オールズバーグの未読の作品探しで手に入れた一冊です。
やっぱり、オールズバーグは裏切らない。
なんでしょうこの満足感は。
セピア色掛かったモノクロームの世界の中に、非日常的な神秘性が輝いている作品でした。
魔女のホウキも寿命があるということで、空飛ぶ力を突然失い、魔女もろとも地上へと落下してしまいます。
この落下直前の様子の絵の表現の見事なこと、読みながら固唾をのんでしまいます。
さて、使い物にならなくなったホウキを見捨て、魔女は仲間を呼び再び飛び立ちます。
残されたホウキを手にした農婦ミンナ・ショウ。
少々、力の残っていたホウキを上手い具合に家事に使いますが、隣人に気味悪がられ、・・・。
まさしく魔法のホウキ!
あたかも生きているような動きが上品な文章と絵から伝わってきます。
中盤ホウキが処分されるくだりで、絶望的な気持ちになっていた私は、また“絵本の魔術師”オールズバーグの世界へ心を連れて行かれてしまっていました。
そして、ラストの見事なウィットに富んだユーモラスなエンディングに、またもや「やられた〜!」と叫んでしまいました。
村上春樹先生の落ち着いた文調の訳が、逆に不可思議さを増幅させ、お話の虜にさせてくれました。
文面の下地の様なかぼちゃの絵から、ハロウィーンの季節にお薦めの作品かもしれないと思いました。
息子は、やはり犬が飛ばされたページで「ハハハ・・・〜」でした。
高学年から大人の方まで楽しめる作品です。