しずかなところはどこにある?
- 絵・訳:
- 島塚絵里
- 出版社:
- 岩波書店
出版社エディターズブログ
2024.08.29
森にあふれる大きな音を避けるように地中深く暮らす、ひとりぼっちのきつね。ある日、思い立って自分で「しずかなところ」を探しにでかけます。
そこで、見つけたのは、「おもいでのなか」「だれかによんでもらうおはなし」「ゆらゆらゆれるいなほ」……
物理的に音がない場所ではなく、五感を自由に広げられる場所でした。身近にあったはずの「しずけさ」にきつねが気がつくこの場面を読むと、どんどん心が晴れてゆきます。
そして、同じく大きな音が苦手なみみずと出会い、きつねは意を決して叫びます。
「しずかにしてくれー!大きな音はもうたくさん!」
丸ごと自分らしくいられる場所って、日常にそう多くはないのかもしれません。とくに子どもたちにとって、何かにおびえることなく、のびのびと心豊かに生活できる環境は何より大切です。
苦手なことを克服しようとするのではなく、自分が安らげる術を自分で見つける。苦手だからこそ知ることのできる世界がある。同じような感覚を持つ友だちを助けたいと行動する。ともに、生きづらさを超えていくためのヒントがたくさん詰まった、奥深い絵本です。
繊細な感受性を温かく描いたこの絵本は、フィンランド生まれ。子どもを子ども扱いせず、それぞれの個性を尊重する社会ならではの、細部まで行き届いたあたたかな眼差しを感じます。
フィンランドの児童文学作家レーッタ・ニエメラの感性豊かなストーリー、フィンランド在住のテキスタイルデザイナー島塚絵里によるやさしい絵と翻訳が、読む人をあたたかく包みます。
幼い子どもたちといっしょに楽しめる絵本です。心の中にきつねを住まわせることができたら、きっと自分らしい幸せを見つけるのが得意になるはず。
「しずかなところ」探し、きつねと一緒にしてみませんか?
この書籍を作った人
フィンランドの児童文学作家。1973年生まれ。児童文学、詩集、絵本、ノンフィクションなどの分野で、幅広く活躍している。フィンランドで最も権威のある児童文学賞フィンランディア・ジュニア賞に3作品がノミネートされる。『Mustan Kuun majatalo(黒い月の宿)』でArvid Lydecken(アルヴィッド・リュデッケン)文学賞受賞。自然、動物に関連したテーマ、悩みを抱える人びとの声となるような作品が特徴。
この書籍を作った人
フィンランド在住のテキスタイルデザイナー、イラストレーター。津田塾大学で国際関係学を学び、東京と沖縄で英語教員を勤めた後、フィンランドに移住。アアルト大学でテキスタイルデザインを学び、テクニカルデザイナーとしてマリメッコ社に勤務後、2014年より独立し国内外の企業にデザインを提供する。著書に『北欧フィンランド配色ブック』(玄光社)、『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』(パイ インターナショナル)など。
http://www.erishimatsuka.com/