こどもべやに夜がきました。まーちゃんもみっちゃんもよーちゃんも、すやすや夢の中。起きているのはいっちゃんだけ。いっちゃんは、まっくろにのみこまれないように、頭まですっぽり布団をかぶります。
「ねちゃ だめ ねちゃ だめ」
まっくろに気づかれないよう、じっと息をひそめるいっちゃんでしたが……。
<岩波の子どもの本>創刊70周年記念新刊3冊目として登場したのは、チェコ在住の絵本作家出久根育さんによる、「こどもべや」を舞台にした4姉妹のとっておきのお話。表題作「こどもべやのよる」のほか、なかなか仲良くなれなかった天使のおにんぎょうといっちゃんが空を飛ぶ「てんしちゃん」、2段ベッドの船に乗って4姉妹だけで海へと出発する「おとなはたちいりきんし」の3つが収録されています。
こわがりで想像力豊かないっちゃんにとって、夜はちょっぴり怖いけれど、どこか魅惑的。やさしく微笑むおつきさまは大好きだけれど、真っ暗は苦手。みんなが仲良く遊んでいるお人形だけれど、いっちゃんだけはなんだかぎくしゃく。それでも、4人で出かけた夜の海で泣きそうになった時に助けてくれたのはてんしちゃんで……。夜を背景にした幻想的な場面と、昼間の生き生きと動きまわる4姉妹の明るい表情。子ども時代に誰もが味わうどきどき、ときめき、わくわくがお話のすみずみにまで詰まった一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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