予測不能な展開にワクワク『おおかみのおなかのなかで』（文：編集部　小島範子） (徳間書店)

「あるあさ、ねずみが　おおかみに　であいました。そして…」という文章で始まるこの絵本、ページをめくると…、「ぱくっと　たべられてしまいました。」

え？　いきなり主人公がいなくなっちゃう？　どういうこと？　と思いきや、三画面目、ねずみは、「おおかみのおなかのなか」にいました。

そこは真っ暗闇、ねずみが「おおかみにたべられちゃった」と泣いていると、「しずかにしろ、ねむれないじゃないか」という声が聞こえて、ぽっと明かりがともり、あひるがベッドにねています。なんとも不条理な展開です。

あひるは、ねずみのために、朝ごはんを用意してやります。おおかみのおなかのなかは、なかなかいろいろなものが手に入るところなのだそう。

あひるは、ねずみにいいます。「ようこそ、わがやへ」

ねずみは、外の世界にもどりたいんじゃないかとたずねますが、ここにいれば、食べるものの心配もないし、いつおおかみにぱくっとくわれるか、びくびくすることもない、と、あひるは、おなかのなかの快適さを伝えます。そう、そこは、とっても素敵な場所なのです。

こうして、ねずみも、いっしょにここで暮らすことになりました。

さて、外の森では、猟師がやってきて、おおかみを鉄砲でねらいます。逃げだしたおおかみの足が木の根にはさまって、ピンチ！

おおかみがやられたら、自分たちの快適な我が家がなくなってしまうと、あわてたおなかのなかの二ひきは、作戦をたてます。それは…？ 

意表をついた展開が続くこの絵本、文章を担当したのはマック・バーネット、絵はジョン・クラッセンの世界的に大人気の絵本作家コンビ。このコンビのなによりもすばらしいところは、「大人目線で語らない」ところ。どんなにありえない話でも、いたずら小僧たちが語ると、何が起こるかワクワクさせられてしまいます。