オシップは、とってもちっちゃな小人の子。
トレードマークは、自分の背丈よりもおおきい、まっかなトンガリ帽子です!
おいしいパンを焼いたオシップ、友だちのワワに食べてほしいのに、なかなか帰ってきません。
「あっ、これはなんだ?」
なにやら、赤い糸を見つけました。
いったい、なんの糸でしょう?
きょうはほんとにいい天気。ただ待ってるなんてもったいない。
どこまでつづくか気になるオシップ、糸をたどって大冒険!
ボタンや、パズルのピース、サイコロに、クッキー。
ページの随所に描かれたそれらの小物は、オシップの世界では「小物」じゃありません。
小人の世界じゃ、ぜんぶがおおきい!
草むらをぬけて、カタツムリと出会い、鳥にさらわれ、ネズミの背にのり——
なにやら、奇妙な部屋に迷い込んでしましました。
紙には描きかけのオシップ、そしてまわりには画材……
なんともユニーク! どうやら、著者の書斎に迷い込んだようです。
赤い色の線だけで描かれた草木や生き物たちの表紙が目を引く一冊!
インテリアとして飾っておきたくなる絵本です。
人形たちがいっぱいの、うす暗い物置の灰色。
ページいっぱいに広がる池の、あわい青。
草むらの緑や、空に広がる白。
そうしたページのなかで、オシップの帽子と糸の赤が、目に焼きついてしまいそうなほど印象的な作品。
ことさらおどろくような展開があるわけでも、ギラギラとハデな配色のページがあるわけでもないのに、スーッとどこまでものびていく細い赤と、ツンととがっておおきく身をのばす三角形の赤が、なぜだかいつまでも心にのこります。
さてさて、赤い糸の先には、いったいなにが待っているのでしょう?
オシャレでかわいい作品です。
(堀井拓馬 小説家)
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