さよなら ようちえん
- 作:
- さこ ももみ
- 出版社:
- 講談社
絵本紹介
2022.02.02
まもなく卒園シーズン。大好きな先生や、お友だちとの別れがやってきます。「さようなら」はつらいけれど、思い出を大切にしながらきっと次の一歩が踏み出せる――。そんな別れを描いた本を集めました。朝日新聞社の本の情報サイト「好書好日」の記事よりご紹介します。(文:好書好日編集部)
卒園シーズンに合わせて毎年、増刷がかかる人気絵本『さよなら ようちえん』(講談社)。作者さこももみさんの子どもたちがかつて通った広島市内の幼稚園をモデルに、年長組の子どもたちの卒園までの日々を描いています。絵本を作るにあたって、取材のために久しぶりに幼稚園を訪れたという、さこさん。卒園式には思わず涙してしまった・・・・・・というほほえましいエピソードも語っています。
そのときの園長先生のメッセージがとてもあたたかくて……他の先生は「みんな幼稚園でこんなに楽しく過ごせたんだから、小学校に行っても大丈夫だよ」というようなメッセージを送るんですが、園長先生だけが「私は心配です」っておっしゃるんです。「あなたたちは弱虫だし、泣き虫だし、甘えんぼだし、怒りんぼだし……でも、先生はそんなみんなの全部が大好きだから、これからも恥ずかしがらずに幼稚園に遊びに来てね」と。子どもたちひとりひとりを理解し、愛してくださった先生方に、改めて感謝の気持ちが湧きました。この幼稚園での経験がなければ、『さよなら ようちえん』は描けなかったと思います。 (さこももみさんのインタビューより)
毎日一緒に遊ぶのが当たり前だった仲良しのこぐま「ぼく」と「クッキー」。でもある日、いつものように「さよなら またね」と言ったぼくに返ってきたのは、「さよなら」だけ。その日の夕方、クッキーが引っ越すことを告げられて――。『ぼくとクッキー さよなら またね』(ひさかたチャイルド)は、仲のいい友だちとの別れを描いた絵本。作者のかさいまりさんは「でも、お別れする時に『またね』って言えるような大切な一人と出会えたことが、すてきなことだと思う」と作品に込めた思いを語ります。
最近の若い人や子供の中には、自分が悲しむのが嫌だから人と深く付き合わないようにしたり、誰かと喧嘩したくないから自分を大事にしすぎたりして、感情の起伏を抑えている人が増えている気がします。生きていれば良いことばかりじゃないし、辛いことや苦しいこと……たくさんのことがありますよね。色々な思いをたくさん経験して、スポンジみたいに自分の中に吸収して、少しずつ大人になっていけばいいと思うんです。 (かさいまりさんのインタビューより)
NHK「おかあさんといっしょ」8代目たいそうのおにいさんとして、“セトちゃん”の愛称で親しまれた瀬戸口清文さん。2018年3月に64歳で亡くなった後、作品を次世代に伝えていきたいという思いから家族が絵本づくりを企画し、『そしておめでとう』(ニジノ絵本屋)が出版されました。ベースになっているのは、卒園を間近に控えた娘・あゆみさんのために、瀬戸口さんが書き下ろした曲。入園から卒園までの思い出や卒園式の様子をえがしらみちこさんが描き、“絵本のおはなしお姉さん”となったあゆみさんが、曲とともに広く親しまれるよう、活動しています。
(「げんき ゆうき えがお ありがとう そして おめでとう」というフレーズについて)こんな風に見守ってもらっていたんだな、と今さらながら感じています。子どものうちって、そんなこと知らずに過ごしているけれど、自分の気づかないところで親が大事に命を守ってくれていて、そのおかげで成長してこれたんだなと。私も2020年3月に娘が生まれてお母さんになったのですが、本当に毎日毎日、今日も元気に過ごしてくれてありがとう、という気持ちになります。 (瀬戸口あゆみさんのインタビューより)
死んだはずのおじいちゃんが、夜中に部屋にやってきた! おばけになったおじいちゃんが、孫のエリックと毎晩のように語りあう絵本『おじいちゃんがおばけになったわけ』(あすなろ書房)。「ためしに、かべをとおりぬけてみてよ」とエリックがおもしろがったり、「こっそりうたってくれる『おしりのうた』がとってもおかしかった」と思い出を語ったり。脚本家としても活躍するデンマークのキム・フォップス・オーカソンさんの作品は、「死」をテーマにしていながらどこかユーモラスです。
おじいちゃんと子どもの交流が淡々と描かれていて、死を扱っているのに、決して暗くはありません。最後は大好きなおじいちゃんが姿を消した後に、エリックの「ぼく、あしたは学校へいくよ」というセリフで終わるんですが、この子の日常や人生が、これからも続いていくことが示されているんですね。最後に子どもの人生が肯定されているところが、私は好きです。身近な人の死はとても悲しいけれど、残された人の中で思い出として生き続けていくものです。人がいつか年をとって死んでしまっても、きっとその人はまた誰かの心の中で生きていく。そうやって人の人生が鎖のようにつながっていく、という死生観が表れているのが、北欧らしいなあと思います。 (訳者・菱木晃子さんのインタビューより)
「最愛のペットは、亡くなった後も“虹の橋”のたもとで、いつかあなたが来る日を待っている」。2000年以降、ペットロスに苦しむ飼い主たちの間で聞かれるようになった「虹の橋」という言葉。もとはアメリカで広まった、ある散文詩から取られたものです。その詩の世界をイメージして、葉祥明さんが『虹の橋 Rainbow Bridge』(佼成出版社)という絵本にしました。
人間の究極の恐怖は、自分の死と愛するものの死。「死」に対して感じる恐れを紐解いてみると「もう二度と会えない」という感情でしょう? 残された側からすれば「愛する存在がこの世から消える」ということが受け止められなくて辛いわけです。でもこの詩を読めば「いつか自分が亡くなったときに、また会える」という希望が感じられる。「愛は死を越える、永遠のものだ」なんて手垢がついた言い方かもしれないけど、大切な存在を亡くしたときには、信じたいことですよね。その意味でもこの詩は「現代の神話」のようなものだと思います。 (葉祥明さんのインタビューより)