナンセンスの神様」という異名があるほどで、
その作風は極めてユニークです。
2005年6月に78歳で亡くなってから20年になりますが、今でも人気のあるのは、
その面白さゆえだろう。
2025年3月に出た『ちへいせんのみえるところ』は、
はじめ1978年に刊行された作品の復刊もので、
長さんの作品が決して古びない証(あかし)でもあります。
表紙の絵でわかるように、どんよりした灰色の雲の下に広がる一面の草原。
空と大地をわける、地平線。
そこにひょっこり、「でました。」という一文がついて、
顔をのぞかせたのは、男の子の顔。
次のページの「でました。」では、ゾウの頭が。
次の「でました。」では、ドーンと噴火している大きな火山。
もうこのあたりからぐんぐんと、長さんの世界に引き込まれていきます。
次から次で、地平線から出るはずもないものがでてきます。
ページを開くたびに、子どもたちの歓声が聞こえてくるような絵本です。
そして、おしまいは空いっぱいにひろがる、太陽の光。
でも、これで終わるのではなく、長さんが最後にまた男の子の顔を出させます。
太陽で終わるのが、長さんにとって、照れくさかったのかもしれません。