毎年冬になると、パパとぼくは、二人で一緒にスケートリンクをつくる。これは絶対に変わらないこと。いつもだったら、スケートをするのが待ちきれない。でも今年は、何かが違う。
ぼくには、パパに話したいことがある。ちゃんと言えればいいのだけれど、どこから話せばいいのかわからない。
「ねえパパ、パパは、自分ってなんなのか、
わからなくなっちゃったことって、ある?」
ぼくは、パパに少しずつ話した。親友のゼナのお泊まり会に呼ばれなかったこと。お泊まり会は女の子だけだったからということ。自分が見た目と本当の自分がちがうって感じること。自分が女の子みたいに感じることがあるということ。そして、自分をグレーって呼んで欲しいと思っていることを。
聞きながら、パパはずっとずっとだまったままだった。そして言ってくれた。
「話してくれてうれしいよ」
自分のジェンダーで迷いはじめている子と、その悩みを受け入れ、見守る父親の姿を繊細に描きだしたこの絵本。作者はアンドリュー・ラーセンとベルズ・ラーセンの親子。ベルズ自身のトランスジェンダーとしての経験に着想を得て生まれてきた物語なのだそう。主人公が自分の名前を「チクチクするセーターを着ているみたいだ」と表現する場面からも、その違和感やしっくりこない感覚というのが、わかりやすく伝わってきます。父親の方にだって戸惑いはあるでしょう。けれど二人は視線をそらすことなく、しっかりと向き合い、対話をしながら寄り添っていくのです。
「ぼくはグレー。」
なにかが変わっていく自分と、なにがあっても変わらない関係。そんな二人の決意を、夕暮れの雪景色が優しく包み込みます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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