おなかをすかして泣いている人がいると、飛んできて自分の顔を食べさせる、正義のヒーローアンパンマン。今や絵本、アニメ、映画と大活躍の国民的ヒーローとなりました。そのアンパンマンの原点となったのが絵本『あんぱんまん』。アニメのイメージとは違う、まだ素朴なヒーローです。その誕生50周年を記念しリニューアルしたシリーズが登場。ヒーローの永遠のライバルである「ばいきんまん」が誕生したのが本作品です。
「あははは、おれさまは ばいきんまんだ。たべるものを くさらせて、せかいじゅうの こどもを はらいたに してやるんだ」
悪だくみをするばいきんまん。あんぱんまんを見つけると、「なまいきな やつ、おっこちろー」と叫び、あんぱんまんをまっさかさまに落としてしまいます。ぺしゃんこにつぶれ、あんこがはみ出したあんぱんまんを見たジャムおじさんは大憤慨。
「よくも かわいい あんぱんまんを ひどいめに あわしたな。よし、こんどは ものすごく つよい あんぱんまんを つくって、ばいきんまんを やっつけてやるぞ」
ジャムおじさんは家中の粉を集め、大きくて硬くて絶対につぶれない「ジャイアントあんぱんまん」を作りました。あんぱんまんはパン工場の屋根を吹っ飛ばして飛び出し、ばいきんまんをやっつけに出かけます。
アンパンマンがあんなにも強くなったのには、ばいきんまんの登場が影響しているのですね。人気者になったのは、ばいきんまんのおかげといってもいいかもしれません。永遠のライバルの誕生の瞬間に立ち会えるうれしさは格別。これまでアンパンマンに親しんだ子どもや大人も、これからアンパンマンを楽しむ未来の子どもたちも、ぜひこの絵本を手にとって欲しいです。
(出合聡美 絵本ナビライター)
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